「ほら、メシの支度、もうできるから」

 これは意識を別に持って行かせるしかない。

 瑞希はそう思って、玲望の気を引くようなことを言った。

 玲望もそれに乗ってくれたようで、顔をこちらへ向けた。

 ちゃぶ台にご飯が並べられつつあるのを見て、「おおっ!」と顔を輝かせた。

「瑞希が作ってくれるなんて、雪が降るな」

 でも辛辣なことを言うので、瑞希は玲望を睨んでおいた。

「降るかよ。ゴハンはあるんだろ」

「ああ、冷凍がある。持ってくるわ」

 ゴハン、つまり白ご飯。

 玲望はいつも独り暮らしなのに、炊飯器いっぱいにご飯を炊く。

 そのとき一食分だけ食べたら、あとは小分けにして冷凍しておくのだ。

「そのほうが炊く電気代が抑えられるからな」だそうで。

 ちなみに冷凍庫に関してもぬかりはなかった。

「熱々を入れると、それを冷まそうと電気代を食うから、しばらく置いておいて冷ましてから入れて凍らせるのがポイントだ」なんて自慢気に言ってきたものだ。

 まぁ、そのような理由で、玲望の冷凍庫には大抵、何食分かの白ご飯が常備されているのだった。

 そのご飯をレンジであっためて、丁寧に茶碗に移して綺麗に盛って、持ってきてくれた玲望。

 瑞希がタッパーから皿に移していったおかずもあっためた。

 それで少し遅い時間ながら、二人の夕ご飯となったのである。

「いただきまーす。……これ、野菜炒め?」

「ああ」

 箸を持って、律儀にいただきますを言って、玲望はひとつの皿から野菜を摘まんだ。