「皇子様。夕餉の時間にございます」

 皇子の部屋に三人の女性が入ってくる。年齢は私と大差はないぐらいに見える。お揃いのチュマチョボリのような服を来て、おかずの入った器を運んでいる様子を私は庭の物陰からこっそり覗いている。

「昨晩、満月だったであろ~?」

 先程とは異なる腑抜けな話し方に思わず笑いそうになるのを堪えながら、皇子の声を合図に私は兎の耳のついたフードを被るとゆっくりと足音を殺しながら縁側に近づく。

「兎がおっての~う。真っ白な兎が~」

「兎ですか?」

「そうだ~。空から落ちて来たのだ~。怪我をしておってな、手当てをしてやったのだよ~」

 あまりにも間延びした喋り方に一瞬皇子がふざけているのかと思ったけれど、三人の女性は至って真面目な顔で話を聞いている。