そうときたら男は黙ってない。



完璧な彼女に少しでも近づきたいという思いから、彼女が教室の前を通る度、すぐに廊下に出て話しかけ続ける。



そう、今も。



「桂さん、今日も可愛すぎです!」



「ええっと……、私は普通なんだけどなぁ。でもありがとうございます」



少し聞こえる彼女の声。



いつ聞いても優しい声色をしているから、本当に優しくて陽だまりのような人なんだろう。



……まぁ、そんなこと分かっても僕には無関係なんだから知る必要も無いけど。



その時の僕は呑気にそう思っていた。