フェンリルのフェルが仲間になった。
転移で屋敷まで一瞬で帰ってもよかったが、外の世界をみたいとのフェルの要望で歩いて帰ることに。
こいつが歩いて帰りたいと言った瞬間は、焦った。
またあのクソ長い道のりを歩かされるのかって。
けど流石にそんなことはなく、フェルのなんかすごいパワーで入口手前にワープしてた。
「どうだ、これもフェンリルの力じゃぞ。凄いじゃろう」
そうドヤ顔で、ほれ褒めろと言わんばかりに俺を見てくるが。
「たわけ! 元を言えばてめーがクソ面倒な霧を撒いてるせいで転移出来なくしてたからだろ! 」
「あれは転移石を封じる為の術式じゃ! まさか転移そのものを使おうとする人間が現れるとは思ってもなかったわい! 」
「え? てか見てたの? 道中」
「試練に臨んでいるものの様子は見れるのじゃよ。もにたーとやらで」
へー。
「じゃあ俺が必死に歩いてるのをみながら、くつろいでたわけだ? 主様がひーこら歩いてるのに」
「その時は別にお主様は主でもなんでもないじゃろ」
「どんな風に見てたん」
「最初こそ久しぶりの人間に驚きはしたのじゃが、ふと今までのことを思い出しての。人間じゃからどうせ辿り着けずに道中で死んでしまうじゃろうなって……人間の死ぬ姿をもう見たくない、だから途中からもにたーは切っておったのじゃ。けど、接近を知らせるブザーが鳴って、まさかともにたーをまた見つめていたらお主が、我のところまでやって来てくれた」
どこか遠く、悲しい目をしている。
こいつ、もしかして寂しかったのか?
洞窟を作っておきながらも、人間の死は見たくないって。
もしかしたらこいつはただ一緒に話せる友人が欲しかったのかもしれない。
俺はフェルを見やる。
「な、なんじゃ? 」
「俺の屋敷は沢山の仲間がいて、皆優しいからな。俺以外は全員女子だから、フェルもすぐ打ち解けれるはずだ。……その、だから、お前はもう寂しい思いはしなくてよくなるぞ」
最初こそ言葉の意味がよく分かってない様子だったが、少しずつのみこんでいき、俺に言う。
「別に……寂しくなんてなかったのじゃ。我はそういう生き物なのじゃから、運命だと思ってたのじゃ。でも」
「でも? 」
「お主様の言う、その屋敷は楽しみなのじゃ。それに、お主様と出会えて良かったのじゃ。我を、あの場所から、ひとりぼっちだった空間から連れ出してくれてありがとうなのじゃ!! 」
そう言って、抱きついてくる。
俺はこいつが満足するまで抱きしめたまま、ふわふわな頭を撫で続けたのだった。
「けど寂しくなんてなかったのじゃからな」
何故かそこだけはプライドがあるらしい。
「はいはい」
けど、そう言って見上げてきたフェルの目元には涙の後があった。
……やっぱり寂しかったんじゃねぇか。
こいつを幸せにしてやりたい、そう思うのだった。
「ここがお主様の領地なのじゃな」
「うん。もう夜中だから領民たちは家で休んでて、寂しい感じになってるけど、昼は割と活発だぜ」
少しずつだが領地は繁栄していってる。まだまだ不便なとこも多いだろうから、領主としてこの領地を発展させて豊かにしていきたい。
世界最悪なんて言われないように、そして誰にも言わせない。
「お主様の大切なものを、我も守るのじゃ」
空を見上げると、星が光っていて夜空が綺麗だ。
うん……綺麗。
「なんで止まっておるのじゃ? 他の家々よりも一回りも二回りもデカイここがお主様の屋敷なのではないのか? 」
フェルが屋敷の前で立ち止まり、ずっと空を見上げている俺を不思議に思ったのか聞いてきた。
そう、無事帰ってこれたし、目的も達成出来て、新たな仲間も加わった。
そこまではハッピーエンドだ。
しかしここからが問題。
「帰るのが遅すぎた」
仕方ないとはいえ、いくらなんでも夜中に帰るのはまずいだろう。もうそろそろ明け方に差し掛かる時間帯だし……。
皆寝てることを祈ろう。
今日怒られるより明日怒られた方が気分が楽だ。
なんなら起きて、昨日遅かったことを忘れていてくれたらありがたい。
1人ずつ考えていこう。
まずメイド組。リーナ、トメリル、トゥーンちゃん。三人とも夜更かしはしないタイプだ。規則正しい生活を送るのを好んでいる。流石メイド組といったとこ。
この時間に起きているとは考えにくいから除外していいだろう。
次に健康賢者ことマーリン。朝の早起き、散歩。これらのイメージはあるが、夜どうしてるのかはよく知らん。
起きてる可能性もあるが、マーリンなら怒らないだろう。
はい次、クレニ。お子様っぽいとこあるし寝てるだろう。
最後レミナ。絶対起きてる。なんなら夜食、食ってそう。
けどこの中で一番俺の味方でもある。レミナのことだし、茶化してきそう。
あれ? わりと行けそうじゃないか?
何をビビっていたんだ俺は。
ひとしきり考えたあと、なんとでもなりそうだとの結論に至った。
「やっと入るのじゃな。楽しみなのじゃ〜! はやく挨拶をしたいのじゃ」
「あー張り切ってるとこ悪いけど、皆寝てるから静かにな? 挨拶は明日してくれ」
朝起きたら見知らぬ、しっぽの生えた白髪美少女が紛れ込んだいたら大騒動になりそうだが。
とりあえずは俺の部屋で寝させたらいいだろう。第一の犠牲者は明日起こしに来るメイド組の誰かだが。
「分かったのじゃ。明日挨拶するのじゃ」
俺はドアをゆっくりと開けた。
そして、閉めた。
「どうしたのじゃ? 」
汗だらっだらになりながら、俺はフェルの手を握る。
「ど、どうしたのじゃいきなり!? 」
「いいか、転移魔法を使って俺の部屋に転移する。初めての環境でなかなか寝付けないかもしれないが、許してくれ。それと転移したら直ぐにベットに入って、電気を消して寝るんだ。俺と一緒に寝るなんて嫌だろうが、今日だけは勘弁してくれ」
「言われなくとも一緒に寝るつもりじゃったが、わかったのじゃ。部屋に着いたらすぐベットにダイブして、目を瞑るのじゃ」
「よし、いい子だ」
まじで聞き分けが良すぎてペット。
俺はカウントを開始し、3・2・1のタイミングで転移を発動。真っ暗な俺の部屋に転移した。
言いつけを素直に守ったフェルは、即座にベットに直行。
俺もすぐ後を続き、ベットに潜り込む。
ミッションコンプリート。
ちらりと横を見ると、フェルはもう寝ていた。
それを見習って、目を閉じるが、なかなか寝付けない。
カツカツ……と、足音が迫り来る。
やべぇ、しぬ。
もう一か八かで、【スリープ】を自分に発動させた。
一気に眠気がきて、まぶたが重くなる。
なんとか危機が迫り来る前に深い眠りにつけそうだ。
明日、皆忘れてるといいなぁ……。
そう願うと同時に俺の意識は途絶えたのだったーーー!
これからも頑張っていこう……うん!
転移で屋敷まで一瞬で帰ってもよかったが、外の世界をみたいとのフェルの要望で歩いて帰ることに。
こいつが歩いて帰りたいと言った瞬間は、焦った。
またあのクソ長い道のりを歩かされるのかって。
けど流石にそんなことはなく、フェルのなんかすごいパワーで入口手前にワープしてた。
「どうだ、これもフェンリルの力じゃぞ。凄いじゃろう」
そうドヤ顔で、ほれ褒めろと言わんばかりに俺を見てくるが。
「たわけ! 元を言えばてめーがクソ面倒な霧を撒いてるせいで転移出来なくしてたからだろ! 」
「あれは転移石を封じる為の術式じゃ! まさか転移そのものを使おうとする人間が現れるとは思ってもなかったわい! 」
「え? てか見てたの? 道中」
「試練に臨んでいるものの様子は見れるのじゃよ。もにたーとやらで」
へー。
「じゃあ俺が必死に歩いてるのをみながら、くつろいでたわけだ? 主様がひーこら歩いてるのに」
「その時は別にお主様は主でもなんでもないじゃろ」
「どんな風に見てたん」
「最初こそ久しぶりの人間に驚きはしたのじゃが、ふと今までのことを思い出しての。人間じゃからどうせ辿り着けずに道中で死んでしまうじゃろうなって……人間の死ぬ姿をもう見たくない、だから途中からもにたーは切っておったのじゃ。けど、接近を知らせるブザーが鳴って、まさかともにたーをまた見つめていたらお主が、我のところまでやって来てくれた」
どこか遠く、悲しい目をしている。
こいつ、もしかして寂しかったのか?
洞窟を作っておきながらも、人間の死は見たくないって。
もしかしたらこいつはただ一緒に話せる友人が欲しかったのかもしれない。
俺はフェルを見やる。
「な、なんじゃ? 」
「俺の屋敷は沢山の仲間がいて、皆優しいからな。俺以外は全員女子だから、フェルもすぐ打ち解けれるはずだ。……その、だから、お前はもう寂しい思いはしなくてよくなるぞ」
最初こそ言葉の意味がよく分かってない様子だったが、少しずつのみこんでいき、俺に言う。
「別に……寂しくなんてなかったのじゃ。我はそういう生き物なのじゃから、運命だと思ってたのじゃ。でも」
「でも? 」
「お主様の言う、その屋敷は楽しみなのじゃ。それに、お主様と出会えて良かったのじゃ。我を、あの場所から、ひとりぼっちだった空間から連れ出してくれてありがとうなのじゃ!! 」
そう言って、抱きついてくる。
俺はこいつが満足するまで抱きしめたまま、ふわふわな頭を撫で続けたのだった。
「けど寂しくなんてなかったのじゃからな」
何故かそこだけはプライドがあるらしい。
「はいはい」
けど、そう言って見上げてきたフェルの目元には涙の後があった。
……やっぱり寂しかったんじゃねぇか。
こいつを幸せにしてやりたい、そう思うのだった。
「ここがお主様の領地なのじゃな」
「うん。もう夜中だから領民たちは家で休んでて、寂しい感じになってるけど、昼は割と活発だぜ」
少しずつだが領地は繁栄していってる。まだまだ不便なとこも多いだろうから、領主としてこの領地を発展させて豊かにしていきたい。
世界最悪なんて言われないように、そして誰にも言わせない。
「お主様の大切なものを、我も守るのじゃ」
空を見上げると、星が光っていて夜空が綺麗だ。
うん……綺麗。
「なんで止まっておるのじゃ? 他の家々よりも一回りも二回りもデカイここがお主様の屋敷なのではないのか? 」
フェルが屋敷の前で立ち止まり、ずっと空を見上げている俺を不思議に思ったのか聞いてきた。
そう、無事帰ってこれたし、目的も達成出来て、新たな仲間も加わった。
そこまではハッピーエンドだ。
しかしここからが問題。
「帰るのが遅すぎた」
仕方ないとはいえ、いくらなんでも夜中に帰るのはまずいだろう。もうそろそろ明け方に差し掛かる時間帯だし……。
皆寝てることを祈ろう。
今日怒られるより明日怒られた方が気分が楽だ。
なんなら起きて、昨日遅かったことを忘れていてくれたらありがたい。
1人ずつ考えていこう。
まずメイド組。リーナ、トメリル、トゥーンちゃん。三人とも夜更かしはしないタイプだ。規則正しい生活を送るのを好んでいる。流石メイド組といったとこ。
この時間に起きているとは考えにくいから除外していいだろう。
次に健康賢者ことマーリン。朝の早起き、散歩。これらのイメージはあるが、夜どうしてるのかはよく知らん。
起きてる可能性もあるが、マーリンなら怒らないだろう。
はい次、クレニ。お子様っぽいとこあるし寝てるだろう。
最後レミナ。絶対起きてる。なんなら夜食、食ってそう。
けどこの中で一番俺の味方でもある。レミナのことだし、茶化してきそう。
あれ? わりと行けそうじゃないか?
何をビビっていたんだ俺は。
ひとしきり考えたあと、なんとでもなりそうだとの結論に至った。
「やっと入るのじゃな。楽しみなのじゃ〜! はやく挨拶をしたいのじゃ」
「あー張り切ってるとこ悪いけど、皆寝てるから静かにな? 挨拶は明日してくれ」
朝起きたら見知らぬ、しっぽの生えた白髪美少女が紛れ込んだいたら大騒動になりそうだが。
とりあえずは俺の部屋で寝させたらいいだろう。第一の犠牲者は明日起こしに来るメイド組の誰かだが。
「分かったのじゃ。明日挨拶するのじゃ」
俺はドアをゆっくりと開けた。
そして、閉めた。
「どうしたのじゃ? 」
汗だらっだらになりながら、俺はフェルの手を握る。
「ど、どうしたのじゃいきなり!? 」
「いいか、転移魔法を使って俺の部屋に転移する。初めての環境でなかなか寝付けないかもしれないが、許してくれ。それと転移したら直ぐにベットに入って、電気を消して寝るんだ。俺と一緒に寝るなんて嫌だろうが、今日だけは勘弁してくれ」
「言われなくとも一緒に寝るつもりじゃったが、わかったのじゃ。部屋に着いたらすぐベットにダイブして、目を瞑るのじゃ」
「よし、いい子だ」
まじで聞き分けが良すぎてペット。
俺はカウントを開始し、3・2・1のタイミングで転移を発動。真っ暗な俺の部屋に転移した。
言いつけを素直に守ったフェルは、即座にベットに直行。
俺もすぐ後を続き、ベットに潜り込む。
ミッションコンプリート。
ちらりと横を見ると、フェルはもう寝ていた。
それを見習って、目を閉じるが、なかなか寝付けない。
カツカツ……と、足音が迫り来る。
やべぇ、しぬ。
もう一か八かで、【スリープ】を自分に発動させた。
一気に眠気がきて、まぶたが重くなる。
なんとか危機が迫り来る前に深い眠りにつけそうだ。
明日、皆忘れてるといいなぁ……。
そう願うと同時に俺の意識は途絶えたのだったーーー!
これからも頑張っていこう……うん!