「それではこれで講習を終わります!」
受付の猫耳お姉さんが、元気よく話を終えた。
冒険者ギルド内は、私が思っていたよりも明るい雰囲気だった。殺伐とした空気かもしれないと緊張していたが、王国内の治安が保たれていることもあって静かなものだ。
ただ小さな街だったり、それこそ兵士が仕事をサボっているところは私の想像通りの場所もあるらしく、注意したほうがいいとククリに釘を刺された。
椅子に座って待っていると、ククリを見た冒険者の男たちが、なぜか怪訝そうな顔をしていた。
「すみません、私のせいです」
「……どういうことだ?」
「……後で説明しますね」
その様子から少し込み入った話だと思ったので、すぐに言及はしなかった。
ほどなくすると、木板のカードのようなものを猫耳お姉さんが渡してくれた。
肌身離さず持ってほしいとのことだが、失くした場合の再発行は可能、ただし登録料が別途必要になるとのことだった。
落としたものを再利用された場合どうなるのかと訊ねたところ、本人確認する為の秘密があるらしく、問題はないとのことだ。
ちなみにククリと二人合わせて4000ペンス。
凄く高いわけではないが、今の私たちにとっては大金だった。
カードには私の名前と等級が書いてある。
10級から1級、それ以上になると特級と呼ばれて称号が付くらしいが、そこまでいくことは流石にないだろう。
最初なので二人とも10級だ。
掲示板には様々な依頼書が貼られており、等級のレベルによって任務を受領することが可能となる。
特別な推薦があればレベル外でも受けることもできるらしいが、できるだけ死なずに遂行してほしいので基本的には守られているとのことだった。
どうしてこんなにも登録が簡単なのだと訊ねてみると、冒険者は万年人手不足らしく、死人が多いので受け入れてもすぐに減ってしまうらしい。
なんとも恐ろしい話だが、気を引き締める良い話ではあった。
冒険者ギルドから外に出る。
ククリから先ほどの話題を切り出してもらうまで雑談でも続けようと思ったが、すぐに教えてくれた。
「エルフ族は、冒険者からあまり好かれてないんです」
「……なぜだ?」
「基本的にエルフ族は、高位な魔法を使える人が多く、従って戦闘能力が高い傾向にあります。ただ、そのせいか傲慢な人が多く、長命種は短命種を見下す事も多くて……あ!? でも、私は全然そんなことないですよ!? そもそも魔法も使えませんし……」
これだけ多種多様な人種がいるのだ。差別は少なからずあると思っていたが、この治安の良い国でもあんな目をされる。
となると、治安の悪い国は……想像するのが怖いな。
「そうか。だがみんな勘違いしているな」
「勘違い?」
「ククリはとても思いやりのある性格だ。たとえ魔法が使えたとしても、その優しさ変わらなかっただろう」
「そんな……でも、そう言ってくださって嬉しいです」
えへへと笑うククリの笑顔は、とても可愛かった。
私たちは、せっかくだからと簡単な依頼を受けてみた。
いつもの狩場の近くで薬草拾いだ。
実績を積む目的とわずかばかりのペンスが手に入る。
現在の手持ち通貨は5000ペンス、Nyamazonの残高が6000円ほど。
今日頑張れば、8000円ほど貯まるだろう。
そろそろ商人の彼に話をしてみようと思っている。
捕らぬ狸の皮算用だが、勝算はある。
嬉しい誤算だったのは、この世界の品質が元の世界と比べて著しく程度が低いことだ。
石鹸はなく、草の樹液のようなもので身体や髪を洗うのだが、ゴワゴワになるし、匂いも決して良いとは言えない。
もちろん上等なものはあるだろうが、日本産のシャンプーに勝てるわけがないだろう。多分。
「シガ様、どうして笑っておられるのですか?」
「あ……いや、ちょっと色々考えていた。そうだな、悪巧みってやつかもしれない」
「ふふふ、似合いませんね」
ククリにも転売の話はしているが、まだおにぎりと水以外を見せたことはない。
どうせだったら、アッと驚かせてみたい。
ククリの金髪の長い髪が透き通るようなサラサラになれば、冒険者ギルド内にいた男たちも考えを改めるだろう。
「さて、日が落ちる前にもうひと踏ん張りだ」
「はい! 鮭おにぎり食べたいです!」
「今日は昼に食べたから、夜ご飯はパンで節約だ。また明日な」
「ぐう……はい! だったら、薬草を沢山拾いましょうね!」
今から魔物と戦うのだが、気持ちはピクニックのよう。
最近は。ククリの笑顔が見たいがために行動している気がする。
ああ、異世界は――存外楽しいな。
受付の猫耳お姉さんが、元気よく話を終えた。
冒険者ギルド内は、私が思っていたよりも明るい雰囲気だった。殺伐とした空気かもしれないと緊張していたが、王国内の治安が保たれていることもあって静かなものだ。
ただ小さな街だったり、それこそ兵士が仕事をサボっているところは私の想像通りの場所もあるらしく、注意したほうがいいとククリに釘を刺された。
椅子に座って待っていると、ククリを見た冒険者の男たちが、なぜか怪訝そうな顔をしていた。
「すみません、私のせいです」
「……どういうことだ?」
「……後で説明しますね」
その様子から少し込み入った話だと思ったので、すぐに言及はしなかった。
ほどなくすると、木板のカードのようなものを猫耳お姉さんが渡してくれた。
肌身離さず持ってほしいとのことだが、失くした場合の再発行は可能、ただし登録料が別途必要になるとのことだった。
落としたものを再利用された場合どうなるのかと訊ねたところ、本人確認する為の秘密があるらしく、問題はないとのことだ。
ちなみにククリと二人合わせて4000ペンス。
凄く高いわけではないが、今の私たちにとっては大金だった。
カードには私の名前と等級が書いてある。
10級から1級、それ以上になると特級と呼ばれて称号が付くらしいが、そこまでいくことは流石にないだろう。
最初なので二人とも10級だ。
掲示板には様々な依頼書が貼られており、等級のレベルによって任務を受領することが可能となる。
特別な推薦があればレベル外でも受けることもできるらしいが、できるだけ死なずに遂行してほしいので基本的には守られているとのことだった。
どうしてこんなにも登録が簡単なのだと訊ねてみると、冒険者は万年人手不足らしく、死人が多いので受け入れてもすぐに減ってしまうらしい。
なんとも恐ろしい話だが、気を引き締める良い話ではあった。
冒険者ギルドから外に出る。
ククリから先ほどの話題を切り出してもらうまで雑談でも続けようと思ったが、すぐに教えてくれた。
「エルフ族は、冒険者からあまり好かれてないんです」
「……なぜだ?」
「基本的にエルフ族は、高位な魔法を使える人が多く、従って戦闘能力が高い傾向にあります。ただ、そのせいか傲慢な人が多く、長命種は短命種を見下す事も多くて……あ!? でも、私は全然そんなことないですよ!? そもそも魔法も使えませんし……」
これだけ多種多様な人種がいるのだ。差別は少なからずあると思っていたが、この治安の良い国でもあんな目をされる。
となると、治安の悪い国は……想像するのが怖いな。
「そうか。だがみんな勘違いしているな」
「勘違い?」
「ククリはとても思いやりのある性格だ。たとえ魔法が使えたとしても、その優しさ変わらなかっただろう」
「そんな……でも、そう言ってくださって嬉しいです」
えへへと笑うククリの笑顔は、とても可愛かった。
私たちは、せっかくだからと簡単な依頼を受けてみた。
いつもの狩場の近くで薬草拾いだ。
実績を積む目的とわずかばかりのペンスが手に入る。
現在の手持ち通貨は5000ペンス、Nyamazonの残高が6000円ほど。
今日頑張れば、8000円ほど貯まるだろう。
そろそろ商人の彼に話をしてみようと思っている。
捕らぬ狸の皮算用だが、勝算はある。
嬉しい誤算だったのは、この世界の品質が元の世界と比べて著しく程度が低いことだ。
石鹸はなく、草の樹液のようなもので身体や髪を洗うのだが、ゴワゴワになるし、匂いも決して良いとは言えない。
もちろん上等なものはあるだろうが、日本産のシャンプーに勝てるわけがないだろう。多分。
「シガ様、どうして笑っておられるのですか?」
「あ……いや、ちょっと色々考えていた。そうだな、悪巧みってやつかもしれない」
「ふふふ、似合いませんね」
ククリにも転売の話はしているが、まだおにぎりと水以外を見せたことはない。
どうせだったら、アッと驚かせてみたい。
ククリの金髪の長い髪が透き通るようなサラサラになれば、冒険者ギルド内にいた男たちも考えを改めるだろう。
「さて、日が落ちる前にもうひと踏ん張りだ」
「はい! 鮭おにぎり食べたいです!」
「今日は昼に食べたから、夜ご飯はパンで節約だ。また明日な」
「ぐう……はい! だったら、薬草を沢山拾いましょうね!」
今から魔物と戦うのだが、気持ちはピクニックのよう。
最近は。ククリの笑顔が見たいがために行動している気がする。
ああ、異世界は――存外楽しいな。