瞬にむかついたので、しばらく班のやつらと一緒にカードゲームに興じる。
幼い妹や弟のいるやつが、トランプの他にも、具材を集めて料理を完成させるカードゲームや釣りをして釣れた魚の点数で勝敗を決めるカードゲーム、謎の生き物に名前をつけるカードゲームなどをたくさん持ってきていた。
メーカーの対象年齢は低く設定されているものの、高校生がやっても普通に面白いので、みんなで夢中になって遊びすぎ、気がついたら消灯時間が近づいていた。
寝る準備をしていたら、布団の海の中に放流していたオレのスマホのメッセージ着信を知らせる通知がチカリと光る。
『さっきはごめん。
ねえ、今日もハグしたいけどダメかな?』
瞬から着たメッセージを確認していたら、いつの間にか部屋では恋バナが始まろうとしていた。
『しょーがねーな。
じゃあ、昨日と同じ場所に集合』
『ありがと、了解!』
どうせなら、と最初に口火を切って落とす。
「オレ、そもそも人を好きになったことない。以上」
「えっ、それだけ?!」
「ワタル、早っ!」
「ワタルどこ行くん?」
「水買いに行く!」
そう言い残して部屋を出た。
自販機コーナーに行くと、うれしそうに瞬が待っていた。
「部屋で恋バナ始まった。
興味ないし、帰りたくねえ」
そう言うと、昨日と同じようにぎゅっと抱きしめてくれる。
瞬の体温は心地いい。
「ワタルは人を好きになったことがないんだっけ」
「うん」
「そっかあ。
結構いいもんだよ、人を好きになるって」
「彼女とケンカ真っ最中のやつに言われても説得力ねえな」
正論を返してやる。
「はは、確かにそうかも」
寂しそうな声だった。
こういう寂しげな空気をまとうとき、オレにはいつも瞬が壊れそうに見える。
ふと思いついて、聞いてみる。
「なあ、人を好きになったら、どんな気持ちになんの?」
「説明するとなると難しいな。
そうだなあ、その人のことを考えるとドキドキふわふわしたり、その人の行動で一喜一憂したり、少しでも長く一緒の時間を過ごしたくなるし、その人のことを独占したくなったり、その人に触れたくなったりもするかな。
感情の浮き沈みが激しくなるっていうのもあるかもね」
「それって、結構疲れそう」
「そうかもしれないけど、今まで知らなかった新しい自分に出会えて、世界の見え方がガラッと変わったりするのは間違いないよ」
「ふーん?」
瞬の腕の中で、あんまり納得できなかった。
「だからさ、ワタルも、いつか人を好きになれるといいね」
「いつにやるやら分からんけどな」
そんな気配は一向にないけど。
「いつでもいいんだよ」
瞬がポンポンとオレの背中を優しく叩いてハグを終える。
なぜか胸の中がぽかぽかしていた。
「ありがとね、ワタル」
「またいつでも呼べよ。
じゃあ、おやすみ」
どういたしましてと同じ意味のつもりで「またいつでも呼べよ」と言ってしまったことに後で気づいたが、まあいいかと大して気にすることなく、お互い手を振ってそれぞれの部屋に戻った。
部屋ではまだ恋バナが続いていたが、身体の血流がよくなったような気がして眠気がどっと押し寄せ、早々と布団にもぐり込む。
「あれ、ワタル、水は?」
すっかり買うのを忘れていた。
「自販機のところで全部飲み干してきた!」
「えー、少しもらおうと思ってたのにー」
「おやすみ!」
正直、今日は海で遊んだせいか、昨日よりも眠くてたまらなかった。
眠りに落ちるとき、昼間に瞬に言われた「ワタル、可愛い」という言葉だけが急に耳に蘇ってきて、うとうとしながら、可愛いのは瞬の方だろ……と思った後は記憶がない。
幼い妹や弟のいるやつが、トランプの他にも、具材を集めて料理を完成させるカードゲームや釣りをして釣れた魚の点数で勝敗を決めるカードゲーム、謎の生き物に名前をつけるカードゲームなどをたくさん持ってきていた。
メーカーの対象年齢は低く設定されているものの、高校生がやっても普通に面白いので、みんなで夢中になって遊びすぎ、気がついたら消灯時間が近づいていた。
寝る準備をしていたら、布団の海の中に放流していたオレのスマホのメッセージ着信を知らせる通知がチカリと光る。
『さっきはごめん。
ねえ、今日もハグしたいけどダメかな?』
瞬から着たメッセージを確認していたら、いつの間にか部屋では恋バナが始まろうとしていた。
『しょーがねーな。
じゃあ、昨日と同じ場所に集合』
『ありがと、了解!』
どうせなら、と最初に口火を切って落とす。
「オレ、そもそも人を好きになったことない。以上」
「えっ、それだけ?!」
「ワタル、早っ!」
「ワタルどこ行くん?」
「水買いに行く!」
そう言い残して部屋を出た。
自販機コーナーに行くと、うれしそうに瞬が待っていた。
「部屋で恋バナ始まった。
興味ないし、帰りたくねえ」
そう言うと、昨日と同じようにぎゅっと抱きしめてくれる。
瞬の体温は心地いい。
「ワタルは人を好きになったことがないんだっけ」
「うん」
「そっかあ。
結構いいもんだよ、人を好きになるって」
「彼女とケンカ真っ最中のやつに言われても説得力ねえな」
正論を返してやる。
「はは、確かにそうかも」
寂しそうな声だった。
こういう寂しげな空気をまとうとき、オレにはいつも瞬が壊れそうに見える。
ふと思いついて、聞いてみる。
「なあ、人を好きになったら、どんな気持ちになんの?」
「説明するとなると難しいな。
そうだなあ、その人のことを考えるとドキドキふわふわしたり、その人の行動で一喜一憂したり、少しでも長く一緒の時間を過ごしたくなるし、その人のことを独占したくなったり、その人に触れたくなったりもするかな。
感情の浮き沈みが激しくなるっていうのもあるかもね」
「それって、結構疲れそう」
「そうかもしれないけど、今まで知らなかった新しい自分に出会えて、世界の見え方がガラッと変わったりするのは間違いないよ」
「ふーん?」
瞬の腕の中で、あんまり納得できなかった。
「だからさ、ワタルも、いつか人を好きになれるといいね」
「いつにやるやら分からんけどな」
そんな気配は一向にないけど。
「いつでもいいんだよ」
瞬がポンポンとオレの背中を優しく叩いてハグを終える。
なぜか胸の中がぽかぽかしていた。
「ありがとね、ワタル」
「またいつでも呼べよ。
じゃあ、おやすみ」
どういたしましてと同じ意味のつもりで「またいつでも呼べよ」と言ってしまったことに後で気づいたが、まあいいかと大して気にすることなく、お互い手を振ってそれぞれの部屋に戻った。
部屋ではまだ恋バナが続いていたが、身体の血流がよくなったような気がして眠気がどっと押し寄せ、早々と布団にもぐり込む。
「あれ、ワタル、水は?」
すっかり買うのを忘れていた。
「自販機のところで全部飲み干してきた!」
「えー、少しもらおうと思ってたのにー」
「おやすみ!」
正直、今日は海で遊んだせいか、昨日よりも眠くてたまらなかった。
眠りに落ちるとき、昼間に瞬に言われた「ワタル、可愛い」という言葉だけが急に耳に蘇ってきて、うとうとしながら、可愛いのは瞬の方だろ……と思った後は記憶がない。