香り立つ甘い匂いに心が揺られ、思わず駆け出していた。ほんの少しだけ彼に会えるのではないかと期待しながら。
 しかし、そこには美しい花がそんなわけ無いだろうと言わんばかりに顔を見せている。なんて紛らわしいのだろうか。
 彼と同じ香りを漂わせているその花に、一滴だけ水滴が零れ落ちた。