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 萌々香は名前も知らない男性に手をひかれて商店街の中を歩く。
 スタスタと歩いて行くので、案内もなにもあったものじゃない。裾の長い衣装とぞうりのせいで歩きづらく、ついていくのが精いっぱいだ。
「ちょっと待ってください!」
 萌々香は男性の手を振り払った。
「なんだ」
 男性は立ち止まって振り返る。
「どういうことなんですか」
「覚えてないのか」
「なんのことかさっぱりわかりません」
 萌々香が答えると、男の子が男性の手をひっぱった。
「おまんじゅう食べたい」
 男性はため息をついた。
「どこかにベンチはあるか」
「あちらに」
 男性の問いに、萌々香は答える。
少し先にベンチが設置されていた。その横には自動販売機もある。
 彼はそこで男の子にお茶を買ってあげて座らせた。