あんなに小さくてかわいい13歳の女の子が、体の大きい17歳の聖女候補と戦う──。
(練習試合とはいえ、魔法競技では絶対に考えられない年齢差だわ)
13歳と17歳では、精神的な経験値が違う。魔法競技だと、それが大きくあらわれてしまうはずだ。
私は訓練舞台上のジョゼットを見守っていた。
ジョゼットをにらみつけるのは、相手のラーラ・ジェリフィンだった。
「スコラ・エンジェミアの生徒と、練習試合を行えるっていうから、ここにきてみたら」
身長180センチのラーラは不満足そうに、ジョゼットを見下ろした。
「あんたのような子どもと対戦するハメになるとはね!」
「申し訳ございません」
ジョゼットはそう言いながら、宙から自分の杖を取り出した。
「ご安心ください。私はあなたに勝ちますから」
「は? なに言ってんの、こいつ」
「私が、あなたに勝つから、ご安心ください、と言ったのです」
「はあ?」
ラーラは半笑いだ。頬はピクピク震えていたが。
「生意気いってんじゃないよ、このガキ……!」
ラーラは顔を真っ赤にして、1メートル後ろに跳躍した。そしてすぐに、自分の杖を振りかざした。
ドパッ
そんな音がした。
圧力砲! 風を弾丸のように撃ち、相手を吹き飛ばす魔法だ!
しかし──えっ? ジョゼットがいない!
(あっ)
私は声を上げた。
ジョゼットは5メートルも大ジャンプしていた。ラーラの魔法をかわし、自分も魔法を使ったジャンプをしたのだ。
「面白い! だけどやっぱり子どもだね!」
ラーラは杖から空中のジョゼットに向かって、杖を振りかざした。
ラーラの杖からは、直径50センチの、魔法で作り上げた魔法球が打ち出される!
高速でジョゼットに向かって飛んでいく!
あれに当たれば、骨折どころじゃすまない! 鉄球を撃ちだしたのと変わりはしないからだ。ラーラ、容赦ない……!
ガキイイイインッ
しかし、ジョゼットは空中でいとも簡単に、魔法球を杖で打ち返した。
スタッ
ジョゼットが地面に降り立ったとき──。
ゴワーン
鈍い音がした。
ラーラの後ろに設置された、魔法防御壁に、魔法球が当たったのだ。
「な、なんだと?」
ラーラが後ろを見ていると──。
「よそ見している場合じゃ、ございません。──ほいっと」
ジョゼットはそう言いつつ、杖をラーラの右脇に差し込んだ。
ヒュッ
ラーラの体が浮く! ジョゼットは魔法で、ラーラを投げた!
ドガアアアッ
ラーラはジョゼットの後ろの地面に、叩きつけられた。
「ぐ、へ」
ラーラはうめき声を出す。
魔法を使った、体術技!
「ジョゼット・ライトニングボルト!」
ビシャッ
天から雷の魔法が落とされた!
「ギャッ!」
その雷の魔法が、ラーラの腕に当たる。
ガラン
杖はラーラの手から落ち、ラーラは尻もちをついた。
「狙いは外しません」
ジョゼットはニコッと笑いながら言った。
(まさか……)
私は驚いた。ジョゼットは、ラーラの腕を狙って、雷魔法を放ったのだ。すごい正確性だ。
私でも、狙って、必ず相手の腕に魔法を落とせるのは難しい……。
ジョゼットは、尻もちをついたラーラを見下ろし、杖を突きつける。
「あっ……ぐっ……」
ラーラが立ち上がれない!
「う、ぐぐ」
ラーラはうめく。
やがて、ラーラは舞台上に、自分からうつ伏せになってしまった。顔は真っ青だ。
この練習試合を観ていた野次馬たちは、ラーラの行動に驚いた。
「ラーラ、どうしたんだ?」
「攻撃しないのか?」
「いや、魔法で上から圧力をかけられているんだ! 立ち上がれないんだ!」
ジョゼットの杖の魔法で、体を上から押さえつけられているのだ。それで、うつ伏せにならざるを得なかったのだ──。
ジョゼットはラーラに杖を突きつけながら、言った。
「どうします? 降参しますか?」
「うぐぐ……どうしてあたしが、あんたみたいなガキに……だあああっ!」
ラーラは渾身の力を込めて、体を起こした。
「あら」
ジョゼットは、感心したように声を上げた。
ラーラは冷や汗をかきながらゆっくり立ち上がると、ジョゼットの両肩をつかんだ。
「魔力を流し込んでやる!」
ラーラが声を上げたとき、ジョゼットは杖をひょいとラーラのあご先に当てた。
ジョゼットが杖に力を込めると──。
「う、わっ」
ラーラは後方に3メートルは吹っ飛び……。
ドガアアッ
ラーラは、一回転し、肩口から床に落ちてしまった。
魔法の投げ技だ!
「う、うう……何てこった……」
ラーラは痛々しい表情をして、肩を押さえている。多分、かなり肩を痛めただろう。
すると、ラーラの所属学校である、スコラ・アダマーグの先生たちが、あわてて舞台上に上がってきた。
「練習試合は中止だ!」
ドヨドヨドヨッ
野次馬たちが騒いでいる。
「お、おい。あの小さい女の子が、スコラ・アダマーグの生徒の勝っちゃったぞ」
「あの子、スコラ・エンジェミアの子だろ? 強いに決まってる」
「だからといって……あの体の小ささで……ラーラを圧倒かよ」
フレデリカはフフッと笑った。
「見たかい? ジョゼットは強いだろう?」
フレデリカは胸を張って、私に言った。
「あれがスコラ・エンジェミア、学校内ランキング3位のジョゼット・マレーカだ」
「あの子が3位? ということは1位……つまり、最も強いのは?」
「私だよ」
フレデリカはにこやかに言った。私はうなずいた。
「あなたはジョゼットの数倍強いってわけね」
「そういうことになる。世界学生魔法競技会が楽しみだ。私もジョゼットも出場予定だからね……ミレイア、あなたと戦いたい」
フレデリカはもう行ってしまいそうだった。
「私は戦いたくないわ」
「いや、私たちは戦う運命にあるよ、必ずね。──それでは。」
フレデリカが訓練所の外に行ってしまったとき、ゾーヤが戻って来た。
「おい、大変だ!」
ゾーヤが叫んだ。
「噂で聞いたが、ジェニファーが、スコラ・シャルロを自主退学した。そして、エクセン王国の聖女になるらしいぞ!」
ええええっ?
私は呆然とした。
(練習試合とはいえ、魔法競技では絶対に考えられない年齢差だわ)
13歳と17歳では、精神的な経験値が違う。魔法競技だと、それが大きくあらわれてしまうはずだ。
私は訓練舞台上のジョゼットを見守っていた。
ジョゼットをにらみつけるのは、相手のラーラ・ジェリフィンだった。
「スコラ・エンジェミアの生徒と、練習試合を行えるっていうから、ここにきてみたら」
身長180センチのラーラは不満足そうに、ジョゼットを見下ろした。
「あんたのような子どもと対戦するハメになるとはね!」
「申し訳ございません」
ジョゼットはそう言いながら、宙から自分の杖を取り出した。
「ご安心ください。私はあなたに勝ちますから」
「は? なに言ってんの、こいつ」
「私が、あなたに勝つから、ご安心ください、と言ったのです」
「はあ?」
ラーラは半笑いだ。頬はピクピク震えていたが。
「生意気いってんじゃないよ、このガキ……!」
ラーラは顔を真っ赤にして、1メートル後ろに跳躍した。そしてすぐに、自分の杖を振りかざした。
ドパッ
そんな音がした。
圧力砲! 風を弾丸のように撃ち、相手を吹き飛ばす魔法だ!
しかし──えっ? ジョゼットがいない!
(あっ)
私は声を上げた。
ジョゼットは5メートルも大ジャンプしていた。ラーラの魔法をかわし、自分も魔法を使ったジャンプをしたのだ。
「面白い! だけどやっぱり子どもだね!」
ラーラは杖から空中のジョゼットに向かって、杖を振りかざした。
ラーラの杖からは、直径50センチの、魔法で作り上げた魔法球が打ち出される!
高速でジョゼットに向かって飛んでいく!
あれに当たれば、骨折どころじゃすまない! 鉄球を撃ちだしたのと変わりはしないからだ。ラーラ、容赦ない……!
ガキイイイインッ
しかし、ジョゼットは空中でいとも簡単に、魔法球を杖で打ち返した。
スタッ
ジョゼットが地面に降り立ったとき──。
ゴワーン
鈍い音がした。
ラーラの後ろに設置された、魔法防御壁に、魔法球が当たったのだ。
「な、なんだと?」
ラーラが後ろを見ていると──。
「よそ見している場合じゃ、ございません。──ほいっと」
ジョゼットはそう言いつつ、杖をラーラの右脇に差し込んだ。
ヒュッ
ラーラの体が浮く! ジョゼットは魔法で、ラーラを投げた!
ドガアアアッ
ラーラはジョゼットの後ろの地面に、叩きつけられた。
「ぐ、へ」
ラーラはうめき声を出す。
魔法を使った、体術技!
「ジョゼット・ライトニングボルト!」
ビシャッ
天から雷の魔法が落とされた!
「ギャッ!」
その雷の魔法が、ラーラの腕に当たる。
ガラン
杖はラーラの手から落ち、ラーラは尻もちをついた。
「狙いは外しません」
ジョゼットはニコッと笑いながら言った。
(まさか……)
私は驚いた。ジョゼットは、ラーラの腕を狙って、雷魔法を放ったのだ。すごい正確性だ。
私でも、狙って、必ず相手の腕に魔法を落とせるのは難しい……。
ジョゼットは、尻もちをついたラーラを見下ろし、杖を突きつける。
「あっ……ぐっ……」
ラーラが立ち上がれない!
「う、ぐぐ」
ラーラはうめく。
やがて、ラーラは舞台上に、自分からうつ伏せになってしまった。顔は真っ青だ。
この練習試合を観ていた野次馬たちは、ラーラの行動に驚いた。
「ラーラ、どうしたんだ?」
「攻撃しないのか?」
「いや、魔法で上から圧力をかけられているんだ! 立ち上がれないんだ!」
ジョゼットの杖の魔法で、体を上から押さえつけられているのだ。それで、うつ伏せにならざるを得なかったのだ──。
ジョゼットはラーラに杖を突きつけながら、言った。
「どうします? 降参しますか?」
「うぐぐ……どうしてあたしが、あんたみたいなガキに……だあああっ!」
ラーラは渾身の力を込めて、体を起こした。
「あら」
ジョゼットは、感心したように声を上げた。
ラーラは冷や汗をかきながらゆっくり立ち上がると、ジョゼットの両肩をつかんだ。
「魔力を流し込んでやる!」
ラーラが声を上げたとき、ジョゼットは杖をひょいとラーラのあご先に当てた。
ジョゼットが杖に力を込めると──。
「う、わっ」
ラーラは後方に3メートルは吹っ飛び……。
ドガアアッ
ラーラは、一回転し、肩口から床に落ちてしまった。
魔法の投げ技だ!
「う、うう……何てこった……」
ラーラは痛々しい表情をして、肩を押さえている。多分、かなり肩を痛めただろう。
すると、ラーラの所属学校である、スコラ・アダマーグの先生たちが、あわてて舞台上に上がってきた。
「練習試合は中止だ!」
ドヨドヨドヨッ
野次馬たちが騒いでいる。
「お、おい。あの小さい女の子が、スコラ・アダマーグの生徒の勝っちゃったぞ」
「あの子、スコラ・エンジェミアの子だろ? 強いに決まってる」
「だからといって……あの体の小ささで……ラーラを圧倒かよ」
フレデリカはフフッと笑った。
「見たかい? ジョゼットは強いだろう?」
フレデリカは胸を張って、私に言った。
「あれがスコラ・エンジェミア、学校内ランキング3位のジョゼット・マレーカだ」
「あの子が3位? ということは1位……つまり、最も強いのは?」
「私だよ」
フレデリカはにこやかに言った。私はうなずいた。
「あなたはジョゼットの数倍強いってわけね」
「そういうことになる。世界学生魔法競技会が楽しみだ。私もジョゼットも出場予定だからね……ミレイア、あなたと戦いたい」
フレデリカはもう行ってしまいそうだった。
「私は戦いたくないわ」
「いや、私たちは戦う運命にあるよ、必ずね。──それでは。」
フレデリカが訓練所の外に行ってしまったとき、ゾーヤが戻って来た。
「おい、大変だ!」
ゾーヤが叫んだ。
「噂で聞いたが、ジェニファーが、スコラ・シャルロを自主退学した。そして、エクセン王国の聖女になるらしいぞ!」
ええええっ?
私は呆然とした。