無職のススメ、元社畜の挑戦日記


**無職69日目(11月8日)**





心太朗は今日、妊婦健診のため病院に行く予定だった。順調にいけば、あと2回通院したら、ついに待望の息子とご対面だ。しかし、朝の6時に起きるのはちょっとハードルが高い。まあ、でも、妻のため、子供のため、そして自分のために、必死に目をこじ開ける。



「おいおい、6時って、俺にとってはまだ真夜中だろ…」と心の中でツッコミを入れながら、布団を引き剥がし、なんとか起き上がる。まだ体が寝ぼけてる感じだが、ここで寝過ごすわけにはいかない。



先週までは寝られない日が続いていて、ほぼ寝ないまま病院に行くこともあったが、今回はなんとか1時半には寝付けた。5時間半の睡眠、心太朗にしては上出来だ。もっと寝たい気持ちは山々だが、まあ許容範囲だ。



2時間かけて病院へ向かう道中、まだ空は眠たそうな薄明るさで、外はひんやり冷たい。心太朗は車の中で震えている。ところが、澄麗はというと、またしても半袖だ。心太朗は思わず「意味わかんねぇ!」と心の中で叫ぶ。寒いのは心太朗だけなのか?



車を走らせるうちに、心太朗の目も覚めてきて、空の方も少しずつ明るくなってきた。病院に着くころには、心太朗もお天気もすっかり晴れやかになっていた。



病院に到着して、澄麗はいつものように検尿と血液検査、そして診察を受ける。心太朗は待っている間、立ちっぱなしでXを確認しては、フォロワーさんとやり取りをし、日記小説を考えていた。少しでも時間を有効活用しないと、心太朗の性格的にモヤモヤしてしまうからだ。



やっと澄麗が戻ってきた。嬉しそうな顔で、赤ちゃんが順調に成長していると報告してくれた。「2750gって…先週と変わらないじゃん」と心太朗が心の中でボソッと言う。まあ、誤差の範囲だから気にしなくていいらしい。でも、エコー写真の赤ちゃんの顔は相変わらず隠されていた。「いつまで隠しておくんだよ、顔くらい見せてくれよ」と心太朗は思わず愚痴を言う。



その後、助産師とのお話が始まった。澄麗が質問される内容はだいたい予想がつくが、今回も心太朗も参加することになった。50代くらいの助産師さんで、第一印象からしてなんとなく苦手なタイプだなと思っていた。



「やっぱりな…」と心太朗がつぶやく暇もなく、その助産師はスパルタ気味に話し始めた。「澄麗さん、半袖はダメ!お腹の赤ちゃんが寒いのよ!靴下も履いて!」と厳しい口調で言われ、澄麗はちょっとびっくりしている様子。「腹巻きもしなさい!」と、まるで軍隊の指導員のようだ。



さらに、運動についても注文が入る。「毎日買い物に1時間くらいお出かけしてるって言ってたわよね?」と聞かれ、澄麗は「はい」と答える。「それじゃ少ないわ!毎日30分から1時間の四つん這い姿勢を取りなさい!スクワット100回しなさい!」と、さらに厳しい指示が。



心太朗はその光景を黙って見ていたが、案の定、助産師は「あなたも協力しなさい!」と目を光らせた。心太朗は、久しぶりに職場での客からのクレームを思い出しながら、これが夫婦の“仕事”だと心の中で呟いた。



「もういつ産まれてもおかしくないのよ!」と、助産師からの最後の一撃。「もっと自覚しなさい!」という言葉に、心太朗は少しだけ焦りを感じた。



その後、帰りの車の中で、心太朗と澄麗は次の計画を立てた。「確かにもうすぐだね」と心太朗が言うと、澄麗も頷いた。「家で30分は四つん這い姿勢を取らなきゃね」と、澄麗は冷静に言う。もちろん、心太朗もその計画に加わることになる。



さらに、スクワットは最初は50回からやるという話になった。心太朗は「これはちょっと無理だろ…」と心の中で笑ったが、すでに助産師さんの厳しい顔が浮かんでいて、逃げるわけにはいかない。



そして、なぜか「明日は簡単な山登りをしよう」とまで言われ、心太朗は「本気か?」と疑問を抱きながらも、「もちろんコタちゃんも」と言われ、渋々その計画を受け入れた。



最後に、産まれるまで心太朗は禁酒すると決意する。「いつ陣痛が始まっても車を運転できるようにしないとね」と澄麗の言葉に、心太朗は「じゃあ、今日から酒を抜くか…」と呟いた。



帰り道、イオンモールに立ち寄った。澄麗が映画を観たいと言うので、上映までの2時間をどう過ごそうか考えた。結局、運動がてらぶらぶらとモール内を歩くことにした。



最初は無意識にただ歩いていたが、だんだんと目線が変わってきた。子供用のおもちゃや食器、服が並ぶ棚に目が行く。以前はそんなものに全く興味がなかったのに、今は何だか心が引き寄せられる。特に澄麗が、授乳室やオムツ替えスペースの位置を気にする様子を見て、心太朗も自然とその視線を追ってしまった。子供用カートが並んでいるのを見て、なんだか未来を感じる。まだ実感が湧かないけれど、確実に自分たちの生活が変わりつつあるのを感じた。



映画が始まる時間になり、いよいよ『十一人の賊軍』を観ることに。映画の内容に関しては、戊辰戦争の真っ只中で新発田藩の砦を守るために、罪人たちが命を懸けて戦うという壮絶な話。白石和彌監督の演出も、山田孝之や仲野太賀の演技も圧巻で、心太朗も澄麗も見入ってしまった。



特に爆発音が激しくて、心太朗はふとお腹の中の健一が驚いているのではないかと心配になる。映画の迫力に圧倒されながら、澄麗のお腹に手を当てて静かに見守る。しかし、そのお腹の中でグルグルと動く感じに、「ごめんよ、健一」と心の中で謝る。映画の音にびっくりさせてしまったのかもしれない。



最近、何をしていても健一のことを考えてしまう。まだまだ親としての実感は少ないけれど、一歩一歩着実に親になっていくんだと実感しながら、その瞬間瞬間を大切に感じている。

**無職70日目(11月9日)**

心太朗は、いつものように澄麗と一緒に買い物に行く日だった。天気は曇りで、なんだか外に出る気も少し減るような空模様。でも、それでも澄麗とのお出かけだから、心太朗は気合いを入れて家を出た。寒さもなんのその、ブルゾンを着込んで、万全の体制を整えていた。

しかし、彼の隣を歩く澄麗は相変わらず半袖。心太朗はその姿を見て、暑がりだというのは分かっているが、こんな寒い日にも耐えられるのか?と思うと、やっぱり心配だ。

「寒くないの?」と心太朗が聞くと、澄麗は軽く肩をすくめて答えた。「寒かったら上着着るから」と、まるでこれが自然なことのように。心太朗は内心で「あ、これ触れちゃいけないやつだ」と気づき、無言で歩き続けた。

心太朗の心の中ではいろいろな疑問が渦巻く。こっちは心配して聞いたんだ。助産師さんだって「暖かくしておけ」って言ってたし、それなのに怒られる理由があるのか!?と。

すると、次第に心太朗の中でちょっとしたイライラが湧いてくる。何か引っかかっている。だが、ここで言葉を発すればさらに事態は悪化するだろうと冷静に判断。今はスルーしておこう。

しばらく沈黙の中を歩き続ける二人。すると、澄麗がぶっきらぼうに「明日、山に登るの?」と突然切り出した。心太朗は少し驚いたものの、冷静を保とうと努め、「どっちでも…」と返す。もうこの時点で、二人の間に微妙な空気が流れ始めていた。

お互いに言いたいことがあるけれど、それを口にするのは今じゃない。おそらく、この瞬間から戦闘が始まることを心太朗は感じていた。沈黙の戦争の予兆だ。そう、このままお互いが何も言わないまま、無言でいることが、すでに一つの戦術になっているのだ。

澄麗がまた黙って歩き続ける。心太朗も黙ってついていく。でも、心の中では「何でこんなに気まずくなっているんだろう?」とモヤモヤしている。出産に向けて何か気を使っているのか、冷えた体が何となく気になるのか。どこかしらで、心太朗は彼女のことを心配している自分がいて、でも、言いたいことを言えない不安もある。

歩きながら、二人の間には徐々に無言の圧力が高まっていった。これが、心太朗にとってはかなりのストレス。たぶん澄麗は気にしていないのだろうけど、彼は少しでも不安を感じると気になってしまうタイプだからだ。

澄麗が一言、「じゃあ、明日も出かけない?」と聞いてきた。

心太朗はその言葉に少し驚きつつ、「別に、どっちでも…」と冷たく返す。心の中ではもう戦闘モードに入った。

ついに、二人の間にある「戦闘開始」の合図が鳴った。それは、心太朗が感じた一瞬の「ピリリ」とした空気だった。

心太朗と澄麗の間に、意地の張り合いが始まった。だいたい、今までのケンカはいつもこんな風に冷戦から始まり、気づけば数日間、もしくは長ければ1週間以上も続くことがあった。お互いに口をきかず、でも何となく空気を察し合って、無言のまま日々が過ぎていくのだ。

しかし、今回はちょっと違った。澄麗は妊娠中で、いつ産まれてもおかしくない。そんな状態でこんなくだらないケンカをしている場合じゃないことは心太朗も分かっていた。それでも、プライドや意地が先行して、どうしても譲れない自分がいた。

しばらくして、心太朗はとうとう口を開いた。「お腹の調子は?」と、ぶっきらぼうに聞いた。澄麗はその問いに、まるで気にも留めないように「別に…」と返してきた。

その反応に、心太朗はさらに戦闘モードを維持することを決めた。彼女の態度が気に入らなかったのだろう、二人は再び無言で歩き続けた。ここで終わるわけにはいかないという、どこか子供じみた意地が心太朗を突き動かしていた。

家に帰り、晩御飯の時間が来ても、いつも通り乾杯することはなかった。お互いに譲る気はないし、テレビを見ながら食事をするだけ。心太朗は早食いで、先に食べ終わるが、いつもは澄麗が食べ終わるまで席を立たなかった。普段なら、澄麗が食べ終わるのを待って一緒に食器を片付けるのだが、この日は違った。心太朗は「ごちそうさま」と言って、自分の食器を片付け、ソファに座った。

澄麗も同じように、譲歩はしなかった。お互いに無言で、ただ時間が過ぎていくのを見守るだけだった。

「このままだと、長期戦だな…」と心太朗は思ったが、予想に反して、澄麗が突然言った。「お腹の調子が悪いから、明日病院に行ってくる」と。

その言葉を聞いた瞬間、心太朗の中で何かが弾けた。ケンカなんてしてる場合じゃない、澄麗の体調が心配だ。すぐに、「大丈夫か?どれくらい痛い?明日は絶対に病院に連れて行くからな」と言ったが、澄麗は「大丈夫」と言って、頑なに病院には行かないと言った。何度聞いても病院には行かないと言う。

心太朗はその瞬間に気づいた。澄麗は、仮病を使ったのだ。お腹の調子が悪いと言いながら、どうしても心太朗に構ってもらいたかったのだろう。この時、心太朗は戦いを終わらせるべきだと思った。

彼は、わざと澄麗のお腹を優しくさすりながら言った。「でも、お腹の中の健一が元気でいてくれれば、それが一番だよな」と心の中でつぶやいた。すると、澄麗のお腹の中で、健一がくるりくるりと動き始めた。まるで、「父ちゃんと母ちゃん、仲良くしてよ」と言っているかのように。

その瞬間、心太朗は澄麗の顔を見て、自然と笑顔がこぼれた。澄麗も同じように微笑みながら、心太朗の目を見返した。

そして、二人は何も言わずにしばらくお腹をさすり続けた。今、この瞬間、二人の意地の張り合いはどうでもよくなっていた。お腹の中の健一が元気でいることが、何よりも大切だと思えたからだ。

二人はようやく心から笑い合った。健一が仲裁してくれたおかげで、二人のくだらない意地の張り合いは、すっと終わった。

何よりも大切なことは、澄麗が元気で、健一が無事に生まれてくれることだった。それだけで、もう何もかもがどうでもよくなった。

小さな命が育まれているという事実が、何もかもをシンプルにしてくれる。争うことや意地を張ることが、いかに無意味なことかを教えてくれた。

心太朗は、改めて思った。今はただ、澄麗と健一を守ることが最も大事だと。それが、健一からのメッセージだと、心太朗は心の中で静かに受け入れた。

二人のケンカは、無事に終結したのであった。

**無職71日目(11月10日)**

心太朗が目を覚ますと、そこには隣でぐっすりと眠る澄麗の姿があった。昨日は些細なことでケンカしたが、今や何事もなかったかのように仲良く戻っている。とはいえ、心太朗は何か大切なことを忘れている気がしてならない。今日は確か助産師に指導された「運動モード」に突入する日だったような…。

澄麗が一言、「山に登ろう」と提案してきた。臨月の妊婦が山登りなんて大丈夫なのかと一瞬不安がよぎるが、彼女の弟の奥さんも出産日の前日にもっと高い山に登ったと聞き、それが奇跡的に安産につながったらしい。もはや科学的根拠か迷信かもわからないが、澄麗には効果的に映っているらしい。

心太朗も不安を抱きながら準備を始める。さすがに頂上まで行くのは無謀すぎると判断し、適当なところで引き返す予定で出発。気軽なハイキング気分を期待していたが、山の麓に到着して神社でお参りを済ませた後、彼の緊張は少しずつ高まっていく。周囲では七五三の子供たちが可愛らしい衣装を着てはしゃいでいるのを見て、「俺は一体、何をやってるんだろう」と思わず苦笑。

いよいよ山に入り、コースを選ぶことに。険しく短い道か、長く緩やかな道の二択だが、危険は避けるべきだと判断して緩やかな道を選ぶことに。しかし「緩やか」とは名ばかりで、階段になった山道を息を切らしながら登ることに。

道中、あちこちにベンチが設置されており、そこで小まめに休憩をとる。70歳代のお年寄りが軽快に抜いていくのを見て、心太朗は「俺、老人に負けてる…」と心が折れそうになる。澄麗は涼しい顔でベンチに座りながら、「ほら、まだまだ行けるよ!」と微笑んでいる。心太朗は内心「いや、妊婦のほうが元気じゃないか?」とツッコみたくなるが、ここでも飲み込む。

途中で休憩しつつ、なんとか30分ほどで展望台に到着。ここから見える街の景色はまさに絶景で、心太朗は疲れも忘れてしばらく見とれてしまう。ふと横を見ると、澄麗も満足そうに微笑んでいる。「健一が産まれて少し大きくなったら、家族でお弁当を持ってまた来よっか?」と彼女が言い、心太朗もつい、「それも悪くないな」とつぶやいてしまう。

帰り道、心太朗は一層の慎重さで歩みを進めていた。下り坂は想像以上に滑りやすい。「臨月の妊婦を転ばせたら一大事だ!」と、心太朗の心に緊張が走る。澄麗は心太朗の腕や肩にしっかり掴まって、心太朗は彼女を優しく誘導する。足元が危ないところは、まず彼が先に確認してから進む慎重ぶりだ。そんな心太朗の気遣いが功を奏した…かと思いきや。

「おっとっと!」滑りやすい箇所で、心太朗はあえなく転倒。ドサッと尻もちをついた彼を見て、澄麗は「何やってんの」と言わんばかりにケラケラ笑っている。心太朗は、「これも妻と子供のためだ…父は体を張るのだ」と、心の中で悲壮な決意を新たにするが、澄麗は笑いが止まらない様子。さらには、もう一度滑って転び、尻もち連続2回の大サービス。今や澄麗の笑いは止まらない。

ようやく無事に下山し、家にたどり着いた心太朗。全身がガタガタで、内心「妊婦に山登りなんて勧めるもんじゃない…」としみじみ思う。登りはまだしも、下りのあの滑りやすさは一歩間違えれば大惨事。だが、隣の澄麗はケロッとしていて、まるで平気そうだ。

「やっぱり俺が全部損しただけか?」と、心太朗がぼやいていると、ふと澄麗のお腹の膨らみが少し下がってきたような気がした。もしかして、これが効果というやつだろうか?「よし、これなら2回転んだ甲斐があった!」と一人密かに満足感を噛み締める心太朗。

心太朗は、痛む尻をさすりながら思った。人生は時に滑りやすい坂道のように不安定だが、大切な人のために一歩前に進む勇気が大事なのかもしれない。どんなに転んでも、支える覚悟をもってゆっくり進めばいい。

「父は、こうして強くなる。」

そして、ふとカレンダーに目をやると、出産予定日まであと10日。さあ、次はどんな試練が待ち構えているのか。果たして、心太朗の父親奮闘記はどこまで続くのか…。

**無職72日目(11月11日)**

心太朗はリモコンを握りしめ、TVerを開いた。テレビ画面には「上田と女が吠える夜」の文字が映し出され、番組の今回のテーマが目に入った。「睡眠に悩める女たちの悩みを一挙解決」って、なんとも壮大なテーマだ。まあ、心太朗自身も睡眠に関してはかなり悩まされた部類なので、これは興味深いと思い、早速チャンネルを合わせることにした。

その後、心太朗はX(旧Twitter)のタイムラインを見ていたところ、一人のフォロワーが悪夢に悩まされているという投稿をしているのを目にした。「おお、タイムリーだな」と思い、番組で聞いた話を思い出す。確か、その番組では「悪夢はストレスを発散するために見ている」という話がされていた。心太朗はその情報をフォロワーにシェアしてみることにした。

すると、そのフォロワーが反応してくれた。「信じられないけど、詳しく知りたい!」と。心太朗は心の中でちょっと得意気になったが、すぐに思い直す。「いや、でもこれって俺が言ったことじゃなくて番組で聞いたことだからな…」と少し冷静になった。

さて、心太朗はふと思い立つ。「この話、日記小説にしようかな?」と。フォロワーも日記のネタにしてみてはと勧めてくれた。ちょうど今日はネタがない。思い立ったが吉日、早速その番組をもう一度見ようとTVerで検索をかけた。しかし、検索してもその番組は見つからない。どうやら視聴期限が切れたようだ。

「まあ、でも記憶をたどってみるか」と心太朗は前向きに考え、思い出した内容を振り返りながら、ペンを握りしめた。

「確か、あの番組に日本で唯一のスリープトレーナー、ヒラノマリが出てたんだよな」とつぶやく。ヒラノマリは、スポーツ選手たちの睡眠をサポートしていることで知られる存在だ。睡眠の専門家として、彼女はテレビ番組に出演し、さまざまな睡眠改善のアドバイスをしていた。

「で、悪夢の話が出てきたんだ」と心太朗は続ける。確か、悪夢をよく見る原因は間違いなくストレスだという話だった。そして、悪夢は実はそのストレスを発散している形だというのだ。しかし、その詳細については記憶が曖昧で、「やっぱり番組をもう一度見ないとダメだな」と思った。

「あと、羊を数える睡眠法って、実は英語では意味があるんだよな」と、心太朗は思い出す。英語で「sheep」と「sleep」の発音が似ているため、暗示をかけて眠りに誘うという理屈だが、日本語だとその意味がまったく通じない。むしろ、羊を数えることが逆に脳を覚醒させて、寝るどころか目が冴えてしまう可能性もあるというのだ。

さらに、光の目覚まし時計についても話が出ていた。音の目覚まし時計と違い、光の目覚まし時計は体内時計を整え、自然に目が覚めるため、怠さが残らないという。

また、アドレナリンが高まって寝れない時は、40度くらいのお湯に15分ほど浸かって、一度温めた後、深部体温を下げるとよいというアドバイスもあった。

さらに、おでこを冷やすと脳が冷えて眠れるという話も。

最後に、年がら年中、長袖長ズボンで寝るほうがいいというアドバイス。年中、冬のような格好をすることで、眠りの質が向上するなら試してみる価値はありそうだと感じた。

しかし、心太朗は番組で紹介された睡眠法について、正直あまり新しい情報はなかったと思っていた。なにせ、彼はもう何年も試行錯誤してきたのだ。睡眠に悩む人々がよく感じることだが、やっぱり「これをやれば絶対に眠れる!」という答えが見つかるわけではない。どんなに科学的に証明された方法を試しても、効果がないことだってある。心太朗もその一人で、いろいろ試してきたけど、どれもイマイチだった。

「結局、精神的な要因が一番大きいんだよな」と、心太朗は考える。寝るプレッシャーや、寝れないという暗示がかかるから、余計に眠れなくなる。あれこれやればやるほど、逆に寝られなくなるという、睡眠に悩む人たちにはありがちなパターンだ。

でも、実は心太朗、もう睡眠の悩みを解決していた。その秘密が、心太朗のオリジナル睡眠術なのだ。少し自信を持って言うが、これがまたシンプルで効果的だった。

まず、寝る条件を決めないこと。「寝る場所や寝る時間を決めるから、余計にプレッシャーがかかるんだよな」と心太朗は思っていた。もちろん、最低限の睡眠時間は決めておく。8時間は絶対に寝ること。これだけは守る。眠くなれば、それ以上寝てもいいし、昼寝もOKだ。実際、松村沙友里なんかは、20時間寝ることもあるという話もしていた。それをネタにして、全く罪悪感を感じる必要はないというのだ。

「寝る場所とか時間にこだわるより、まずは寝れることを優先しよう」と思って、心太朗はかなりリラックスしていた。

最初はソファで寝ることが多かった。ベッドに行くと、なぜか眠れなくなるからだ。心太朗のやり方は、眠くなったら、そのままソファで寝ることだった。「寝れないと悩むくらいなら、寝れる場所で寝ることが一番だよな」と、彼は完全に開き直っていた。寝る場所よりも、眠りにつくことを最優先にした。そうすると、精神的に楽になって、次第に眠るハードルが下がっていった。

次第に、心太朗のリズムも整ってきた。「世間一般に合わせる必要はないな」と気づき、無理に早起きしようとは思わなかった。早い時間だと、眠くても眠れない時があったので、だいたい2時くらいに寝ることが多かった。それでも、8時間は必ず確保するようにして、朝は10時起きくらいだった。

でも、考えてみてほしい。6時に起きても10時に起きても、結局8時間寝てるわけだから、起きてる時間は一緒である。彼の結論はシンプルだった。「眠れないなら、生活のリズムを自分に合わせればいい。極端に言えば、丸2日間起きっぱなしで、丸1日寝る生活でも全然OKだ」。

このオリジナルの方法で、心太朗はすっかり睡眠の悩みから解放されたのだ。

こうして、心太朗は「寝る場所や時間を決めない」というシンプルなルールで、徐々に自分のリズムを取り戻していった。最初はソファで寝ることが多かったが、次第にベッドでも寝れるようになり、寝るという行為そのものにハードルが下がっていった。無理に寝る場所や時間を気にすることがなくなったことで、心太朗は睡眠へのプレッシャーを軽く感じるようになった。

さらにもう一つの新しい発見が、好きな動画を「観る」のではなく「聞き流す」ことだった。音楽でも良いけれど、心太朗にとってはしゃべり声の方が心地よかった。特に、漫才を聞き流すことが多かった。「漫才って、ただ笑ってるだけで、なんか不思議と心がリラックスするんだよな」と心太朗は思う。笑い声に包まれていると、段々と眠くなり、そのまま寝てしまう。ドラマや映画も良かったけれど、心太朗はあくまで「観る」のではなく「聞く」ことが大事だと思った。イメージが膨らんで、気づけば夢の世界に突入しているのだ。まぁ、作り手には失礼な話だが…。

心太朗はアニメやゲームには興味がないが、アニメ好きやゲーム好きの人には、それが効果的かもしれない。「好きなことだからこそ、何も考えずに聞き流せるんだよな。それがリラックスにつながって、眠りに導いてくれるんだ」と思う。逆に、YouTubeの睡眠導入音源は、心太朗には合わなかった。眠らなければならないというプレッシャーが強くて、余計に眠れなくなる。そう、心太朗にとって睡眠の最大の障害は「リラックスできないこと」だったのだ。

その結果、心太朗は睡眠にプレッシャーを感じることがなくなり、リズムも安定。睡眠の質が向上すると、昼間の活力もアップして、日中の眠気も少なくなった。心太朗はようやく、昼間にしっかりエネルギーを使うことができるようになった。

「最初は無理に体を動かさなくても良いんだよな」と心太朗は感じている。まずは自然に自分のリズムに身を任せて、無理せず調整していく方が、健全な方法だと思った。「急がば回れ」と言うように、焦って不眠症を治すことは逆効果だし、このやり方が一番リラックスできた。

最終的に、心太朗は自分のペースで、睡眠と向き合いながら、少しずつ充実した日々を送ることができるようになった。

こうして、心太朗は睡眠の悩みを見事に解決した。

睡眠のハードルが下がったおかげで、心太朗は割と寝ようと思えばいつでも寝れるようになった。以前のように寝室でゴロゴロしながら「寝れない、寝れない」と思い悩むこともなく、自然と眠りに入れるようになったのだ。

もちろん、これに科学的な根拠があるわけではない。専門家に基づく確立された理論ではない。ただ、心太朗が身をもって実践した方法であり、それが自分にとってはうまくいったという事実だけがある。それこそが、心太朗流の睡眠法だ。

この方法が全ての人に合うかどうかは分からない。でも、心太朗はあえて言おう、これは専門誌ではなく小説だから、心太朗のオリジナルな方法を発信していると。

他の誰かがどう考えるかはともかく、自分にとって一番リラックスできる方法が見つかった。それだけで十分だと思う。

どんなに本を読んでも、ネットで調べても解決しない人には、この方法を試してみるのもいいかもしれない。

科学的に証明されていなくても、心太朗が実際に経験したことであり、血の通ったリアルな体験だからこそ、どこか共感できる部分があるかもしれない。時には理屈じゃなくて、実際に試してみることで、初めて自分に合った答えが見つかることだってある。

何事も、完璧な答えを求めるよりも、自分に合ったやり方を見つける方が大切だと思う。試してみる価値は、きっとあるはずだ。そう思う心太朗であった。

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