**無職72日目(11月11日)**
心太朗はリモコンを握りしめ、TVerを開いた。テレビ画面には「上田と女が吠える夜」の文字が映し出され、番組の今回のテーマが目に入った。「睡眠に悩める女たちの悩みを一挙解決」って、なんとも壮大なテーマだ。まあ、心太朗自身も睡眠に関してはかなり悩まされた部類なので、これは興味深いと思い、早速チャンネルを合わせることにした。
その後、心太朗はX(旧Twitter)のタイムラインを見ていたところ、一人のフォロワーが悪夢に悩まされているという投稿をしているのを目にした。「おお、タイムリーだな」と思い、番組で聞いた話を思い出す。確か、その番組では「悪夢はストレスを発散するために見ている」という話がされていた。心太朗はその情報をフォロワーにシェアしてみることにした。
すると、そのフォロワーが反応してくれた。「信じられないけど、詳しく知りたい!」と。心太朗は心の中でちょっと得意気になったが、すぐに思い直す。「いや、でもこれって俺が言ったことじゃなくて番組で聞いたことだからな…」と少し冷静になった。
さて、心太朗はふと思い立つ。「この話、日記小説にしようかな?」と。フォロワーも日記のネタにしてみてはと勧めてくれた。ちょうど今日はネタがない。思い立ったが吉日、早速その番組をもう一度見ようとTVerで検索をかけた。しかし、検索してもその番組は見つからない。どうやら視聴期限が切れたようだ。
「まあ、でも記憶をたどってみるか」と心太朗は前向きに考え、思い出した内容を振り返りながら、ペンを握りしめた。
「確か、あの番組に日本で唯一のスリープトレーナー、ヒラノマリが出てたんだよな」とつぶやく。ヒラノマリは、スポーツ選手たちの睡眠をサポートしていることで知られる存在だ。睡眠の専門家として、彼女はテレビ番組に出演し、さまざまな睡眠改善のアドバイスをしていた。
「で、悪夢の話が出てきたんだ」と心太朗は続ける。確か、悪夢をよく見る原因は間違いなくストレスだという話だった。そして、悪夢は実はそのストレスを発散している形だというのだ。しかし、その詳細については記憶が曖昧で、「やっぱり番組をもう一度見ないとダメだな」と思った。
「あと、羊を数える睡眠法って、実は英語では意味があるんだよな」と、心太朗は思い出す。英語で「sheep」と「sleep」の発音が似ているため、暗示をかけて眠りに誘うという理屈だが、日本語だとその意味がまったく通じない。むしろ、羊を数えることが逆に脳を覚醒させて、寝るどころか目が冴えてしまう可能性もあるというのだ。
さらに、光の目覚まし時計についても話が出ていた。音の目覚まし時計と違い、光の目覚まし時計は体内時計を整え、自然に目が覚めるため、怠さが残らないという。
また、アドレナリンが高まって寝れない時は、40度くらいのお湯に15分ほど浸かって、一度温めた後、深部体温を下げるとよいというアドバイスもあった。
さらに、おでこを冷やすと脳が冷えて眠れるという話も。
最後に、年がら年中、長袖長ズボンで寝るほうがいいというアドバイス。年中、冬のような格好をすることで、眠りの質が向上するなら試してみる価値はありそうだと感じた。
しかし、心太朗は番組で紹介された睡眠法について、正直あまり新しい情報はなかったと思っていた。なにせ、彼はもう何年も試行錯誤してきたのだ。睡眠に悩む人々がよく感じることだが、やっぱり「これをやれば絶対に眠れる!」という答えが見つかるわけではない。どんなに科学的に証明された方法を試しても、効果がないことだってある。心太朗もその一人で、いろいろ試してきたけど、どれもイマイチだった。
「結局、精神的な要因が一番大きいんだよな」と、心太朗は考える。寝るプレッシャーや、寝れないという暗示がかかるから、余計に眠れなくなる。あれこれやればやるほど、逆に寝られなくなるという、睡眠に悩む人たちにはありがちなパターンだ。
でも、実は心太朗、もう睡眠の悩みを解決していた。その秘密が、心太朗のオリジナル睡眠術なのだ。少し自信を持って言うが、これがまたシンプルで効果的だった。
まず、寝る条件を決めないこと。「寝る場所や寝る時間を決めるから、余計にプレッシャーがかかるんだよな」と心太朗は思っていた。もちろん、最低限の睡眠時間は決めておく。8時間は絶対に寝ること。これだけは守る。眠くなれば、それ以上寝てもいいし、昼寝もOKだ。実際、松村沙友里なんかは、20時間寝ることもあるという話もしていた。それをネタにして、全く罪悪感を感じる必要はないというのだ。
「寝る場所とか時間にこだわるより、まずは寝れることを優先しよう」と思って、心太朗はかなりリラックスしていた。
最初はソファで寝ることが多かった。ベッドに行くと、なぜか眠れなくなるからだ。心太朗のやり方は、眠くなったら、そのままソファで寝ることだった。「寝れないと悩むくらいなら、寝れる場所で寝ることが一番だよな」と、彼は完全に開き直っていた。寝る場所よりも、眠りにつくことを最優先にした。そうすると、精神的に楽になって、次第に眠るハードルが下がっていった。
次第に、心太朗のリズムも整ってきた。「世間一般に合わせる必要はないな」と気づき、無理に早起きしようとは思わなかった。早い時間だと、眠くても眠れない時があったので、だいたい2時くらいに寝ることが多かった。それでも、8時間は必ず確保するようにして、朝は10時起きくらいだった。
でも、考えてみてほしい。6時に起きても10時に起きても、結局8時間寝てるわけだから、起きてる時間は一緒である。彼の結論はシンプルだった。「眠れないなら、生活のリズムを自分に合わせればいい。極端に言えば、丸2日間起きっぱなしで、丸1日寝る生活でも全然OKだ」。
このオリジナルの方法で、心太朗はすっかり睡眠の悩みから解放されたのだ。
こうして、心太朗は「寝る場所や時間を決めない」というシンプルなルールで、徐々に自分のリズムを取り戻していった。最初はソファで寝ることが多かったが、次第にベッドでも寝れるようになり、寝るという行為そのものにハードルが下がっていった。無理に寝る場所や時間を気にすることがなくなったことで、心太朗は睡眠へのプレッシャーを軽く感じるようになった。
さらにもう一つの新しい発見が、好きな動画を「観る」のではなく「聞き流す」ことだった。音楽でも良いけれど、心太朗にとってはしゃべり声の方が心地よかった。特に、漫才を聞き流すことが多かった。「漫才って、ただ笑ってるだけで、なんか不思議と心がリラックスするんだよな」と心太朗は思う。笑い声に包まれていると、段々と眠くなり、そのまま寝てしまう。ドラマや映画も良かったけれど、心太朗はあくまで「観る」のではなく「聞く」ことが大事だと思った。イメージが膨らんで、気づけば夢の世界に突入しているのだ。まぁ、作り手には失礼な話だが…。
心太朗はアニメやゲームには興味がないが、アニメ好きやゲーム好きの人には、それが効果的かもしれない。「好きなことだからこそ、何も考えずに聞き流せるんだよな。それがリラックスにつながって、眠りに導いてくれるんだ」と思う。逆に、YouTubeの睡眠導入音源は、心太朗には合わなかった。眠らなければならないというプレッシャーが強くて、余計に眠れなくなる。そう、心太朗にとって睡眠の最大の障害は「リラックスできないこと」だったのだ。
その結果、心太朗は睡眠にプレッシャーを感じることがなくなり、リズムも安定。睡眠の質が向上すると、昼間の活力もアップして、日中の眠気も少なくなった。心太朗はようやく、昼間にしっかりエネルギーを使うことができるようになった。
「最初は無理に体を動かさなくても良いんだよな」と心太朗は感じている。まずは自然に自分のリズムに身を任せて、無理せず調整していく方が、健全な方法だと思った。「急がば回れ」と言うように、焦って不眠症を治すことは逆効果だし、このやり方が一番リラックスできた。
最終的に、心太朗は自分のペースで、睡眠と向き合いながら、少しずつ充実した日々を送ることができるようになった。
こうして、心太朗は睡眠の悩みを見事に解決した。
睡眠のハードルが下がったおかげで、心太朗は割と寝ようと思えばいつでも寝れるようになった。以前のように寝室でゴロゴロしながら「寝れない、寝れない」と思い悩むこともなく、自然と眠りに入れるようになったのだ。
もちろん、これに科学的な根拠があるわけではない。専門家に基づく確立された理論ではない。ただ、心太朗が身をもって実践した方法であり、それが自分にとってはうまくいったという事実だけがある。それこそが、心太朗流の睡眠法だ。
この方法が全ての人に合うかどうかは分からない。でも、心太朗はあえて言おう、これは専門誌ではなく小説だから、心太朗のオリジナルな方法を発信していると。
他の誰かがどう考えるかはともかく、自分にとって一番リラックスできる方法が見つかった。それだけで十分だと思う。
どんなに本を読んでも、ネットで調べても解決しない人には、この方法を試してみるのもいいかもしれない。
科学的に証明されていなくても、心太朗が実際に経験したことであり、血の通ったリアルな体験だからこそ、どこか共感できる部分があるかもしれない。時には理屈じゃなくて、実際に試してみることで、初めて自分に合った答えが見つかることだってある。
何事も、完璧な答えを求めるよりも、自分に合ったやり方を見つける方が大切だと思う。試してみる価値は、きっとあるはずだ。そう思う心太朗であった。