未だに消えない噂に辟易しつつ、そこへ加えられた先生からのお手伝いにさらに気分が落ちたが、やらないと後が怖いので従った。
　理科準備室までが教室から遠いのが嫌すぎる。持ってくるモノも多いし。思うんだけど、生徒に対してはお願いだけどやってることはパシリだよね？なんて毒突きながら言われたものを集めた。
　準備室を出ようとすると外から不機嫌な感じでぶつぶつと呟く声が聞こえて来た。
『まったく危ないったらありゃしない。あの正義感振りかざした勘違い女め、いつか目に物見せてやる。まあいい。例の生徒の振りしてあそこまで追い詰めたんだ。今度はあることないこと流せば勝手に自滅する』
　今の声は聞き覚えがありまくりだ。教頭だ。そしてその内容が引っ掛かった。
　例の生徒？追い詰めた？
　まさかと思い問い詰めようとしたけど今行ってもとぼけられるし、そのあと何されるかわからない。今の様子だと瀬戸さんをはめた可能性が高い。わからないようにして攻撃されたらひとたまりもない。伝手もあるだろうし。
　とりあえず荷物をおいて慎重に外の様子を探る。すると更衣室に入っていく教頭の姿が見えた。扉が閉まったのを確認したら忍び足で更衣室前に行った。そこは女性用だ。
　ってことはもしかして。
　一旦準備室に戻り、金谷先生に電話してすぐ校長先生を呼ぶようお願いした。
　そして５分後に校長先生と金谷先生、そのほか男性の先生が数人来て更衣室前に立ちふさがった。
　それからさらに５分して教頭が出て来た。
「教頭先生。何を知るのですか？」
「こ、校長先生！！」
　それからすぐに更衣室が調べられ、すると盗撮用のカメラがばっちり起動し、しかも動画内に自白まで入っていたらしい。
　それと俺が聞いた独り言は、やっぱり瀬戸さんをはめたことだったと認めた。
　動機は俺と同じく理科準備室に荷物を取りに行ったら更衣室に入るところを瀬戸さんに見られたと思い込み、あの方法で追い込み、自主退学させようとしたらしい。
「あのエロジジイ最悪」
　先輩が見たこともない怖い表情で、般若のお面をつけてると言っても騙されるレベルだった。おまけにトーンとテンポが低いのも恐怖を覚える。
　それから教頭はクビ、警察のお世話になった。盗撮だけでなく、下手したら自殺しかねないような悪質な嫌がらせもあり、実刑が着くだろうと言われた。
　こうして瀬戸さんの疑いは晴れ、部室に戻って来た