「びっくりした」

いくら壁に張り付いていても視界には入ってしまうようでわたしは下を向いたまま謝った。

「ごめん……」

「盗み聞きしてんなよ」

「ごめん……」

「とりあえずここ降りるぞ」

「うん……」

 昇降口に行くと理斗君は靴箱から出した靴を音を立てて床に置いた。

「全く何であそこにお前が居るんだよ。

しかも俺がやったゴム付けて」

「あっ…」

急いで来たから髪の毛を解くのを忘れていた。

「捨ててなかったんだそれ」

「毎日使っているよ。て!捨てる訳ないよ!」

まるで鏡に反射した光を眩しがるようにわたしの語気に合わせて理斗君は2回顔をしかめた。