待ち合わせは海が見える店舗だった。目印のために、私は赤いスカーフを巻いていた。
さすが地元の人気店。家族連れ、友人連れ、観光客でにぎわっている。そんな彼らを横目に、約束の時間の10分前にお店の前に着いた私は、どんな人が来るやらとドキドキしながら待っていた。
約束まであと2分。それらしい人はまだ見当たらない。そこへ誰かが私に声をかけてきた。
「赤木さんじゃーん!」
鈴木さんだった。思わず一歩後ずさった。
「なにー?まちあわせー?」
「は、はい。鈴木さんは」
「俺も待ち合わせてんの。赤いスカーフ巻いた人と」
その一言に心臓が飛び跳ね、思わずスカーフを触った。
鈴木さんは私の首元に視線を移した。
「もしや…きょんきょん?」
アプリでの私の名前だ。赤木京香からとった安直なHN。
「ナツさん…」
「きょんきょん!!」
アプリの利用者が少ないとはいえ、近所過ぎるにもほどがある出会いだった。
ロンドン旅行はとんとん拍子に決まってしまった。
鈴木さんは初手から行く気満々で、ランチのあとに旅行代理店へ私を連行した。毎日顔を合わせる先輩に「やっぱ無理です!」など言えるわけも、隙もなかった。夏休みを同時に取得できるか分からないうちに、私たちは3泊5日のロンドン旅行を契約したのだった。もちろん、ホテルの部屋は別々だ。
鈴木さんは一緒に行く予定の人が行けなくなり、たまたま、私のメッセージを発見したらしい。「一人はつまんないしさー!」ということだそうだ。
ちなみに彼のハリポタ好きは本当で、ランチでは想定外に小説や映画の内容で盛り上がってしまった。そのせいで契約してしまったのかもしれない。
旅程を組むために、鈴木さんとはその後も休日に何度か会った。
「きょんきょんさあ、職場だと超静かなの何?ほんとはこんな面白いんじゃん!」
「鈴木さんこそ、意外と知的なんですね~」
「いやいや、俺、新聞読んでるから」
次第にちょっとした軽口も言えるようになったし、私と会っている時は自然に明るい鈴木さんだった。職場での妙なハイテンションは仕事用なのかもしれない。
さすが地元の人気店。家族連れ、友人連れ、観光客でにぎわっている。そんな彼らを横目に、約束の時間の10分前にお店の前に着いた私は、どんな人が来るやらとドキドキしながら待っていた。
約束まであと2分。それらしい人はまだ見当たらない。そこへ誰かが私に声をかけてきた。
「赤木さんじゃーん!」
鈴木さんだった。思わず一歩後ずさった。
「なにー?まちあわせー?」
「は、はい。鈴木さんは」
「俺も待ち合わせてんの。赤いスカーフ巻いた人と」
その一言に心臓が飛び跳ね、思わずスカーフを触った。
鈴木さんは私の首元に視線を移した。
「もしや…きょんきょん?」
アプリでの私の名前だ。赤木京香からとった安直なHN。
「ナツさん…」
「きょんきょん!!」
アプリの利用者が少ないとはいえ、近所過ぎるにもほどがある出会いだった。
ロンドン旅行はとんとん拍子に決まってしまった。
鈴木さんは初手から行く気満々で、ランチのあとに旅行代理店へ私を連行した。毎日顔を合わせる先輩に「やっぱ無理です!」など言えるわけも、隙もなかった。夏休みを同時に取得できるか分からないうちに、私たちは3泊5日のロンドン旅行を契約したのだった。もちろん、ホテルの部屋は別々だ。
鈴木さんは一緒に行く予定の人が行けなくなり、たまたま、私のメッセージを発見したらしい。「一人はつまんないしさー!」ということだそうだ。
ちなみに彼のハリポタ好きは本当で、ランチでは想定外に小説や映画の内容で盛り上がってしまった。そのせいで契約してしまったのかもしれない。
旅程を組むために、鈴木さんとはその後も休日に何度か会った。
「きょんきょんさあ、職場だと超静かなの何?ほんとはこんな面白いんじゃん!」
「鈴木さんこそ、意外と知的なんですね~」
「いやいや、俺、新聞読んでるから」
次第にちょっとした軽口も言えるようになったし、私と会っている時は自然に明るい鈴木さんだった。職場での妙なハイテンションは仕事用なのかもしれない。