早朝参拝は朝6時15分に旅館の玄関に集合することになっていた。
 12月という時期にしては、昨日は気温がだいぶ高かったが、やはり早朝ともなると山陰の寒さは厳しい。
 わたしは収納袋にしまって持ってきた軽いダウンコートを羽織る。
 仁和希さんと一緒に玄関に行くと、福水ちゃんが寒いと言って震えていたので、これも持ってきていたふわふわネックウォーマーを貸してあげた。
 ダウンコートがスタンドカラーになっていて、首元にネックウォーマーがなくても意外と寒くなかったからだ。
「神や……あったかい……」とつぶやく、ふんわりした雰囲気の福水ちゃんによく似合っていた。

 外に出ると、少し明るくなり始めてはいたが、真っ暗な夜というほどでもなく、顔が見えるような見づらいような薄暗さだった。
 見上げると細い三日月が遠慮がちに光っている。
 空の色が濃紺から紫、そしてピンク色のグラデーションに染まっている誰彼時(かわたれどき)が美しい。

 わたしは神社やパワースポットに詳しくなく、初詣くらいしか神社に行かないタイプなのだが、こういう神社参拝をよくしている人は、神社にあるすべての祠に参拝するらしい。
 今回も、出雲大社の入り口にある大鳥居を抜けたすぐのところにある祓社(はらえのやしろ)という祠から参拝することになった。
 参拝初心者にとっては、こんな小さな祠にまで参拝するんだという驚きから始まる。

 マチルダさんは、小さいときから神社参拝に慣れているようで、ここでは祝詞をあげてくれた。
 すごい、神主さんみたいだなあと思いながら祝詞を聴く。
 きんと張った冬の空気の中で聴いたマチルダさんの祝詞は崇高な響きを持っていて、祝詞をあげる彼女の横顔がかっこよかった。

 すべての祠を参拝して有名な注連縄の神楽殿まで来たとき、空はすっかり明るくなっていて、すでに日が昇りきっていた。
 早朝なので、入り口の大鳥居まで戻っても、車も人もほとんどいない。
 大鳥居から最寄りの出雲大社前駅までの一本道は神門通りと呼ばれるらしいのだが、その通りをわたしたちだけで独占しているかのような気分になった。
 人のいない神門通りを写真に撮っているMIKEさんの後ろ姿をミライコさんが撮っていた。


 旅館の朝ご飯はこれまた豪華だった。
 その中のメニューで初めて知ったけど、甘味のぜんざいというのは、出雲の神在月が由来で、神在と書いてじんざいと読んだところから来ているらしい。
 出雲神在はあっさりしていて、朝から余裕で楽しめた。