初めて会った日から祈流は一度もやってこなかった。
(絶対に来ると思っていたが…まさか来ないとは……
いや、今はそんなことどうでもいい。早く家を出て半妖を倒しに行こう。)
俺は家を出ていつも通り、半妖を何体か倒した。
(もう暗くなる。早く帰ろう)
その時、毛が立つほどに強い何かを感じた。
咄嗟に辺りを見渡す。
刀を抜いて構える。すると次の瞬間
グァァァァッッッ!!
「……!!!」
キーン!!
(…なんて重い攻撃なんだ、それにいつも倒しているものと形が違う…!)
「うっ……」
(……油断してしまった。右腕が全く動かない…)
(左腕だけで攻防を全て行うのは無理がある。逃げるという選択肢はない。これは…賭けに出るしかないな。)
俺は無理矢理相手の懐に入り込んで切りかかった。
しかし相手は素早く、避けてからすぐに爪を使って俺を引っ掻いて来る。その後、遠くにあった木に飛ばされぶつかる。
「かはっ……」
(動こうとしても動けない。……ここまでなのか?)
俺は静かに目を閉じた。次の攻撃が来る。
「……?」
(攻撃が来ない?なぜだ?)
「…大丈夫?」
はっと目を開ける。そこには新緑色の髪に思色の瞳を持った少年が俺を覗き込むように見ていた。
少年の後ろには半妖がいる。今にも襲ってきそうだった。
「危ない!」
「大丈夫だよ」
ゴンッッッ!
とても鈍い音が森中に響く。
(このドーム状の壁はなんだ?この壁が俺と少年を守っているのか?)
そんなことを考えていると半妖のまわりにも同じ、壁のようなものがはられていた。
「祓いたまへ 清め給へ」
その声が聞こえると半妖が跡形もなく一瞬で消え去った。
(何が起きているんだ……?)
「…律さん。出来ればいきなり走らないようにしてくださいさると嬉しいのですが…」
その声の主が月の光に照らされる。
そこに居たのは茶髪に深い青色の瞳を持つ少女。
「あっ。ごめん、凪」
「それに、私がもし追いつけなかったらどうするおつもりだったのですか?」
「うぅ……。ごめんなさい」
「まぁ間に合ったのでもういいのですが。…それより早く探しましょう。じゃないとまた文句を言われてしまいます」
「あぁ、それなら見つけたよ。ほら」
凪と呼ばれている少女がこちらを見る。
「…って大ケガではありませんか!この方が探している方かはおいといて、早く治しましょう!」
少女は俺の近くまでよってきて自分の手を俺にかざした。
すると少女の手から光が溢れ、傷がどんどん治っていく。
(…!傷が治った。痛みも感じない。むしろ前よりも身体が軽い気がする)
「これくらいで良いでしょう。傷は治りましたが、しばらくは安静にしてくださいね」
「……わかった」
「で、律さん。この方は探している方であっているのですか?」
「絶対そうだよ!だって祈流が書いた絵にそっくりだもん!」
「そうなのですか?……でも律さんがそう言うなら恐らくそうなのでしょう」
「凪は似てると思わないの?」
「1ミクロンも似てないと思います。」
「えー」
俺は会話をしている二人をずっと見つめていた。
それに少年が気づいたのか、
「あっ、ごめん。君の名前って羽先優【わせんやさし】で合ってる?」
「何を言ってるんだ?」
「何を言っているのですか?」
俺と少女の声が重なって否定した。
「羽先優【はねさきゆう】ですよ。」
「…あぁ、俺の名前は羽先優はねさきゆうという。」
「えっ!ごめん!間違えた!」
「いや、別に構わない」
「あっ、僕の自己紹介がまだだったね。僕の名前は
月城律輝【つきしろりつき】だよ、よろしくね」
「私は春道凪【はるみちなぎ】と申します。よろしくお願い致します」
「ちょっといきなりで申し訳ないけど、一度掃除屋に来てくれない?」
「…理由は?」
「祈流が連れてきて欲しいって言ってたんだ。祈流にはもう会ったことあるんだよね?」
「会ったことはある、だが俺は掃除屋には入らないとスカウトを断ったはずだ」
「うん、そうなんだけどそれとはまた別の話。詳しい話は知らないから凪に説明してもらうね」
「話、ちゃんと聞いていなかったのですか?…じゃあ私から説明させていただきますね」
凪がニコリと笑いながら説明をした。
「率直に申し上げます。ここは住んでは行けない場所なのですよ」
「…そうなのか?」
「はい、ここは妖怪や半妖が多く、他と比べても強いので危険な場所として立ち入りを禁止しているのです」
「じゃあ、今俺が住んでいる小屋はなんなんだ?
初めて来た時、かなり真新しかったぞ?」
「あれは私が建てさせた小屋です。私が掃除をしやすいように森の中に小屋を建てたんです。ここでの任務はとても長い時間を要しますから」
「それに、不思議に思われませんでしたか?あの小屋の近くには妖怪も半妖もよってこないのです。それは私が結界を張っているからなのですよ」
「……。」
(…たしかによく考えてみたら小屋の近くには半妖が出てこなかったな…)
「なら何故君たちはこの森に入れるんだ?」
「それはね、仕事だからだよ。ちなみに今回の仕事は君を見つけて掃除屋に連れていくこと」
「あの小屋を捨てて出ていかないといけないのか?」
律輝は困った顔で凪を見る。
「出ていった方がいいと思います。元々あなたのものでもありませんし、なんせとても危険ですから」
「だが俺には親戚もいない。住む場所がないんだ」
「それなら大丈夫です。私が責任を持って掃除屋に頼んでおきましたので」
「え、凪、もう頼んであるの?」
「勿論です。私は何かあったとき用に常に備えていますから」
「…できる女ってやつだ……。」
「おっと、話が脱線しすぎましたね。優さん、改めてお願い致します。掃除屋に来て頂けませんか?」
「…あぁ、わかった」
(こんな話を聞いたあとじゃ断れない…)
「ありがとうございます」
「よしっ!じゃあ早速優、荷物をまとめてきて!」
「は?えっ!今から!?」
「もちろん!出来れば急いだ方がいいからね」
「五分以内で頑張ってまとめてきて!」
「無理があるだろ!!」
そう言いながらも大急ぎで家に帰って荷物をまとめた
。
(この小屋ともお別れか…)
小屋を出て玄関前に立つ。
「今までありがとう。さようなら」
そこから少し歩いて二人と合流する。
「じゃあ行こっか!」
「あぁ。」
「えぇ。早く行きましょう。」
こうして俺は小屋を出て掃除屋に行くことになった。
「……優さんは凄いですね。こんなにもすぐに新しい一歩を踏み出す決意をするなんて。……見習わないといけませんね」
「今、何か言ったか?」
「何も言っていませんよ。早く行きましょう」
こうして新しい日々が始まろうとしていた。
(絶対に来ると思っていたが…まさか来ないとは……
いや、今はそんなことどうでもいい。早く家を出て半妖を倒しに行こう。)
俺は家を出ていつも通り、半妖を何体か倒した。
(もう暗くなる。早く帰ろう)
その時、毛が立つほどに強い何かを感じた。
咄嗟に辺りを見渡す。
刀を抜いて構える。すると次の瞬間
グァァァァッッッ!!
「……!!!」
キーン!!
(…なんて重い攻撃なんだ、それにいつも倒しているものと形が違う…!)
「うっ……」
(……油断してしまった。右腕が全く動かない…)
(左腕だけで攻防を全て行うのは無理がある。逃げるという選択肢はない。これは…賭けに出るしかないな。)
俺は無理矢理相手の懐に入り込んで切りかかった。
しかし相手は素早く、避けてからすぐに爪を使って俺を引っ掻いて来る。その後、遠くにあった木に飛ばされぶつかる。
「かはっ……」
(動こうとしても動けない。……ここまでなのか?)
俺は静かに目を閉じた。次の攻撃が来る。
「……?」
(攻撃が来ない?なぜだ?)
「…大丈夫?」
はっと目を開ける。そこには新緑色の髪に思色の瞳を持った少年が俺を覗き込むように見ていた。
少年の後ろには半妖がいる。今にも襲ってきそうだった。
「危ない!」
「大丈夫だよ」
ゴンッッッ!
とても鈍い音が森中に響く。
(このドーム状の壁はなんだ?この壁が俺と少年を守っているのか?)
そんなことを考えていると半妖のまわりにも同じ、壁のようなものがはられていた。
「祓いたまへ 清め給へ」
その声が聞こえると半妖が跡形もなく一瞬で消え去った。
(何が起きているんだ……?)
「…律さん。出来ればいきなり走らないようにしてくださいさると嬉しいのですが…」
その声の主が月の光に照らされる。
そこに居たのは茶髪に深い青色の瞳を持つ少女。
「あっ。ごめん、凪」
「それに、私がもし追いつけなかったらどうするおつもりだったのですか?」
「うぅ……。ごめんなさい」
「まぁ間に合ったのでもういいのですが。…それより早く探しましょう。じゃないとまた文句を言われてしまいます」
「あぁ、それなら見つけたよ。ほら」
凪と呼ばれている少女がこちらを見る。
「…って大ケガではありませんか!この方が探している方かはおいといて、早く治しましょう!」
少女は俺の近くまでよってきて自分の手を俺にかざした。
すると少女の手から光が溢れ、傷がどんどん治っていく。
(…!傷が治った。痛みも感じない。むしろ前よりも身体が軽い気がする)
「これくらいで良いでしょう。傷は治りましたが、しばらくは安静にしてくださいね」
「……わかった」
「で、律さん。この方は探している方であっているのですか?」
「絶対そうだよ!だって祈流が書いた絵にそっくりだもん!」
「そうなのですか?……でも律さんがそう言うなら恐らくそうなのでしょう」
「凪は似てると思わないの?」
「1ミクロンも似てないと思います。」
「えー」
俺は会話をしている二人をずっと見つめていた。
それに少年が気づいたのか、
「あっ、ごめん。君の名前って羽先優【わせんやさし】で合ってる?」
「何を言ってるんだ?」
「何を言っているのですか?」
俺と少女の声が重なって否定した。
「羽先優【はねさきゆう】ですよ。」
「…あぁ、俺の名前は羽先優はねさきゆうという。」
「えっ!ごめん!間違えた!」
「いや、別に構わない」
「あっ、僕の自己紹介がまだだったね。僕の名前は
月城律輝【つきしろりつき】だよ、よろしくね」
「私は春道凪【はるみちなぎ】と申します。よろしくお願い致します」
「ちょっといきなりで申し訳ないけど、一度掃除屋に来てくれない?」
「…理由は?」
「祈流が連れてきて欲しいって言ってたんだ。祈流にはもう会ったことあるんだよね?」
「会ったことはある、だが俺は掃除屋には入らないとスカウトを断ったはずだ」
「うん、そうなんだけどそれとはまた別の話。詳しい話は知らないから凪に説明してもらうね」
「話、ちゃんと聞いていなかったのですか?…じゃあ私から説明させていただきますね」
凪がニコリと笑いながら説明をした。
「率直に申し上げます。ここは住んでは行けない場所なのですよ」
「…そうなのか?」
「はい、ここは妖怪や半妖が多く、他と比べても強いので危険な場所として立ち入りを禁止しているのです」
「じゃあ、今俺が住んでいる小屋はなんなんだ?
初めて来た時、かなり真新しかったぞ?」
「あれは私が建てさせた小屋です。私が掃除をしやすいように森の中に小屋を建てたんです。ここでの任務はとても長い時間を要しますから」
「それに、不思議に思われませんでしたか?あの小屋の近くには妖怪も半妖もよってこないのです。それは私が結界を張っているからなのですよ」
「……。」
(…たしかによく考えてみたら小屋の近くには半妖が出てこなかったな…)
「なら何故君たちはこの森に入れるんだ?」
「それはね、仕事だからだよ。ちなみに今回の仕事は君を見つけて掃除屋に連れていくこと」
「あの小屋を捨てて出ていかないといけないのか?」
律輝は困った顔で凪を見る。
「出ていった方がいいと思います。元々あなたのものでもありませんし、なんせとても危険ですから」
「だが俺には親戚もいない。住む場所がないんだ」
「それなら大丈夫です。私が責任を持って掃除屋に頼んでおきましたので」
「え、凪、もう頼んであるの?」
「勿論です。私は何かあったとき用に常に備えていますから」
「…できる女ってやつだ……。」
「おっと、話が脱線しすぎましたね。優さん、改めてお願い致します。掃除屋に来て頂けませんか?」
「…あぁ、わかった」
(こんな話を聞いたあとじゃ断れない…)
「ありがとうございます」
「よしっ!じゃあ早速優、荷物をまとめてきて!」
「は?えっ!今から!?」
「もちろん!出来れば急いだ方がいいからね」
「五分以内で頑張ってまとめてきて!」
「無理があるだろ!!」
そう言いながらも大急ぎで家に帰って荷物をまとめた
。
(この小屋ともお別れか…)
小屋を出て玄関前に立つ。
「今までありがとう。さようなら」
そこから少し歩いて二人と合流する。
「じゃあ行こっか!」
「あぁ。」
「えぇ。早く行きましょう。」
こうして俺は小屋を出て掃除屋に行くことになった。
「……優さんは凄いですね。こんなにもすぐに新しい一歩を踏み出す決意をするなんて。……見習わないといけませんね」
「今、何か言ったか?」
「何も言っていませんよ。早く行きましょう」
こうして新しい日々が始まろうとしていた。