時は過ぎ去り、止まることを知らない。
あれから数年、高校生だった真央と玲央も今年二十歳になった。

今や(ちまた)で二人を知らない人はいない。
よく当たるという噂の玲央の占い。
お客さんにとことん親身に思いやりを持って接する真央。
これだけで話題にならない筈がない。
和風と洋風の入り交じった、近代日本文化を思わせるような、古めかしく小枠な木造建築の建物。
占いの館『アラタカ』

カランコロン。
心地良いベルが鳴る。
「こんにちは、いらっしゃいませ、お客様」
礼装に身を包んだ真央が出迎える。
「音が出る電子機器は占術の妨げになる為、マナーモードにするか電源を切って下さい。また、館内は禁煙となっておりますので、お煙草はお止め下さい」
扉を開くとそこはまるで異世界だ。静かで薄暗い館内にはアクセサリーに水晶玉、お守り、何故か一際大きなダルマが鎮座していたりと、様々な文化が一緒くたになったような品が所狭しと並んでいる。
「いらっしゃい、何でも好きなやつを見て行きな。占いなら先に占うか?」
奥から姿を現した玲央は黒いローブを纏い、フードを深々と被る姿には、普段カジュアルな服装とは違ったオーラが漂う。
どちらも礼装に身を包んでいるので、何処か神々しい雰囲気を放っていた。
この世のどれが現実で、どれが幻想か、真央は未だ分からないが、自分達の能力が誰かの助けになれば良いと思った。
道は長く、何処までも続いている。
寄り道してもつまずいても、何時かきっと元通りの運命の箱に収まるのだから。