70インチはありそうな壁掛けのテレビの下にはバイオリンのケースが3つ置かれてあり、

部屋の隅に置かれたイーゼルには裏になっていて見えないけれど絵が立て掛けてあるようだった。

「瑞樹、絵描くの?」

「趣味程度だけどね。本棚の上から3段目に去年の音楽コンクールのDVDが入っているよ」

 本棚の前に行くと瑞樹が言うDVDを探す。

背の高い本棚にはいろいろなジャンルの本が並んでいる。

音楽の本や小説、数学の参考書や星座の本、経済やビジネスに関する本などわたしが手にしたことのない本ばかり。

その中にはスケッチブックのようなものも数冊あった。

DVDを手に取ると次の指示がきた。

「DVDをプレイヤーにセットしてテーブルの上のリモコンで再生して」

「うん」

「僕の出番は一番最後だけど最初から見る?」

「うん、最初から見る。バイオリンのことも全然わからないんだけどいろんな人の演奏を聴いてから瑞樹の演奏が聴きたい」