出雲空港に着いたら、メッセージアプリの同窓会参加メンバーのグループにメッセージが入っていた。
ミライコさんと池さんが、時間を間違えて飛行機に乗れず、新幹線で出雲に向かうらしい。
その結果、二人はランチに間に合わないとのことだった。
他人のことながら、どきりと緊張する。
わたしも昔、ギリギリ搭乗には間に合ったけど、空港到着時間の計算を間違え、保安検査場を航空会社のグランドスタッフと一緒に爆走して駆け抜けた経験が何度かある。
しかも航空券は安くない。
もちろん新幹線も安くない。
さらに、飛行機と新幹線ではかかる時間が違うので、予定が大幅に変わる。
それでも3時間遅れで到着できるらしく、そのこと自体は不幸中の幸いだった。
ミライコさんと池さんは、きっとこっちに向かう途中で、教えをスムーズに実践しながら自責の念を落ち着かせ、笑って合流するだろう。
だから大丈夫だと信じることができた。
想像どおり、ミライコさんと池さんは出雲大社散策に余裕を持って間に合い、笑顔でやってきた。
出雲大社には、有名な注連縄がある神楽殿のすぐそばに日の丸旗が掲げられている。
これがとにかく大きくて、遠めに見ても異常な大きさが目立っていた。
そして、その日の丸旗の大きさが畳75畳分あるらしいことを、行きのタクシーの運転手が教えてくれたとミライコさんが言っていた。
「飛行機に乗り遅れたからこそ、その情報を知ることができたよね」
ミライコさんがサラッとそう言うから、やっぱすごいわこの人……と感心せずにいられなかった。
おそらくネットで調べたら、その情報自体はすぐに出てきただろう。
しかし、ここで重要だったのはその事実ではなくて、ミライコさんの言葉どおり、起きた現象に違う意味づけをできたかどうかなのだ。
その訓練を繰り返して、もっと大きく感情が揺さぶられるようなことが起こったときにも同じような対応ができることをわたしたちは目指している。
稲佐の浜に私たちがたどり着いたのは、日の入り直前の時間だった。
水色とオレンジ色のグラデーションの空の下で、藍色の冬の海は、波が寄せては引いていくのを繰り返していた。
あまりにも空が綺麗で、私たちは砂を取るのもそこそこに、思い思いにスマホで写真を撮ることに夢中になる。
池さんが写真を撮っている後ろに位置どっていたら、海から風がふんわりと吹いてきて、池さんの着ていたコートとスカートの裾をほんの少し膨らませるように揺らしていった。
そのすべてが計算されたかのように美しいバランスで、わたしはこっそり池さんの後ろ姿と空のコンビネーションを写真に収めた。
りささんはカメラが趣味らしく、コンパクトなミラーレス一眼のカメラでスマホでは撮れないような写真をたくさん撮っていたので、後で写真ちょうだいとお願いしておいた。
旅館ではフロントの近くにお土産が売っていた。
「猫グッズないかなー?」
MIKEさんがすぐさま売り場で猫グッズを探し始める。
MIKEさんは猫グッズを集めるのが趣味なのだが、猫自体はアレルギーのために飼っていない。
そして好きな猫の種類は、三毛猫と思わせておいてロシアンブルーらしい。
「『MIKE』って名前は猫が好きだからつけたわけじゃなくて、本名からつけただけ」
らしいのだが、紛らわしいなと密かに思っている。
現にMIKEさんの元には、猫好きを知っているファンから、三毛猫グッズばかりプレゼントされるのだそうだ。
「あー、ロシアンブルーの猫グッズはなかった」
心底がっかりした声でMIKEさんが言う。
それは結構なレアグッズでしょうとわたしなんかはすぐ考えてしまうのだが、やはり本家は違う。
「私はね、ロシアンブルーの猫グッズに囲まれて嬉しい気持ちで毎日を過ごすって決めてるんでね、大丈夫。
そこに至るまでの過程は考えないから」
これがMIKE流の未来の決め方なのである。
ミライコさんと池さんが、時間を間違えて飛行機に乗れず、新幹線で出雲に向かうらしい。
その結果、二人はランチに間に合わないとのことだった。
他人のことながら、どきりと緊張する。
わたしも昔、ギリギリ搭乗には間に合ったけど、空港到着時間の計算を間違え、保安検査場を航空会社のグランドスタッフと一緒に爆走して駆け抜けた経験が何度かある。
しかも航空券は安くない。
もちろん新幹線も安くない。
さらに、飛行機と新幹線ではかかる時間が違うので、予定が大幅に変わる。
それでも3時間遅れで到着できるらしく、そのこと自体は不幸中の幸いだった。
ミライコさんと池さんは、きっとこっちに向かう途中で、教えをスムーズに実践しながら自責の念を落ち着かせ、笑って合流するだろう。
だから大丈夫だと信じることができた。
想像どおり、ミライコさんと池さんは出雲大社散策に余裕を持って間に合い、笑顔でやってきた。
出雲大社には、有名な注連縄がある神楽殿のすぐそばに日の丸旗が掲げられている。
これがとにかく大きくて、遠めに見ても異常な大きさが目立っていた。
そして、その日の丸旗の大きさが畳75畳分あるらしいことを、行きのタクシーの運転手が教えてくれたとミライコさんが言っていた。
「飛行機に乗り遅れたからこそ、その情報を知ることができたよね」
ミライコさんがサラッとそう言うから、やっぱすごいわこの人……と感心せずにいられなかった。
おそらくネットで調べたら、その情報自体はすぐに出てきただろう。
しかし、ここで重要だったのはその事実ではなくて、ミライコさんの言葉どおり、起きた現象に違う意味づけをできたかどうかなのだ。
その訓練を繰り返して、もっと大きく感情が揺さぶられるようなことが起こったときにも同じような対応ができることをわたしたちは目指している。
稲佐の浜に私たちがたどり着いたのは、日の入り直前の時間だった。
水色とオレンジ色のグラデーションの空の下で、藍色の冬の海は、波が寄せては引いていくのを繰り返していた。
あまりにも空が綺麗で、私たちは砂を取るのもそこそこに、思い思いにスマホで写真を撮ることに夢中になる。
池さんが写真を撮っている後ろに位置どっていたら、海から風がふんわりと吹いてきて、池さんの着ていたコートとスカートの裾をほんの少し膨らませるように揺らしていった。
そのすべてが計算されたかのように美しいバランスで、わたしはこっそり池さんの後ろ姿と空のコンビネーションを写真に収めた。
りささんはカメラが趣味らしく、コンパクトなミラーレス一眼のカメラでスマホでは撮れないような写真をたくさん撮っていたので、後で写真ちょうだいとお願いしておいた。
旅館ではフロントの近くにお土産が売っていた。
「猫グッズないかなー?」
MIKEさんがすぐさま売り場で猫グッズを探し始める。
MIKEさんは猫グッズを集めるのが趣味なのだが、猫自体はアレルギーのために飼っていない。
そして好きな猫の種類は、三毛猫と思わせておいてロシアンブルーらしい。
「『MIKE』って名前は猫が好きだからつけたわけじゃなくて、本名からつけただけ」
らしいのだが、紛らわしいなと密かに思っている。
現にMIKEさんの元には、猫好きを知っているファンから、三毛猫グッズばかりプレゼントされるのだそうだ。
「あー、ロシアンブルーの猫グッズはなかった」
心底がっかりした声でMIKEさんが言う。
それは結構なレアグッズでしょうとわたしなんかはすぐ考えてしまうのだが、やはり本家は違う。
「私はね、ロシアンブルーの猫グッズに囲まれて嬉しい気持ちで毎日を過ごすって決めてるんでね、大丈夫。
そこに至るまでの過程は考えないから」
これがMIKE流の未来の決め方なのである。