急に俺が叫んだから、田辺さんは相当驚いたようだったけれど、静かに何度も頷いた。
「黒澤さん……七海さんの苦しみに気付く事ができなかったって。何度謝っても許されない事をしたと、電話口で泣いていました。だけど、七海さんは黒澤さんのような親友がいて幸せだったはずだから、桐山さんの分まで幸せに生きて欲しいと……」
小刻みに震える自分がいる事に気が付いた。
……俺は、一体何をしていたんだ?
七海の苦しみにも柚乃ちゃんの苦しみにも気が付かず、復讐ばかり考えていて、何も見えていなかった。
ふと見ると、パソコンケースから破られた写真が顔を出している。
それを拾い上げると、真ん中から破られた七海の高校時代の写真だった。
「あ、それ……。七海さんと神崎です」
破られた写真を指さしながら田辺さんが言った。
それを聞いて、俺はソファから立ち上がり田辺さんに頭を下げ、リビングの隣の部屋に置いてきたタブレットを手にして、七海の部屋へと上がる。
タブレットのパスワードのクラシックレモンで思い出したのは、七海が大学に入って初めてできた友だちの話だった。
ちょうどその時に新発売した物で、七海が俺に恩人だって言うほど喜んでいた。
その友だちが……黒澤柚乃だった。
『あなたの思い出は?』の問いかけに対しての『クラシックレモン』という答えは、七海が本当にその出会いを大切に想っていた証拠である。
七海の部屋に入り真っ直ぐに本棚へ向かうと、ガラス戸を開けて高校の卒業アルバムを取り出す。
神崎の個人写真を探してページをめくると、信じられない物が目に飛び込んできた。
写真に赤いペンで付けられた×マーク。
俺が見つけられなかった、裏切りの証拠を柚乃ちゃんが見つけ出していたのだ。
憎悪を向ける相手が違っていた事に、動揺する。
彼女と一緒にいて、違和感は確かにあったはずなのに、ずっと聞くのが怖かった。
復讐のつもりで近づいた相手を俺は、心から愛してしまったから。
柚乃ちゃんは復讐の相手ではなかった。
本当に七海にとって、大切な親友だったんだ……。
ため息をつきながらタブレットを操作すると、アイコンの中にメモと書かれたフォルダーがあった。
その下にもメモ2というフォルダーがある。
メモのフォルダーを確認すると、そこには七海が柚乃ちゃんに対して抱いていた嫉妬の感情が書き込まれていた。
「黒澤さん……七海さんの苦しみに気付く事ができなかったって。何度謝っても許されない事をしたと、電話口で泣いていました。だけど、七海さんは黒澤さんのような親友がいて幸せだったはずだから、桐山さんの分まで幸せに生きて欲しいと……」
小刻みに震える自分がいる事に気が付いた。
……俺は、一体何をしていたんだ?
七海の苦しみにも柚乃ちゃんの苦しみにも気が付かず、復讐ばかり考えていて、何も見えていなかった。
ふと見ると、パソコンケースから破られた写真が顔を出している。
それを拾い上げると、真ん中から破られた七海の高校時代の写真だった。
「あ、それ……。七海さんと神崎です」
破られた写真を指さしながら田辺さんが言った。
それを聞いて、俺はソファから立ち上がり田辺さんに頭を下げ、リビングの隣の部屋に置いてきたタブレットを手にして、七海の部屋へと上がる。
タブレットのパスワードのクラシックレモンで思い出したのは、七海が大学に入って初めてできた友だちの話だった。
ちょうどその時に新発売した物で、七海が俺に恩人だって言うほど喜んでいた。
その友だちが……黒澤柚乃だった。
『あなたの思い出は?』の問いかけに対しての『クラシックレモン』という答えは、七海が本当にその出会いを大切に想っていた証拠である。
七海の部屋に入り真っ直ぐに本棚へ向かうと、ガラス戸を開けて高校の卒業アルバムを取り出す。
神崎の個人写真を探してページをめくると、信じられない物が目に飛び込んできた。
写真に赤いペンで付けられた×マーク。
俺が見つけられなかった、裏切りの証拠を柚乃ちゃんが見つけ出していたのだ。
憎悪を向ける相手が違っていた事に、動揺する。
彼女と一緒にいて、違和感は確かにあったはずなのに、ずっと聞くのが怖かった。
復讐のつもりで近づいた相手を俺は、心から愛してしまったから。
柚乃ちゃんは復讐の相手ではなかった。
本当に七海にとって、大切な親友だったんだ……。
ため息をつきながらタブレットを操作すると、アイコンの中にメモと書かれたフォルダーがあった。
その下にもメモ2というフォルダーがある。
メモのフォルダーを確認すると、そこには七海が柚乃ちゃんに対して抱いていた嫉妬の感情が書き込まれていた。