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 針葉樹が疎らに生える、見渡す限りの平原。彫りの深い顔立ちの兵士たちが、地面の間に掘った細長い穴に身を潜めていた。銃撃から身を守るための、塹壕である。
 皆、両手には短機関銃を持ち、動作は慎重、面持ちは緊張を湛えている。全速で走れば十秒ほどの場所では、敵側の塹壕が延々と続いていた。
 さぁっと、穏やかに風が吹いた。刹那、両軍の塹壕の中間に、百人以上の男女が姿を現した。白い道着に黒帯の者や、上下一体で袖なしのぴったりとした服を纏う者。身なりは種々雑多だが、身体つきは一様に頑強である。
 わずかな逡巡の後に、バン! 一人の兵士が発砲した。予想外の事態とはいえ、誰何の声掛けも降伏勧告もなし。愚挙と評されても仕方のない行動である。
 空気を切り裂いた銃弾は、謎の集団の一人、上半身を完全に曝した男へと向かう。
 男はすうっと顎の高さで、肉厚の赤グローブに包まれた両手を前後に構えた。顔面に飛来する弾丸へと、引いた側の手をまっすぐに振り抜く。
 弾丸がグローブに当たった瞬間、衝突点が青に眩く輝いた。勢いはそのままに、弾丸は斜め上方へと弾き返された。
 男はなんら傷を負った様子はない。撃った兵士は銃を下ろし、唖然とした顔を男に向けている。
 間髪を入れずに、謎の男女が両軍へと進行を始めた。走る速度は信じられないほど速く、地面を滑るかのようである。悠々と空中を闊歩する者まで見受けられた。
 先頭の赤グローブの男が、塹壕の中に降り立った。慌てふためいた兵士は銃撃をした。だが、男は首だけの動きで躱した。
 男はすぐさま、下方へと右拳を持っていく。兵士は反応ができず、男のアッパーをまともに食らって小さく吹っ飛んだ。