龍天院工業部品株式会社 社長 龍天院尊琉。

「聞いたことない会社だけど、社長さんなんだって! あんた玉の輿じゃない! また今日中に来るって言ってたわよ」
 母がけらけらと笑う。
 萌々香は受け取ってそれを見た。
 会社の代表の電話番号は書いてあるが、まさか返事をここにしろとでも言うのだろうか。
 やっぱりからかわれたのだろうし、この名刺だって本物かどうかわからない。
 名刺を覗き込んだ美穂がスマホを使って社名で検索をかける。
「え、すご」
 美穂はスマホを萌々香たちに見せる。
「龍天院テクノロジーズ株式会社の子会社で、社長は龍天院テクノロジーズの長男だって。写真も載ってるよ」
 クールに笑う尊琉の画像がそこにはあった。
「で、その親会社の龍天院テクノロジーズだけど」
 美穂は言葉を切ってから、重々しく言う。
「業界一位だって!」
 取引先は自動車業界をはじめ家電製作会社など、名だたる企業ばかりだ。自動車部品や精密機械を作っており、世界各国と取引がある。
「そんな大きな会社なの!?」
 町工場をイメージしていた母は、驚いて声を上げた。