3月の終わり頃、退院が決まった。それまで、いやそれからも、ずっと心が不安定だった。夜の静かな病院では、特に寂しさが身にしみた。数日に一度、一人で泣いた。
退院当日、母さんと正晴が迎えに来てくれた。雨男がいるわりには快晴だ。雨よりは晴れの日の方がいくらか気が楽なので、少しほっとする。
「ねー冬、なんかちょっと縮んだ?」
隣に立つ正晴は、からかうような声で言いながら、俺の頭に手を乗せてくる。俺はむっとして、それを叩き落とす。今までと同じ光景だ。毎年毎年こんな感じで、それが続いていることに安心する気持ちも確かにあった。だが、心に空いた穴が存在感を消すことはなかった。それを分かっているからこそ、正晴はいつも通り接してくれているのだろう。
病院の外に十歩ほど出てから、なんとなく振り返る。見慣れた場所に今更どうこう思うことはないと思っていた。それなのに、胸が締め付けられる感じがした。母さんも正晴も、そんな俺に何かを言ってくることはない。静かに見守ってくれるだけだ。迎えに来てもらえてよかったと思う。一人だったら泣き崩れていただろう。
「じゃあ、帰るか」
声に暗さが出ないように、明るめに伝えた。俺の言葉に二人はうなずいて、並んで歩き出した。
退院当日、母さんと正晴が迎えに来てくれた。雨男がいるわりには快晴だ。雨よりは晴れの日の方がいくらか気が楽なので、少しほっとする。
「ねー冬、なんかちょっと縮んだ?」
隣に立つ正晴は、からかうような声で言いながら、俺の頭に手を乗せてくる。俺はむっとして、それを叩き落とす。今までと同じ光景だ。毎年毎年こんな感じで、それが続いていることに安心する気持ちも確かにあった。だが、心に空いた穴が存在感を消すことはなかった。それを分かっているからこそ、正晴はいつも通り接してくれているのだろう。
病院の外に十歩ほど出てから、なんとなく振り返る。見慣れた場所に今更どうこう思うことはないと思っていた。それなのに、胸が締め付けられる感じがした。母さんも正晴も、そんな俺に何かを言ってくることはない。静かに見守ってくれるだけだ。迎えに来てもらえてよかったと思う。一人だったら泣き崩れていただろう。
「じゃあ、帰るか」
声に暗さが出ないように、明るめに伝えた。俺の言葉に二人はうなずいて、並んで歩き出した。