「陽向くん、おはよ」
「おはよ」

 次の日の朝も、いつものように陽向くんは迎えには来てくれた。

 だけどやっぱり昨日と同じように、目を合わせてくれない。
 昨日は陽向くんのことが気になりすぎて、あんまり眠れなかったな。
 
「陽向くん、何かあった?」
「何が? 特に何も無いけど」

 僕たちは無言のまま学校へ向かう。
 またお腹痛くなってきちゃったな。

 学校に着き、いつも通りに授業を受けていたけれど三時間目の体育の時間に貧血が起きた。バレーをしていると、だんだんボールがぼやけて見えてきて、見えなくなって――。先生やクラスメイトたちに「雪白くん」って苗字を呼ばれている声だけが最後に聞こえた。僕はこのまま人生が終わるのかなと思いながら、真っ白の世界に導かれていった。

 目が覚めると保健室にいて、目の前には何故か陽向くんがいた。

「叶人、大丈夫か?」

 わっ! 陽向くんが目を合わせてくれている。保健室のベットに横になりながら陽向くんを見つめていると涙が出てきて枕が濡れる。

「叶人、どうした? そんなに具合悪いのか……?」

 目を合わせながら話してくれていることが嬉しくて、返事するのを忘れていた。

「大丈夫だよ」

 本当に眠ったらお腹も治っていたし、調子も良くなっていた。昨日眠れなかったから倒れたのかな?

「叶人、自転車で帰れそうか? 無理そうだったら親に連絡してみるかタクシーか……」
「もしかして、もう帰る時間?」
「そうだよ。叶人の鞄は持ってきたからな」
「ありがとう。」

 そう言うと陽向くんは、陽向くんが持っていた僕の鞄を僕にアピールしてくれた。

「大丈夫か?」
「大丈夫だよ!」
「本当に大丈夫か?」
「陽向くん、何回大丈夫?って聞いてくるの?」

 なんか面白くなって笑った。

「だって、叶人のことが心配だから……」

 今日も陽向くんは優しい――。

***