――インターハイの日はあっという間にやって来た。

 開催地となる県まで、あたしを含めたボクシング部員は大移動することになる。

 今回は飛行機での移動だった。遠くまで高速バスとかじゃなくて本当に良かった。あれは辿り着くまでがしんどいので。

 飛行機を使ったせいか、目的地にはわりとすぐに着いた。減量でイライラ気味のところもあり、早く現地に着けるのは助かる。

 宿舎に到着すると、荷物を置いてすぐに調整レベルの軽い練習をした。

 減量は順調。アマチュアボクシングはプロと違って試合当日の計量になる。そのため、時々プロ選手がやっているような過激な減量をやると、試合をするどころではないコンディションになってしまう。リカバリーの時間がほとんどない分、アマチュアは計量に対して慎重にならないといけない。

 宿泊所は海沿いだった。

 地元には海がないので、浜辺を散歩してのんびりと過ごす。

 夕方になると、沈みゆく太陽が海に反射して綺麗だった。こういう景色を見ていると、なぜだか切なくなってくる。

 明日から試合か。

 実感があるような、ないような……。妙な気持ちになってくる。

 あとは試合をして、結果を残すだけ。

 前世でも大事な試合っていくらかあったけど、高校生にとってはインターハイって一番大事な試合に当たるんだよね、きっと。

 この落ち着かない感じ、生まれ変わってもかわらないな。

 夕日に照らされながら、軽くシャドウをやって気をまぎらわせる。

 自分が負けるとは少しも思わない。

 だけど、妙な胸騒ぎを感じている。

 今回のインターハイではなにかが起こる。そんな予感がするのだ。

 だからこそ、自分に出来ることはしっかりやっておかないと。