いつも通りの、静かな夜だった。

 静かな夜の、はずだった。

「ごめん、急に電話を掛けちゃって。声、聞きたくなって。」

 私の恋人から、急にかかってきた電話。寝る前だったけど、何かあったのかと思って目がさえてしまった。

「そろそろ寝たい?」
「まだ、話す。」
「そっか。」

 何か話しては、このくだり。

「そっちは、寝たいの?」
「ううん。まだもうちょっと声が聞きたい。」

 こんなことを言われるのは、初めてかもしれない。

 今までも何度か、恋愛をし、付き合いに発展したことはある。けど、いつもバットエンドばかり。

 こんなに恋人らしいことは、初めてかもしれない。

「そういえば明日、課題の提出あるけど…」

 終わったかどうか聞こうとした、次の瞬間…

「あ、終わってない…てっきり来週かと…」

 忘れているところさえ、愛おしい。

「ごめん…急に電話したのにこんなことになっちゃうなんて…」
「いいの。電話くらい、いつでもできるから。」

 おやすみなさい。私の愛おしい人。

 課題、頑張ってね。