楓の決意…



楓は、明日からの楓に手紙を書くことにした。

楓の大事な、Dr.スランプ・アラレちゃんのノートに…



―――――10月1日からの楓へ



信じられないかもしれないけど…私は、未来から1年間の間だけ来ていた楓です。

楓は今、剣と付き合っています。

でも、未来の私は剣より好きな人が出来て別れてしまったの…



私は、ずっとずっと…剣と別れたことを後悔していました。

剣と別れてから…色々な人と付き合ったけど上手くいかなくて…

高校生の時に知り合った人と結婚したけど…離婚してしまいました。

そして…友達だった剣とも連絡が付かなくなってしまうの…



これから、あなたには楽しい誘惑があるかもしれない…

でも、剣と別れたら…きっと後悔すると思う。



私は、後悔した剣との日々を…この1年間、後悔しないように、やり直したつもりです。

剣に近付きたくて…頑張ったけど、まだこれからだと思うんだ…



もし、この話を信じてくれるなら…

これからも、剣との日々を大切にして欲しい。



決して…後悔しないように…

剣と本気で向き合って、付き合って下さい。

私からのお願いです。



追伸

今日、剣と初めてハグしてキスしました…

楓、頑張ってね♪―――――



そして、楓がこの時代に来てから、今日までの剣とのやり取りも書いておいた。



23時59分…



―――剣、この1年間本当に楽しかった…

ありがとう…

明日からの楓のこと、よろしくね―――



決して…剣には届かない言葉だった…





楓は、0時ジャストに…この時代から消えた…







また、身体がグルグル回って…





気が付くと…



楓は、病院のベッドに寝ていた…



―――私、どうなったの?

―――このまま死んでしまうのかと思ってたけど…



楓は、ふと気が付いた…



机の上に、ノートが置いてある。



それは、見覚えのある…アラレちゃんのノートだった…



これは…

私が書いたノートだ…



中を開いてみると…

私が書いた文章の後に…

楓と剣との日々がびっしりと書いてあった。

ノートは何冊もあった…



それには、高校生の2人…

就職してからの2人…

結婚してからの2人…

子どもが出来てからの2人…

子どもが巣立ってからの2人…

最近の2人…



ノートを読んだだけでも、剣との日々を体験したような気分になって…

楓は、嬉しくて…涙が止まらなかった…







病室のノックが鳴り…



入って来たのは、剣だった…



「楓、体調はどう?」



「うん、今日はすごくいいよ」



「ノート見てるんだね…俺も見ていい?」



「うん、いいよ。変なこと書いてあるかもしれないけど気にしないでね」



剣は、アラレちゃんのノートを見て驚いた…



「楓、今の楓はどっちの楓?」



「え?どっちって?えっと………過去に戻った楓だよ」



「そうか…そうだったのか…」



そう言って、剣は立ち上がって後ろを向いた…



「えっ?剣どうしたの?」



振り向いた剣は…



「実は…俺も、あの1年間にいたんだ…どうしても楓との過去をやり直したくて…死ぬ瞬間にお願いした。1年経って、気が付くと病室の前だったんだ…」



「本当に?そうだったんだ…だからかぁ。どおりで……シャイな剣も積極的だったんだね…」



「あれからの剣と楓は本当に頑張ってくれたみたい…このノートを見て」



二人は、沢山のノートを読んだだけで…

すごく幸せな気持ちになれた…



「実際に、剣との日々を過ごせなかったのは寂しいけど、これで良かったと思う」



「そうだな…こんな不思議な経験が送れるとは思ってなかった。これで後悔なく逝くことが出来るな…」



「そうだね。本当に幸せだったよ。剣…」



「俺もだよ…楓、ありがとう」



「剣、ありがとう」



その言葉を、言った途端…

また、身体がグルグル回った…







でも、今度は剣がそばにいた…

二人は手を繋いで…

この世界から消えた…