「ほら、ここだよ。」
「わあ…!!」
私は驚きで目を見開いた。赤、黄、青、紫、ピンク、オレンジ、白…他にもたくさんの色の花々と、透き通るような青空が目の前に広がっている。夢の世界にいるように美しい光景。私が普段住んでいる場所とは違って、自然そのままの花畑だった。
「すっごく綺麗!!ありがとう、柊月!」
「わっ…ど、どういたしまして。」
私は、感激のあまり柊月に抱きついた。柊月は驚きつつ受け止めてくれる。
「あっちにベンチがあるんだ。少し座って休もうか。」
木陰にあるベンチに腰を下ろすと、涼しい風が吹いて、柊月の綺麗な髪が風に揺れる。と、柊月が少し遠慮しながら口を開いた。
「あの…昨日から、ずっと考えてたんだ。俺は、農家の息子。…一番下の階級だ。一緒にいてはいけないんじゃないかって…。」
「…いいの。私が、柊月と一緒にいたいから。私は…私たちは、茨木結斗の家族だからって、いつも、どこにいっても『普通の女の子』にはなれなかった。でも、柊月は、私のことを1人の女の子として見てくれた。それが嬉しかったんだ。だから、一瞬にいてほしい。」
「…そっか。分かった。じゃあ、もう一つ、言いたいことがある。少しだけ待ってて。」
柊月はベンチを離れて、何かを手にとって戻ってきた。
「…二葉のことが大好きだ。初めて二葉を見た時から…ずっと。俺と、付き合ってほしい。」
柊月の手には、ジャスミンの花が握られていた。花言葉は、『あなたと一緒にいたい』。
「…!!いい、よ。実は私も、初めて会った時…柊月のことが、好きになった。私たち、似たものどうしだね。」
私たちは、並んで風に揺れる花たちを見つめる。私たちの出会いを祝福するように、花は咲き乱れていた。