左遷されたチート錬金術師の最強領地経営〜劣悪な辺境に追放されたけど、何故か次々と俺を追って王国中の美少女たちや、慕ってくれる仲間がやってきた結果、王国を超える領地が出来上がってしまったんだか?〜

他の兄弟は最上位のスキルや職業を持っているのに、なんで俺だけ【錬金術師】だなんて地味なんだろう。

それが悔しかったから、とことん【錬金術師】を極めて、沢山のアイテムや魔道具を作ってきた。何度も何度も挑戦して、自分の納得のいくモノを作って。

城の皆は褒めてくれた。
「すごい」「レン様はこんなことまで出来るんだ」「いつも助かってるよ」って。

それでもお父さんや兄弟は一切褒めてくれなかった。

それどころか「こんなガラクタしか作れねぇのかよ」とか「王国の面汚しだ」とか罵詈雑言を浴びせられるだけ。

もうこんなことをやったって意味無いんじゃないか。
いっその事辞めてしまおう。

何もかも無くそうとした。けど出来なかった。
褒めてくれる人は沢山いたし、俺の作った魔道具とかを使って笑顔で喜んでくれる人だって居た。

たった数人のためだけに、沢山の人が喜んでくれる行為を、こんなにも簡単に捨ててしまっていいのか。

これさえ無くなったら、俺には何が残るのか。

一晩頭を悩ませた俺だが、悩んでいたのを見かねたリーナがこう言ってくれた。

「レン様がやりたいことをやってください。周りの目なんて気にしなくていいです。貴方がやりたいこと、したいことをのびのびと出来るように私もお手伝いしますし、城の皆も協力してくれると思います。国王とかのデカい声にかき消されないように、これからはより一層サポートします。ふと思ったのですが、レン様は固くなりすぎです。もうちょっと、そう、吹っ切れたらいいかもしれませんね」

そう言って俺を抱きしめてくれた。

その言葉に救われた。その暖かい温もりを感じながら、

そうだよな……俺を嫌なやつのために、俺を好きで居てくれる人を悲しませるような真似はしたくない。それは裏切りと同じだ。

リーナが言った言葉を反復する。
吹っ切れてみる……か。

明日から、俺の貴族としての殻を破って、俺自身として生きてみようかな。

しがらみも何も気にせずに。
そう思うと、明日が楽しみになってきた。

リーナ、元気づけてくれてありがとう。
今はまだそれを言うのは照れくさい。だけど、いつか今までの感謝も伝えたい。もしその時が来たら、【錬金術】の中で一番のものを作って、それを渡したい。

喜んでくれたらいいな。
そう誓ったと同時に眠気が来て、すやすやと眠りについたのだった。この日に初めて涙を流すことをなく眠れた。
三人を連れて帰ってくると、入口付近に領民が沢山集まっていた。どうやら外を散歩したのがバレたらしい?

しかしそれよりも、俺の隣に居る面々を見た瞬間、ざわめきが大きくなった。

「領主様の隣にいる方って、聖女様と賢者様じゃ……? 」

「本当に!? 」

「ああ、間違いない。だってこの新聞見てみろ。お二方と顔そっくりじゃないか」

「本当だ! 」

「その隣の方は見たことないが、聖女様方と一緒に居るくらいだ。相当な方だろう」

「そういえばデスウルフが現れた時に、レン様がお話してくださったわよね」

「そうだったな。領主様は一度しか会ってないと仰っていたが、あそこまで聖女様がくっついているとなると……」

「聖女様までも、領収様にゾッコンという訳だ」

「あんな幸せそうな顔をしているし、間違いなさそうね」

領民たちは次々に言う。

話題が話題を呼び、ものの数分で領民が大集結するほどの騒ぎとなった。
領地の入口から中央まで移動して、事の経緯を説明する。

「と、言うことがあったんだ。これから聖女と賢者とニートがヘレクス領の仲間となる。皆仲良くしてやってくれ」

領民たち全員「は? 」ってなっている。
おかしい、俺は何か変なことを言っただろうか。ああ、なんでニートを連れてきたんだと思われているのか。

「ニートとはいったがレミナは研究に長けているから、領地発展の力になってくれるはずだ」

それでもまだきょとんとしている。

「あの、みなさん? 」

少しの静寂の後……

「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 」

「聖女様と賢者様をこんなへっぽこ領地に引き込んだとか、領主様凄すぎだろ!!!!! 」

「レン様が就任されただけでもかなり活気が出たものだが、それ以上に凄いことになるぞ!! 」

「国王よりも人望厚いなんて、うちの領主様バンザイ! 」

「ますますなんで国王は領主様を左遷したのか判断に苦しむ」

「まぁいいじゃない。そのおかげでレン様と出会えたんだし」

大盛況&大絶賛の状況になった。
なんか一人凄いこと言ってたな。

「国王より人望が厚いなんてことはないと思うよ? 」

もしそうなら国家経営なんてやれてないだろうし。
今までの積み重ねで国王なんて重大な役割を果たしているんだろうし。

「人望が厚くなければ、王都での暮らしを捨ててまで聖女様方はこないかと」

俺は何故か聖女のクレニちゃんと、賢者のマーリンに好かれているようだけど、なんで二人は俺にここまで拘ってくれるんだろう。

特にクレニちゃんなんて1回しか会ったことないのに。知らない数日の間に何かあったのだろうか。

ありがたいことだし、嬉しいけどね。
人望云々は置いておいて。

「けど一応皆の意見も聞いておきたい。俺を頼ってくれたから、いや友達として三人とも受け入れたいんだけど反対の人はいる? 」

「「「いや、いる訳ないですよ!! 聖女様や賢者様を拒む理由なんてないです」」」

おー満場一致。

「いや、実質的な関わりはないとしても王都の人間だったわけだし、あまりよく思わない人もいるかもしれないって思ってな」

「領主様に出会う前であればそうだったかも知れません。ですが、王都にも領主様みたいな素敵な方だって居るんだって分かりました」

「レン様の今までのお知り合いは全員良い人でしたし。最近大精霊様はお見受けしませんが……」

トルンは部屋に籠って俺みたいにグータラ生活を満喫してるけど、本人の名誉の為にも言わないでおこう。

皆がここまで俺を信用してくれてることを知って驚いている。それと同時に嬉しさが込み上げてきた。

涙も出てきそうになったが、そこはなんとかこらえる。
流石に体臭の前で泣くのは恥ずかしい。

「そんなわけで今日からこれまでより一層栄えるだろうし、今日の出来事を記念して明日はここに広場を作ろう」

そう宣言するとまた拍手喝采となり盛り上がった。

「せっかくこんなに集まったんだし、自己紹介しておいてもらおうか」

そう言うと、領民たちの注目が三人に集まる。

「えぇっと、元聖女でこれからヘレクス領の聖女になるクレニール・スアントルよ。これから仲良くしてくれると嬉しいわ。怪我とかしたらあたしのとこに来てね、直ぐ治してあげるから! 」

「わぁぁぁぁ!!! 」

「聖女様可愛すぎだろ!!!!!毎日怪我してぇ!!! 」

「バカっ!!!! 聖女様は領主様のものだろ」

「ま、まだ希望は捨てちゃいない。ワンチャンあるかもしれねぇだろ、毎日通い続けることで、この人の怪我が愛おしくなってきちゃった……♡ キズのとこ痛いでしょ? あたしが治してあげる♡ ってペロリとしてくれる……そんな展開が俺にはぁぁぁぁ!!!! 」

「お前領主様に消されないようにな」


「マーリンです〜賢者として皆様のお役に立てるように頑張ります〜」

「わぁぁぁぁぁ!!!! 」

「……うへへ。すげぇ美人。手とり足とり魔法を教えてもらうんだ、うへへ」


「どうもニートニート言われているレミナだ。こいつらと違って有名でもなんでもないけど、まぁよろしく頼む。ほんとになんでこいつらは俺様とつるんでるんだ。成り行きとはいえ、メンツが濃すぎて俺様がカスに見えるじゃねぇか」

「わぁぁぁぁぁ!!! 」

「あの見た目と声とは裏腹に名前が可愛すぎる!? 」

「俺!!!!! ああいいひと大好き!!!!!! 」


歓声に混じって各々何人か、不埒な発言が聞こえた気がするが、俺は知ったこっちゃない。

そばに居たリーナに適当に任せて、俺はスタコラサッサと屋敷に戻ったのだった。
「あっレンさま! おかえりなさい! 」

広場(仮)なんならただ開けてただけの場所から【気配】を消してすたこらさっさと屋敷に帰ってきた俺。

出迎えてくれたのはトゥーンちゃん。
いつも思うんだが、この子はトルンの傍付きなだけであって、俺に敬意を払う必要はこれっぽっちもないはずなんだけど、何故かリーナと一緒に身の回りの世話とかしてくれるし、メイドとして仕事もしてくれている。

これ、今までのお小遣いじゃもう足りないよな。

「お疲れですね。そういえば何やら外が騒がしかったですけど、また何かやったんですか? あっ、外に出た服のまま床に寝っ転がらないでください! てか床で寝ないでくださいー!! 疲れてるならいいですけど」

先にクレニたちが来ること伝えておくか?
いや、サプライズ? になるかは分からんが、内緒にしておくか。

「ちょっと色々あってね……」

「(うぅ……今だったらリーナ様も斗メリル様もいらっしゃらないし、あれを言ってみるチャンス!! け、けどやっぱ恥ずかしいよぉ……!! )」

もぞもぞしながら悶々としている。なんか語呂いいね今の言葉。

限界まで顔を真っ赤にしたトゥーンちゃんを見て俺は焦る。

「ちょ、大丈夫か!? 尋常じゃないほど顔赤くなってるけど、熱があるんじゃ……」

即座に起き上がって、トゥーンちゃんのそばにかけより、おでこに手を当てる。ほんのり暖かいけど、大熱という程でも無さそうだ。微熱はもしかしたらあるかも? レベル。

しかし、手を当てた瞬間更に顔が赤くなった。目の商店も合わなくて、どこか虚ろとした表情になる。

流石にただ事ではない。
俺は【アイテムボックス】から俺お手製【熱下げさげシート】を取り出した!

こいつは俺の中でも傑作の1つで、数時間冷たさが保たれて、おでこに貼ることによって、熱を下げることもできるし、辛さや苦しさも軽減できる神アイテムだ。

体調を崩したメイドさんや、夏の暑さで参っていた騎士団の皆に配ったらそれはそれは大好評の嵐で、騎士団長に抱きつかれたくらいだ。

金属の鎧が超至近距離で身体に打ち付けられた俺は、腹部に熱サゲサゲシートを複数枚貼る羽目になったのだが、それはうん……。自分でも効果を実感できたってことでいいだろう。

ちなみに皆はもうお察しだと思うが、クソ親父や兄貴が熱出した時にも上げたんだけど、捨てられたよ!!!

もう一生あいつらにはやんねーよ!!!!

ワシはこれほど苦しんでいるのに、そんなチンケなモノを貼って、効果がたった数時間だと!? ふざけるな、作るならお前が熱を肩代わりできるようなモノを作れ、だなんて言われたんだぜ?

サンドバックじゃないんだから俺は……。

てかこう考えると酷い目に会いすぎだろ。

おっと、そんな場合じゃなかった。
表面(冷たい方)を覆っているピリピリを破くと、トゥーンちゃんのおでこにゆっくり貼り付けて、優しくさすった。

「ひゃっ……!? ちめた」

ははっ、そうだよなー。最初貼る時めっちゃ冷たくてドキってするよな。皆同じ反応してたな……とまた懐かしむ。

どうか元気にやっていて欲しい。騎士団たちも心配だ。兄貴にパワハラされてないか。ちゃんと休みを貰えているか。

この国の上層部は俺が言っちゃなんだが腐ってるかもしれないからな。

いや、俺が嫌いなだけか。厄介者の出来損ないの王国の恥の……ええっと他なんて言われたっけ。……そんな俺を左遷できて、最高に気分がハイになって意外と上手くやってるかもしれない。

聖女と賢者に逃げられたのはざまぁないけどね。

「最初は超冷たく感じるだろうけど、少ししたら慣れるからね。っと、ちょっとごめんよ」

トゥーンちゃんをお姫様抱っこする。

「へ? (ふぇ……!? ちょっとレンさま何してるの!? え、私今レンさまにお姫様抱っこされてるよね!?!? リーナ様やトメリル様、はたまたトルン様まで差し置いて私お姫様抱っこされちゃってるよ!? 恥ずかしさでぶっ倒れて、お恥ずかしいところ見せちゃったけど、こんなご褒美貰えちゃうなんて……しかもおでこに手をあててくださったし、撫でてくださったしぃぃぃぃ!!! やばい、私しぬ!!!! 目瞑っちゃってるけど、お姫様抱っこしてるってことはすぐ近くにレンさまのお顔があるってことだよね。ちょっと見ちゃお。わぁぁぁぁぁぁ!!!! 思ってたよりも近すぎてだめだよ!! これ私が事故装って少し顔を前にするだけで唇つけれちゃうよ!!!!!!れ????? やっちゃう!?!? けどそれがバレたら後が怖いぃぃぃぃ!!! もう一回だけ目開けてみて行けそうだったら、してみちゃおうかな……えい! って……さっきより近いよ!!?!!!?

あっ

もうだめ意識飛ぶ……)」


一瞬目を開けたと思ったら、その後すぐに寝てしまった。

トルンとトゥーンちゃんの寝室に連れていき、ベットに寝かせる。

トルンも心配そうにしていたが、微熱っぽいし大丈夫そうだよと伝えたらほっとしていた。

そうは言っても心配だし、夜中に急に体調が悪化したら大変なので、トルンに【いつでも呼び出しボタン(1回きり)】を渡しておいた。

ボタンを押すと問答無用で俺がその場に転移させられるアイテムだ。作ってから一度も試したことがないので実際に使えるか分からないし、使う機会もなかったが調度良いだろう。

トゥーンちゃんの頭を優しく撫でると、後はトルンに看病を任せて部屋を後にした。
「レン様?? 私達に面倒事押し付けて、いつの間にか帰ってましたね?? 」

「そそそそそそれは理由があってだな!! 」

「理由? 納得のいく説明が出来るのであれば許します」

「トゥーンちゃんが熱でぶっ倒れたから介護してた! そんな疑わしい目でみないで!? ほんとだよ!? 」

トゥーンちゃんには悪いが俺の理由となってもらおう。

しかしリーナは一筋縄で行かないのは分かっている。

「トゥーン様が熱ですか……それは心配ですので後で私も様子を見てきますが……何故それが分かったのですか? えぇ、【帰ってこずに】あの場で分かっていたから、トゥーンちゃんを心配して先に屋敷に戻ったんですか? 」

物凄い圧がかけられている。全部分かってんだぞ、と。嘘ついたらどうなるか……。傍から見たらどちらが領主か分からないよねこれ。

「まぁしかし、結果的にレン様がいち早く帰ったことによって、トゥーンちゃんを大事にはさせなかったので責めれないんですけどね。領主が居ないので案内もままならずそのまま連れ帰ってしまいましたが、よろしかったですか? 」

怒られなくてよかったと、ほっと息を撫で下ろす。
連れ帰ったとは言うが、あいつらの姿は見当たらない。

「まだ玄関に待機させてますよ。仮にもここは領主の屋敷ですし、判断を仰いでからにしようと」

「いや俺を追ってこんなとこまでやってきた三人を、屋敷に住ませないなんて言うと思う!? 」

「形式です形式。私もレン様がそんな酷い人だとは思ってませんよ。侵害です! 」

「ん、入れる前にリーナに聞いときたいんだけど、正直びっくりした? アイツらが来て」

「それはもちろんびっくりしましたよ……急に引き返せなんて言って飛び出して行ったかと思えば、聖女様と賢者様と研究師様を連れて戻ってきたんですから……私的に聖女様はおそらくやってくるだろうなと読んでましたが、賢者様にはびっくりです。王都を捨ててまでここ(ヘレクス領)に来た、これらだけでも驚きですが、理由をご本人様方に聞いて呆れました。……気持ちは分からなくもないですから歓迎しますけど」

「俺がびっくりだよ……そんなに慕われてたなんて思ってもなかったからな」

ずっと外で待たせていても可哀想だし、ドアを開けて三人を中に入れる。

「お邪魔するわよ……(ここがレン君の御屋敷!! すっごく広いし、天井の照明も高級そう……というかレン君の匂いすぅぅぅぅ!! あたし今日からずっと同じ屋根の下で暮らすのよね!? まじで王都出て正解だわ)」

「王都にある屋敷と比べるとかなり小さいけど、それでもこの領地の中では一番広いのかしらね」

「ひれーな、所々やっぱガタがきてそうな箇所もあるが、当分は大丈夫だろ」

全員お気に召してくれたようでなによりだ。
レミナが言ってた通り、改修しておくべき箇所も何点かあるから、当分とは言わず後で治しておこう。最初来た時にやばそうなとこは修復しておいたんだが、それでも取りこぼしはあるからな。

住む人数も増えるわけだしな。事故が起きてからでは遅い。


その後、部屋の振り分けを行うためにリーナに空き部屋を案内してもらってる間に、俺はガタがきてそうな箇所を急ピッチで治していった。部屋を決め終えて皆が戻ってきた頃には、作業も全て終わり、無事綺麗な屋敷になった。

ご飯を食べて終えてそれぞれ今日はお開き。その前にクレニが聞いてきた。

「お風呂ってないの? 」

その発言に女性陣の注目が走るーーー!
って、俺以外全員女子なんだがな。

どうなの? 作るよね? 作らないなんて言わせないよ? と、圧力がかかりまくったので明日お風呂を作ることを約束させられた。

俺は、

「いやいやシャワーでいいでしょ!? 」

そう抵抗したのだが、

「では多数決を取りましょう。まずはお風呂は要らない人は手をあげてください」

流石リーナ。場をまとめるのが上手い。俺の反論に阿鼻叫喚となりかけたこの場を一瞬で沈めた。

スっっっっゥ!!!!

ピンッと指先まで伸ばして、手を真っ直ぐとあげる。

もちろんこの場で手を挙げた人間はたった一人。

「次、お風呂が欲しい人は手をあげてください」

ザッッッッッッ!!!!

恐ろしいスピードで手が上がっていく。
絶対に風呂を作らせてやるという強い強い意志と圧に押し寄せられる。

「ってことなので作ってくださいね」

「い、異議あり!! この場には屋敷の仲間なのにこの投票に参加出来ていない人物が2人いる!! 仲間を除け者して投票を決めるなんてフェアじゃないだろ!! 」

俺は見苦しく、あーいや、こーい。こーいや、あーい。
しかしこれも直ぐにツッコミが入る。

「現状でも1:5ですので、もし仮にトルン様とトゥーン様が反対意見でも3:5なので覆ることはないです」

「というか女子はお風呂に入りたいもんなんだよ! その二人って女子よね? 」

クレニの問いに頷くリーナ。

「だったら聞くまでもなく賛成側だと思うわよ。レン君お願い♡ お風呂作って欲しいな♡ 」

「ツクリマス……けど明日でオネガイシマス、ハイ」

俺はシャワーでいいよね派だから、一切作ろうとは思ってなかったが、女子ズの熱い要望により、いや半ば強制的に作らされることとなった。

これ俺にメリットないじゃん!!
けどこういう要望にも答えるのが領主の役目かと納得して、今日は眠りについた。
朝、朝食を食べてすぐ俺はシャワールームに向かう。
ぶっちゃけ昼以降に作業を開始するつもりだったのだが、朝から期待の眼差しが凄すぎた。

ちなみに昨日熱を出したトゥーンちゃんは、1晩寝たことによって回復して、元気になったが病み上がりということもありもう一日は安静にしてもらっている。

なかなか降りてこなかったから朝食は部屋にもっていくつもりでいたんだけど、何故かかなり呆れた顔をしていたトルンがトゥーンちゃんを引っ張りながら降りてきた。皆心配の言葉をかけていた。

皆とは普通に話していたけど、俺とだけ少し顔がまた赤くなったような。

昨日のことで色々謝られたが、俺としては身体に支障が出るまで体調の変化に気づいてやれなかった責任があるし謝罪は受け取りにくかった。

【熱】ってワードに反応して顔が赤くなっていた気がするけどなんでだろう。


それと例のアイテムは好評だったので、この気に量産しておいて、棚に入れて置いた。

これから夏になって気温もあがるだろうから、暑さ対策グッズとしても使えるし、暑さで参る日が来たら領民たちにも渡そう。


シャワールームに着いた。
手前に脱いだ服を置く少し大きめの桶があって、ドアを開けるとシャワーが何個かある。ただそれだけ。

必要最低限のモノしか設備がなく、湯船なんてものはない。
けど広さだけは無駄にあるため大きめの風呂場を作る余裕はある。

とりあえずだだっぴろく空いてる空間に、四角い風呂桶を作る。このままお湯を入れて完成でもいいんだが、せっかくだし便利機能を加えていく。

少し大きめでドラゴンの彫刻を作り壁につける。
このドラゴン彫刻は口元が開かれていて、横にあるボタンを押すことによって、お湯が風呂桶にどんどん注ぎ込まれていくギミック。

ホースとかでもいいんだけど、せっかくだし良いお風呂場を作りたいじゃん?

ちなみに彫刻の中に魔石が組み込まれていて、ボタンと連動するように魔法をかけた。
傍から見たら不思議だけど実際はそんなカラクリ。

これだけではもちろん終わらない。

湯船で遊べるようなおもちゃも作ってみて試しに置いてみる。ぷかぷかと浮かびながらゆっくり進んでいくおもちゃ。

これは子供ウケしかしなさそう。
屋敷は成人女性がほとんどで、トゥーンちゃんがギリ未成年だけど、湯船に浮かぶアヒルのおもちゃに喜ぶ年齢ではないだろう。イマイチだし、ボツにしようかな。

そう思ったが、せっかく作ったし、小さい手のひらサイズだから邪魔にもならないと判断してそのままにすることに。

この時はまだ知らなかったが、このおもちゃがとんでもない幸をなす原因となるのだが、それはまた別のお話……。

後は、壁紙を綺麗な景色にしてみたり、お湯に濡れても大丈夫な椅子を作ってシャワーの手前においたり、シャワーのお湯の温度を微調整出来るよう調整を加えてみたり、とあるボタンを作ったりして、お風呂場は完成した。

我ながら力作だと思う。
これ以上人数は増えないと思うが、念の為シャワーの数を合計20にしておいた。

湯船にもおそらく二十数人くらいはつかれるスペースがある。

湯気がほわほわとたっている湯船を見て。

「これ俺最初に入っても怒られないよな? 」

めちゃくちゃ疲れたし、作成者権限で真っ先に風呂にダイブしたくなる気持ちをぐっと堪えて、皆を先に入らせることに決めた。

だって作るの否定してた人が最初に入ったら、絶対何か言われそうだもん。絶対皆得意げな顔をして「あれ? レン様はシャワーで良いと言ってませんでしたか? 」とか言い出す。

皆を探そうとして広間に行くと、なんと全員ソファに座って待っていた。

ちなみにそのソファは人をダメにするソファpart3だ。
part1と2は俺の部屋と領主室にある。これから人数が増えて、広間でくつろいだり、談笑したりするだろうと、これまた朝イチに作っておいた。

俺、働きすぎでは。

皆にできた旨を伝えると、俺を突き飛ばす勢いでシャワー室へと向かっていった。なんなら部屋に来た瞬間に察したのか立ち上がりだしていた。

後を追っかける。
入る前から今までとの違いに気づき驚いたのはリーナ、トメリル、トルン、トゥーンちゃんの前方組。

「まさかこれって……城にあった洗濯機……ってそういえばレン様が作られてましたね 」

「そうそうそれ。この機会にせっかくだし新たに作ったよ。これで服の汚れとか落ちやすくなったし、綺麗で黒ずみ汚れとか黄ばみも綺麗になるはず」

「そんな便利な機能まで追加したんですか。 城のやつは洗うだけでしたよね。あれでも十分メイド全員助かりましたが」

城にはかなりの人数が住んでいたから、洗濯物も大量でメイドさんたちがいつも大変そうにしてたので、一度でかなりの量を洗えたら便利だろうと作ったことがある。

それに今回は今言った機能を加えた改良型を作ってみた。
これで家事組の負担が減るだろう。

「どうやったらそんな機能を……」

「錬金術でちゃちゃっと? そして【付与魔法】で付与? 」

「ちゃちゃっとって……本当にレン様は人間離れしてますよね」

「いや〜こんくらい普通でしょ」

ちなみに言うまでもなく察せるだろうが、国王や兄弟たちには(以下略。

「ですから基準をあいつらにしないでください!!!! 」

怒られてしまった。
他のみんなも同様に「それは断じて普通では無い」と釘をさされてしまった。

「あのアホ国王のせいで、無自覚になってしまったのね。まさかこんな弊害が出るなんてね」

無自覚? クレニがよく分からないことを言っていたがそれはさておき。
いよいよお風呂場のお披露目だ。

気に入ってくれるといいなと思いながらドアを開けた。
「「「「「「「おおおおお!!! 」」」」」」」

「……私も手伝おうかとしてたんですが、これ変に私が介入しなくて正解でしたね。たった数時間でここまで完成度の高い風呂場を作るなんて、流石レン様です」

「えっ、ほんとにここってあのシャワールームですか!? 暗くて不気味でシャワー済ましたらいち早く出たくなるようなあのシャワールームが、こんなに明るくて、シャワーが沢山あるなんて! 凄すぎます!! 」

「ん、レンのやることだし規格外なことするって思ってたけど、これは予想の範疇を超えてる。凄い」

「変わりすぎじゃないですか!!! これ今までの原型とどめてないですよぉーーー!!! 渋々向かわされた人がやれる完成度優位に超えてますよ!? (うぅ、けどシャワールームを見ると嫌でも昨日のこと思い出すよーーー!!! トルン様にはお伝えしちゃったけど、絶対他の人には真相を言えない昨日のことーーー!!!! 慣れないこと言うんじゃなかったって思う反面、次は絶対言ってやるぞって燃えちゃうのなんでー!? シャワーだけじゃなくて、これで正真正銘お風呂が出来上がっちゃったから、本当の言葉で言えるチャンスだけど。……昨日みたいに二人っきりになれそうな時間は無いだろうなぁ。三人も屋敷の仲間が増えたしね)」

今までのシャワールームの有様を知ってる組はあまりの違いに驚いている。

昨日組も、今までとの違いは知らないものの、完成度が高い、ゆっくりできそうとこちらも大好評だった。

喜んでくれて何よりである。皆の笑顔、特にリーナの笑顔を見ていると、作ってよかったなぁと心から思ったのだった。

「さて、俺は退席するから皆お風呂入ってみてくれ。後で感想聞かせてなー」

そう言って出ようとしたのだが。

ガチッ

手を掴まれた?

「あのリーナさん? 何故手を掴まれているのでしょう? 」

「決まっているでしょう。レン様が早朝から汗水垂らして皆のために作ってくれた風呂場ですよ、レン様が一番最初に入らなくて誰が入るんですか」

やー、俺最初勝手に入ろうとしたけどさ。
お風呂の完成を待ちわびていたのは皆なんだし、先に入ってゆっくり浸かってもらいたい。俺が入ってる間待たせてしまうのもあれだし。
だからその旨を伝えて譲ろうとしたのだが、リーナの口から帰ってきたのはとんでもない言葉だった。

「はい? みんなで入ればいいじゃないですか」

「なにいってんの!? 」

「私は全然いいですよ? 」

「リーナがよくてもほかの皆は嫌でしょ!? はい、多数決! そうだ多数決にしよう!」

昨日の仕返しと言わんばかりに多数決を連呼する。
しかしこれは自分の首を絞めただけである。

「はい! 俺と入りたくない人手ーあげて! ほらリーナ、満場一致で手が上がってるじゃん!! 」

「誰一人上がってないですけど」

あ、ほんとだ。

「俺と入りたい人! ほら!! 誰も上げてな」

「全員手上げてますが」

その通りである。皆ピンッと手を挙げてる。

「では皆さん服脱ぎましょう」

まさか風呂場を作った結果、7人の女性と混浴をすることになったのだが? うん、なんで……。

あっという間に素っ裸にされた俺は、椅子に連行された。

「あの、皆さん? 何をするおつもりで」

「頭洗うやつってどれ押せばいいの……ってこれか。いい匂いねこれ」

クレニがボタンを押すと、手に泡が乗る。その泡を俺の頭にのせて、わしゃわしゃ洗う。

「ボディーソープはこっちのボタンですか。私は右側洗いますね」

「じゃあ私は左側を洗います! 」

「ん、右下」

「あわわ、わ、わわわわあしは左下でぇぇ!!! 」

上半身の右側をリーナ、左側をトメリル、下半部の右下をトルン、左下をトゥーンが、謎に密着しながら隅々まで洗ってくる。

「俺様たちするとこなくね? 」

「じゃあ失礼して、足元でも洗いましょうか〜マーリンは右足で」

「んじゃ俺様は左足だな」

洗う部分が殆ど残されてなかった二人、マーリンは右足を、レミナは左足を洗う。

今の状況を説明するとこう。
身体全てを7人が分担して洗っている。

お風呂だから仕方ないとはいえ、裸で。
おまけに皆美少女。

このいい匂いはシャンプーやボディーソープの匂いなのか、はたまたこいつらの匂いなのかもう訳がわからない。頭がクラクラして、考えがまとまらないし、何も考えられない。

短いようで長かった時間がようやく終わりを迎え、ようやく俺は湯船へと開放された。

熱さによってようやく意識が戻ってきた。
なるべく洗い場の方は見ないように、彫刻のドラゴンをぼけーと眺めていると、洗い終わった皆が次々と湯船に浸かってくる。

しまった、出遅れた!! こいつらが浸かる前に出ようとしてたのに。

自分で言うのもなんだが、あまりにお風呂が極上だったので、長湯してしまった。

「俺はもう出るから、皆さんごゆっくり……」

出ようとしたが、そう簡単に脱出できる訳もなく、さっきと同じ位置に陣取った皆さんが、身体をくっつけて浸かる。

右見ても左見ても前見ても後ろ全て包囲されてるような状況。

しばらく無言が続いたが、リーナが最初に声を発した。

「私たちのワガママに付き合って、こんな立派なお風呂を作って下さりありがとうございます。お身体を洗ったのは、レン様が作業をしてる最中に皆さんと決めた、ちょっとしたお返しだったんです。みんなでありがとうの気持ちを伝えるにはどうしたらいいか、悩んだ結果こうなりました」

草加、広間に全員集合してたのはただ単に楽しみで待ち構えていただけじゃなくて、俺のためにお返しを考えていてくれたからなのか。

そのわりには突き飛ばされた気がするけど、それを言うのはやぼである。

「皆が考えてお礼をしてくれたのか、ありがとう」

皆にお礼を言う。

「領民のために頑張ってくれている姿を見てて、ずっとお礼がしたいって思っていたのでこういう形で出来て良かったです。これからもこの領地をお願いしますね領主様♡ 」

「洗って一緒にくっついてお風呂に入るだけで、喜ぶのか疑問だったけど、そのデレデレな顔を見る限り、皆の知恵は間違ってない、良かった」

「恥ずかしいですけど、喜んでくれるならいつでもしますからぁぁ……!!! 」

「まさか一緒に住むことになって二日目で混浴する羽目になるとは思ってもなかったけど、あたしも楽しかったわよ。……トゥーンと同じでバカ恥ずかしいけど。レン君が望むなら二人っきりでも入ってあげるわ」

「あら〜クレニちゃん大胆〜! もちろんマーリンもお誘いがあれば歓迎するわよ♡ あくまでもレンちゃんからこないとだけどね♡ 」

「風呂入ったの久々すぎるし、入るのだりーけど、まぁ、レンが入るなら一緒に入ってやってもいいぜ? 」

「ちょっと後半組だけ抜け駆け狙ってる人多すぎませんか!? 私達先発ですよ!? 」

「言ったもん勝ちだろー!! 」

「なにをー!! 」

ばしゃばしゃとお湯の掛け合いが始まり、皆の中心にいた俺は顔からずぶ濡れになりながらも、皆の気が済むまで座っていたのであった。

厳密に言えば、お湯の掛け合い合戦に唯一参加しなかったトルンが俺にガッチリ捕まっていたからである。

「レン、独り占め出来て嬉しい。もうちょっとだけこうしていたい」

トルンからの要望によりそうせざるを得なかった、そんな所である。


ちなみにだが、1時間くらい浸かっていたので、全員のぼせて、広間で一日ぶっ倒れる羽目になった。

変な一日だったなぁとは思うけど、これはこれでありなのか?
皆と混浴した次の日の朝。
いつも通り起こされて、朝食を食べに向かう。基本リーナかトメリルのどちらかが起こしに来ていたのだが、今日は謎にトゥーンちゃんだった。

起こす時の優しさ度を言ったら、

トゥーンちゃん〉〉〉〉〉〉〉〉トメリル〉〉リーナみたいな?

所謂(いわゆる)絶対に越えられない壁。

いや、まじでそのくらいトゥーンちゃんが優しかった。30分くらい追加で寝かせてくれたのだ。

人間、そうやって甘やかされると。

「あと30分寝たらだめ? 」

こうなる。

「うぅん……わたしとしてはいつまでも寝かせてあげたいんですが、多分他の皆さんもう席に着いてると思いますし、これ以上待たせる訳にもいかなくて……。あっ! 今日も朝ごはん食べてお仕事頑張ったら、ちょっとしたことしてあげますね! だから起きましょ! 」

「いやいや。皆席に着いてるって、あのレミナがこんな朝早くから起きてるわけないだろ」

昨日起きてたのは意外だったが、それはお風呂があったから? いや、レミナは俺と同じでシャワー派の人間だったはずだ。もっとも、昨日のあれでお風呂が寿司になったと言っていたみたいだが。

そんなことをいいつつも、身体を起こし着替えをして、洗面所に向かう。

レバーを捻って【冷たい方】から【暖かい方】に切り替えて、顔を洗う。

昨日のシャワーで付けた機能だが、洗面所にもあったら便利かなと思い付けた。

これはお好みで好きな方をどうぞって感じかな。
夏は冷たく、冬は暖かく出来ていいかも。

そして死の駆動に行くと、やっぱりレミナは居なかった。なんならクレニも居ない。

「あの二人は? 」

「レミナは当然寝てるわよ〜。意外だったのがクレニちゃんもぐっすり眠ってて、起こそうとしてもうんともすんとも言わないのよ」

「なんか意外。聖女って規則正しい生活送ってるもんだと勝手に思ってた」

「新しい土地だし、まだここに来て3日目だから疲れも取れてないのかもね〜」

「それを言ったらマーリンだって三日目だろ? 」

「賢者だし体力には自信あるわよ〜。早起きの習慣も身体に染み付いちゃってるのもあるかも〜」

「健康賢者なのは相変わらずで安心したわ……って君らまじで律儀に松の? 」

30分も遅れてやってきた人の発言とは到底思えない言い草だが、誰も食事に手をつけてなかったので思わず言ってしまった。

「一応そういう了解? になっているので」

「じゃああいつら呼んでくるわ」

食堂を一旦後にして、あいつらの部屋に向かう。
まずは楽に起こせそうなクレニから。

ノックしても当然反応はないので、部屋の中に入る。

凄い寝相をした聖女が目に入った。
ベットから頭は出てるし、布団は蹴り飛ばされているし、服はめくれておヘソがチラ見してる。あとヨダレが垂れている。

「おーい起きろー」

身体を揺さぶってみるが中々起きない。

どうしたものかと頭を悩ませる。

あ、そうだ。こういう時こそ返金術の出番だな。

ベットの隅っこに置けるような小さめのサイズにして、時計を埋め込んで、設定した時間になると、大音量で音がなるようにして……っと。

ちょちょいのちょいっと数分で完成した。
これは【目覚まし時計君】とでも名付けよう。

試しに1分後に設定して、スイッチをon。
クレニの耳元にそっと置く。

そして待つこと1分。

ピピピピヒピピピピピピピピヒピピピピピピ!!!!!

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!?????? な、なに!? 」

魔物みたいな声を上げながら飛び起きたクレニが、滝のような汗を流しながら、首をブンブンふりながら部屋中を見渡す。

「へ? レン君。どうしたの」

ピピピピヒピピピピピピ!!!!!

「やかましいわね!!!! どこから鳴ってるのよ!! 」

クレニはそう言って、視線を落とす。そしてようやく【目覚まし時計君】を見つける。

「これね!? どこ押せばいいのよこれぇぇ!! 耳が死ぬわよ」

「その頭の部分のとこ」

こうしてようやく音が消えた。

「れ、レン君よねこれ作ったの……あたしのために作ってくれたのはこの次農協を見たら分かるんだけど、流石にうるさすぎるわよコレ」

「ごめんそれ俺も思った」

鳴り響くピー音を聴きながら思ったのだ。
あっ、これ音量設定ミスったわって。

だって……

「おい聖女!! お前の部屋からとんでもない音してたけど無事か」

あの寝坊助で、頭を叩こうとも、頬をペチペチしようとも絶対に起きない鉄壁の昼夜逆転女であるレミナが血相変えて飛び起きてきたくらいだからだ。

「あ、レン? なんでレンがクレニの部屋に……朝から……朝から、ぷぷっ」

「ちょっとレミナ!? あんた勘違いしてない!!? ねぇ! 」

「やべ、逃げろ! 」

こうして二人とも部屋を出ていく。後ろから声をかけておく。

「皆待ってるから顔洗ったら食堂いけよー」

「わかったわ」

「あいよー」

走り去っていく二人の後ろ姿を見送り、俺はベットの上にある【目覚まし時計君】を持ち上げた。


これ、音量のとこ変えないとなぁ……。

一回分解して、程よい音量に変えたあと、俺も急いで食堂に向かったのだった。
因みにあの目覚まし時計君の音、食堂まで聞こえていたみたいだ。

なんだったんですかあの音は、って問い詰められたが、適当に流しておいて。

やっと揃った皆で朝ごはんを食べて、食器は自動洗剤噴射機能付きのガラクタに全部投げ込み、それを水で洗い流して終わり。

クレ二がほへーと眺めていた。

「こんな便利なのまで作っちゃえるのね」

「便利だしメイド組の負担軽減にもなってるみたいで作ってよかった」

他にもちょこちょこと話をしていたら、他のみんなは仕事なり洗濯物を星に行ったり、二度寝しに行ったりで、クレニと二人きりになっていた。

「ねぇ、レン君は王都……ってよりはお城で酷い目にあってきたんでしょ? ここは関係ないとはいっても間接的には王国のものだしさ。左遷なんてバックれて他の国に行こうって思ったりしなかったの? 」

突然そんなことを言われて驚きながらも答える。

「他の国っても行く宛てなんて何処にもないからなー。大人しく左遷を受け入れるしかなかったんだよな。それに城で酷い目にあってきたって皆に思われてるけど、正確には違うかな? 同じ血が流れてる人間に嫌われてただけで他のやつらは仲良くしてくれたからな。それこそ賢者のマーリンとか魔術師や騎士団のみんなも良くしてくれたし、魔剣プレゼントしてくれた結界魔術師長、それに……君もね? 」

「次から次へと重要な役職名が挙げられていくけど、なんかもう驚かなくなってきたわ。けどこれは聞いておきたいんだけど、後悔もしてないの? 」

「んー最初こそはこんな領地……って思ったけど、今じゃここが好きだぜ。それに俺の力でここを発展させていったら、少しは認めてくれるんじゃねぇかなって」

それを聞いて悲しそうな顔をするクレニ。

自分でも言ってて少し驚いた。
まだ、心の底ではクソ親父に認めてもらいたいって感情があったんだなって。

「辛かったらいつでもあたしは傍に居てあげるからね。メイドの方がいいのかもしれないけどっ」

「ははっ、ありがとう」

「今日は何かするの? 」

「昨日一日休んじゃったし、ちゃちゃっと広場を作ってくる」

「ちゃちゃっとって……そんな簡単に出来るものじゃないでしょ。あたしも手伝うよ? 暇だし」

うーん?

「一時間もあったら終わると思うよ? 外暑いしクレニは部屋でゆっくりしててー」

「い、一時間って……いや、レン君ならやりかねないか。変にあたしが居て邪魔になってもあれだし、じゃあここで待っとくね! 帰ってきたらあたしと……あたしと二人っきりでお風呂入りましょ! 頑張ってきてね!! 」

クレニはそう言うと、俺の返答も待たずにぴゅーーーとマンガみたいに足を竜巻にしながら食堂を出ていった。

そんなにお風呂を気に入ってくれたのは嬉しいけど、なんでわざわざ俺と入りたがるんだろう? 今からでも一人で朝風呂入ればいいのに。
外に出て、集会をした場所に立っているとガークがやってきて、声をかけてきた。

「レンこうやって話すのは久々だな!」

「おーガーク。確かに二人っきりで話すのはあの日以来か? 」

ガークが喧嘩ふっかけてきて、返り討ちにしたら認めてくれたやつ。

「トメリルはちゃんとやってるか? 」

「色んな仕事してくれてるし、リーナの補佐もやってくれてるから凄く助かってるよ。それに屋敷の皆とも仲良くやってくれてるよ」

やっぱこいつ根から良い奴なんだよな。すぐ友人を気遣えるし。

必然ではあるが、屋敷メンバーのうち、トメリル以外は嘔吐組のため、どうしても疎外感が生まれたりしないか心配だったが、誰とでもすぐ打ち解けて、楽しそうに毎日過ごしてる。

「ならよかったわ。そーいや、聖女様たちってレンを追ってやってきたんだろ? お前、人望ありすぎじゃね? 下手したら国王以上なんじゃねぇか? 」

「いやいや買い被りすぎだそれは」

「いつか王女様とかが、レンを追ってヘレクス領にやってきたなんて大イベイベントが起こっても、俺は驚かねぇからな? 」

「お、王女様って……お前なぁ」

「じょーだんだよ、じょーだん。流石のレンでも王女様との交流はねぇか。レンと同じで王女も何人か、えーと三人だっけ? いるっつーのは知ってるが、第三王女とかだったら交流あんのかなって思ったんだが。第一王女はなくとも」

「え? そりゃ三人とも交流あるぞ? 」

「はぁぁぁ!?!? いや、俺……冗談で言ったんだぞ!? は、ガチで!? 」

あのイカつい顔したガークがめちゃくちゃ驚いてて面白い。


「いや、そりゃ王族のパーティーとかあるからな。兄貴共はでしゃばって、ガツガツと王女様方にとりいっていってたが、俺はそういうのには興味がなくてな。食いもんと飲み物だけ楽しんでた」

「なんだ、びっくりさせんなよ。ただパーティーであったことがあるだけかよ。じゃあ話したりとかもしてないんだろ? 」

「んや? 周囲や兄貴共がべちゃくちゃ喋りながらダンスとかなんならしてる中俺だけぼっちで飯食ってるのを、不憫に思ったのか、はたまた哀れに思ったからなのかは知らないけど、第三王女……クレシアが話しかけてきたんだ」

「王族や貴族のパーティーなんて見たことねぇから想像でしかないが、確かに一人、ぽつんと飯食ってるやつがいたら、浮くわな。それで話しかけようとするクレシア様もすげぇが」

「ガーク!! 」

「あん? どうした!? 」

「ガーク、ガークが人の名前に様を付けた!? お前本当にガークなのか!? 俺の知ってるガークじゃないぞ!!! 」

「アホか!? 王女様まで呼び捨てにはしねぇよ!!! 流石にそこは弁えてるぞ」

「これは驚いた。様を付けるにしても本人の目の前だけかと思ってた」

「レン、一回シバいていいか? 」

「やれるもんなら? 」

「さーせんした! 」

こんなやり取りが続いてーーー

「ーーーと、こんな感じてクレシアと仲良くなった俺は、クレシアからの紹介で第一王女と第二王女とも仲良くなったんだ」

「あんだけ俺に言っといてレンは呼び捨てなのかよ」

「俺も最初は様付けてたけど本人たちが様付けやめろ、名前で呼べ、差もなくば拉致るぞと脅されたから渋々な……」

「話聞いてて思ったんだが、王女様に気に入られたから、お前への妬みが増幅して行ったんじゃねぇか? 」

なるほどねぇ……。有り得ない話ではないな。
しかし王女三人に気に入られたところで、なんになるんだって話だよな。

綺麗だったり可愛い王女たちを嫁にして自慢したいとかそんなところ?

あいつらならそんな下な思惑しかなさそう、うん。

「レンがそれ言うか? 7人も女はべらせといて」

呆れたように言ってくるガーク。

「おまっ、はべらせるって何言ってんだ。あいつらはただ友達として仲良くしてくれてるだけだと思うんだが」

「レンは女心が分からんのだな」

またでた女心!
リーナとかトメリルとかトゥーンちゃんも言ってた気がする。なんなのだろう、女心って。

そういう疑問に答えてくれるナビゲーターガイドみたいなの後で作ってみようかな。

「はーこりゃあいつ苦労しそうだな。友達として言っといてやるが、ソレ、言われたら全員ショック受けるだろうから絶対言うなよ」

「お、おう」

「話は戻るが王女様方に気に入られたって言ってたよな? 俺はレンを追ってここに王女様が来ても驚かないからな」

「いやいや、流石に王女が俺の後を追ってくるなんてことは無いだろ……」

無いよな……?

「というかこれ以上は誰も俺関連では来ないんじゃないかなぁ」

「んなことねぇだろ。って引き止めて悪かったな。そーいやなんでこんなとこに突っ立ってたんだ」

「ん? ここに皆が気安く集まれるように広場を作ろうと思ってな」

「俺がボコボコにされた場所が皆でキャッキャの広場になんのか」

「……そ、そうだな」

俺としてはただ広いってのと、集会所がスグそこってのを鑑みてここに決めただけだったのだが、そういえばガークと決闘したのここだったな。なんかもう懐かしく感じる。

「俺も手伝うぜ」

「え、いいのか? 」

「あたりめーだろ。てかそんな大掛かりなことすんのに一人でやるつもりだったのか? 」

「うーんだって数十分もあれば完成するし」

「数十分って……まぁレンだからそうか」

「なんだよその納得の仕方」

「ここの領主様はすげぇからな」

「買いかぶりすぎだ。けど、手伝ってくれるのはありがたい」

「一人より、二人でやった方が早く終わるだろ? お前は早く屋敷に帰ってあいつらと談笑したり遊んだりするのも仕事だ。早く帰ってやれ」

「ガーク……」

「あ? なんだよお前ほんといいやつだな。あの時では考えられないわ」

「一言多いんだよ一言。うっし、やるぞ。何をしたらいい? 」

「そっからここをこうしてだな」

ーーー30分後。

「「完成ー!!! 」」

額についた汗を拭い、お互い近くに歩み寄るとハイタッチをする。

「想定より早く終わったな。これもガークが手伝ってくれたおかげだ」

「ほとんどレンがやったけどな。俺はちょっと手伝っただけだ」

木材のイスやテーブルを何台かおいて、領民が座って談笑したりできるようにした。外だと日光に照らされて、夏は暑くなってしまうのでテントを貼って日差しを少しでも遮れるようにした。因みに天井にウォータースプリングをくっつけたので、霧型の水が優しく噴射されて暑さを軽減&涼しくできるように。

子供たちが退屈しないようにブランコと滑り台も併設した。

これでとりあえずの広場は完成した。

作ってる最中から領民たちが、少し集まってきていたので試しに座ってもらったが好評だった。

チラッと作った広場を見ると、早速話を聞き付けた子供たちが遊んでいるし、仕事に疲れた領民や散歩をしていた領民が座って談笑している。

そんな光景を見て、作ってよかったと心から思った。

しばらくの間少し離れた場所で、ガークと二人で様子を見守っていたのだった。