あ……ありのまま、今起こった事を話すぜ!
『グルメダンジョンの食材を庭に置いていたら、そこにダンジョンが出来てたんだ』
な……何を言っているのか……何わからねーと思うが、そういうことなんだ。
「嘘だろ……」
入口からはチョコレートのような甘い香りがぷんぷんと漂っている。
おもちや田所を起こすか? 炎の充填はもう切れているので、俺一人では危険かもしれない。
いやでも……魔力は全然感じない。
勇気を出して、おそるおそる穴に入っていく。回りは茶色い土のようだったが、よく見るとチョコレートだ。
指に取って舐めてみたが、カカオの豊潤な味がする。
……うまっ。
そしてもう少し歩くと、大きな広場のような場所に出た。
天井も高く、だだっ広い感じだ。
「いい匂いだ。けど、魔物はいないのか」
地面は普通の土だということがわかった。
幼いころ、田舎のおじいちゃんの家で畑仕事を手伝っていたことがあるが、そんな感じの手触りを感じる。
「気持ちいいな……」
外から涼しい風が入ってくる。
なぜこのダンジョンが出来たかどうかはわからない。
けれどもなんだか懐かしく、その場に寝っ転がって――気づいたら眠ってしまっていた。
◇
「キュウウウウウウウウウ!」
「ぷいぷいっ」
「……んっ……」
何かの声で目を覚ますと、おもちと田所が元気に走り回っていた。
「はっ、楽しいかお前ら」
さながら運動場だ。普段、家の中では動き回れないし、飛ぶこともできない。
ここはそういう意味では最高の場所だ。
ある程度高さもあるので、おもちも羽根を伸ばすことができる。
そのとき、壁を舐めている女性を見つけた。
いや――御崎だ。
「ここのチョコレート美味しい……。てか、ここなに? なんでグルメダンジョンが?」
「いきなりびっくりするだろ……。てか、いつの間に来てたんだ」
それから俺はありのままの説明をした。
「……それで魔物がいないからってすぐ寝ちゃったの? 危機管理能力ゼロすぎない?」
「だって気持ちが良くて……」
「まあ、そういうところが魔物に好かれるのかもね。のんびりしてるところが」
「そ、そうかなー? あっははは」
「褒めてないけど」
「はい……」
それから俺はおもちと田所とかけっこした。
そんな中、御崎はスマホで何か調べたり、土を触ったり、チョコレートを舐めたりしていた。なんかごめん。
「もうわかってると思うけど、これはグルメダンジョンで間違いないわ。正しくはミニグルメダンジョンって感じかしら」
「まあ確かに、状況的を見てもそうだよな。でも、魔物がいないのはなんでだろう」
「さっき調べてみたけど、ダンジョンは突然出来たりするらしいわ。といっても、魔物がいないのは書いてないし、聞いたこともないけど」
だよなあ、と答えつつ、壁のチョコレートを少し舐める。ここにいたら太りそうだ。
「これってどうなるんだ? 所有権というか、管理というか」
「ダンジョン管理委員会ってのがあるから、そこに申請する必要があるみたいね。魔物が強いと政府の管理下になるらしいけど……」
「そうじゃない場合は? もしかして……」
「その土地を持っている人が所有者になる」
つまり俺はミニグルメダンジョンをゲットしたってこと!? タダで!?
……いや、チョコレートダンジョンか?
「なるほど……でも、チョコレート以外は何もないもんな。おもちと田所の運動場と思えばいいか」
そう言ったあと、ハッと自分がさっき考えたことが脳裏に過る。
おじいちゃんの――畑。
土を触ってみると、改めて手触りがいいと思った。
これなら――いける。
「まあそうね。チョコレート美味しいし、いいんじゃない?」
「なあ御崎、ここに畑とか作れないかな?」
「……畑? 大根とか、キャベツとかってこと?」
「それもだが、グルメダンジョンから取って来た食材を植えたら、同じように生えたりしないかな? あそこには色々あっただろ?」
想像の段階だが、そうなったら面白いと思った。
ただもしそれが実現すればとてつもないことになる。
なんだったら、販売することも可能なんじゃないか?
好きなことをして、好きに働く。そして誰かに喜ばれる。
それこそが、俺の求めていたスローライフに近いかもしれない。
「でも、そうなると管理が……コストが……もしそうだとして……」
それからぶつぶつと何かを考えこむ御崎。俺は知っている。こうなった時の彼女は頼りになる。
会社でも、経理やらなんやら全て彼女が行っていたのだ。
「……いける。まだ食材が取れるかどうかわからないけど、私たち二人でミニグルメダンジョンを作って食材を売れば……大金持ちよ! 億万長者だわ!」
「はっ、億万長者か」
俺は横目でおもちと田所を見た。そこまでは望まないが、二人が苦労せず、それでいて楽しく遊べる場所を提供出来ればそれでいい。
質のいいフード、幸せな住環境、俺がもし事故で亡くなったとしても暮らしていけるだけの施設。
「そうだな、そうしよう。ちょうど昔、おじいちゃんの畑を手伝ったことがあるんだ。ダンジョン委員会とやらの申請が終わったら、俺と一緒にやってみよう」
御崎は俺の顔を見て、微笑みながら頷いた。
そして――。
「キュウウウ!」
「ぷいぷいっ!」
おもちと田所が、俺の背中に勢いよくぶつかって来た。
僕たちも、という感じだ。
「はっ、ごめんごめん。そうだよな。皆で作ろうか」
そうして俺たちは、庭に出来たミニグルメダンジョンを開拓していくことを決めたのだった。
『グルメダンジョンの食材を庭に置いていたら、そこにダンジョンが出来てたんだ』
な……何を言っているのか……何わからねーと思うが、そういうことなんだ。
「嘘だろ……」
入口からはチョコレートのような甘い香りがぷんぷんと漂っている。
おもちや田所を起こすか? 炎の充填はもう切れているので、俺一人では危険かもしれない。
いやでも……魔力は全然感じない。
勇気を出して、おそるおそる穴に入っていく。回りは茶色い土のようだったが、よく見るとチョコレートだ。
指に取って舐めてみたが、カカオの豊潤な味がする。
……うまっ。
そしてもう少し歩くと、大きな広場のような場所に出た。
天井も高く、だだっ広い感じだ。
「いい匂いだ。けど、魔物はいないのか」
地面は普通の土だということがわかった。
幼いころ、田舎のおじいちゃんの家で畑仕事を手伝っていたことがあるが、そんな感じの手触りを感じる。
「気持ちいいな……」
外から涼しい風が入ってくる。
なぜこのダンジョンが出来たかどうかはわからない。
けれどもなんだか懐かしく、その場に寝っ転がって――気づいたら眠ってしまっていた。
◇
「キュウウウウウウウウウ!」
「ぷいぷいっ」
「……んっ……」
何かの声で目を覚ますと、おもちと田所が元気に走り回っていた。
「はっ、楽しいかお前ら」
さながら運動場だ。普段、家の中では動き回れないし、飛ぶこともできない。
ここはそういう意味では最高の場所だ。
ある程度高さもあるので、おもちも羽根を伸ばすことができる。
そのとき、壁を舐めている女性を見つけた。
いや――御崎だ。
「ここのチョコレート美味しい……。てか、ここなに? なんでグルメダンジョンが?」
「いきなりびっくりするだろ……。てか、いつの間に来てたんだ」
それから俺はありのままの説明をした。
「……それで魔物がいないからってすぐ寝ちゃったの? 危機管理能力ゼロすぎない?」
「だって気持ちが良くて……」
「まあ、そういうところが魔物に好かれるのかもね。のんびりしてるところが」
「そ、そうかなー? あっははは」
「褒めてないけど」
「はい……」
それから俺はおもちと田所とかけっこした。
そんな中、御崎はスマホで何か調べたり、土を触ったり、チョコレートを舐めたりしていた。なんかごめん。
「もうわかってると思うけど、これはグルメダンジョンで間違いないわ。正しくはミニグルメダンジョンって感じかしら」
「まあ確かに、状況的を見てもそうだよな。でも、魔物がいないのはなんでだろう」
「さっき調べてみたけど、ダンジョンは突然出来たりするらしいわ。といっても、魔物がいないのは書いてないし、聞いたこともないけど」
だよなあ、と答えつつ、壁のチョコレートを少し舐める。ここにいたら太りそうだ。
「これってどうなるんだ? 所有権というか、管理というか」
「ダンジョン管理委員会ってのがあるから、そこに申請する必要があるみたいね。魔物が強いと政府の管理下になるらしいけど……」
「そうじゃない場合は? もしかして……」
「その土地を持っている人が所有者になる」
つまり俺はミニグルメダンジョンをゲットしたってこと!? タダで!?
……いや、チョコレートダンジョンか?
「なるほど……でも、チョコレート以外は何もないもんな。おもちと田所の運動場と思えばいいか」
そう言ったあと、ハッと自分がさっき考えたことが脳裏に過る。
おじいちゃんの――畑。
土を触ってみると、改めて手触りがいいと思った。
これなら――いける。
「まあそうね。チョコレート美味しいし、いいんじゃない?」
「なあ御崎、ここに畑とか作れないかな?」
「……畑? 大根とか、キャベツとかってこと?」
「それもだが、グルメダンジョンから取って来た食材を植えたら、同じように生えたりしないかな? あそこには色々あっただろ?」
想像の段階だが、そうなったら面白いと思った。
ただもしそれが実現すればとてつもないことになる。
なんだったら、販売することも可能なんじゃないか?
好きなことをして、好きに働く。そして誰かに喜ばれる。
それこそが、俺の求めていたスローライフに近いかもしれない。
「でも、そうなると管理が……コストが……もしそうだとして……」
それからぶつぶつと何かを考えこむ御崎。俺は知っている。こうなった時の彼女は頼りになる。
会社でも、経理やらなんやら全て彼女が行っていたのだ。
「……いける。まだ食材が取れるかどうかわからないけど、私たち二人でミニグルメダンジョンを作って食材を売れば……大金持ちよ! 億万長者だわ!」
「はっ、億万長者か」
俺は横目でおもちと田所を見た。そこまでは望まないが、二人が苦労せず、それでいて楽しく遊べる場所を提供出来ればそれでいい。
質のいいフード、幸せな住環境、俺がもし事故で亡くなったとしても暮らしていけるだけの施設。
「そうだな、そうしよう。ちょうど昔、おじいちゃんの畑を手伝ったことがあるんだ。ダンジョン委員会とやらの申請が終わったら、俺と一緒にやってみよう」
御崎は俺の顔を見て、微笑みながら頷いた。
そして――。
「キュウウウ!」
「ぷいぷいっ!」
おもちと田所が、俺の背中に勢いよくぶつかって来た。
僕たちも、という感じだ。
「はっ、ごめんごめん。そうだよな。皆で作ろうか」
そうして俺たちは、庭に出来たミニグルメダンジョンを開拓していくことを決めたのだった。