クゥン君が、姿を消した。
今まで、風呂と就寝の時間以外は片時も離れることがなかったクゥン君が、半日もの間、私のそばから離れたのだ。
こ、これはフラれたのかなー……。
◇ ◆ ◇ ◆
「おはようございます、女神様」翌朝、クゥン君は普通に現れた。「昨日は申し訳ございませんでした」
「ダ、ダイジョウブダヨ」
頭を下げるクゥン君に対し、私はギクシャクしてしまう。
「それで、実は女神様にご報告したいことがございまして」
「ナ、ナニカナ?」
「紹介します」
クゥン君が、隣に佇む少女――キュンキュンちゃんを示して、
「オレの妻・キュンキュンです」
「……………………………………………………………………………………はい?」
「実は昨晩、式を上げまして。キュンキュンとは婚約関係にあったのですが、これからも女神様の右腕としてお仕えし続けるにあたり、身を固めるべきだと親からも言われていたのです」
私がこの世界に来た直後の話。
ゴブリン軍団に襲われているバルルワ村に、加勢に行きたがっていたクゥン君。
キュンキュンちゃんがゴブリンに襲われているところを見て、我を忘れたクゥン君。
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!? あれ、伏線だったのぉおおおおおお!?」
私は卒倒した。
◇ ◆ ◇ ◆
【Side キュンキュン】
「本当に良かったの?」
白目を剥き、泡を食いながらも執務を行っている女神様を眺めながら、私はクゥン兄に話しかける。
違った。クゥン兄はもう、私の旦那さんなんだった。
ここは、女神様の執務室。
私たちの結婚報告で卒倒した女神様だったが、卒倒したままむくりと立ち上がり、ものすごい勢いで執務に励みはじめたんだよね。
正直ちょっと怖いけど、女神様ならまぁ、こういうことも可能なのだろう。
「何がだ?」
女神様の背後に侍りながら、クゥンが聞き返してくる。
「クゥンってば本当は――」
「昨晩、誓っただろ。オレはお前を幸せにするって」
「っ――うん!」
私がクゥンの許嫁だったというのは、本当だ。
この村では、酒の席で自分たちの子供の婚約を決めたりする。
獣人差別の激しいこの地で、村の子供が人間と結婚することはあり得ないので、村の子供同士で結婚することになる。
となると、小さなころから、自然と組み合わせが出来上がってくるものなのだ。
酒での席の婚約は、追認作業のようなもの。
私は物心ついたころからずっとクゥンに面倒を見てもらってきて、クゥンのことがずっとずっとずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと好きだった。
だから、クゥンと結婚できたのは嬉しい。
それがたとえ、クゥンが女神様に対する気持ちを諦めるための手段だったのだとしても。
いや、違うな。
女神様のこのご様子を見るに、どうもこの2人、両想いだったっぽい。
私との結婚は、女神様にクゥンを諦めさせるための手段でもあったわけか。
自分の結婚を他人の恋の言い訳に使われて、もやもやしないと言えばウソになる。
けどまぁ、お陰で好きな人と結婚できたんだから良しとしよう。
今まで、風呂と就寝の時間以外は片時も離れることがなかったクゥン君が、半日もの間、私のそばから離れたのだ。
こ、これはフラれたのかなー……。
◇ ◆ ◇ ◆
「おはようございます、女神様」翌朝、クゥン君は普通に現れた。「昨日は申し訳ございませんでした」
「ダ、ダイジョウブダヨ」
頭を下げるクゥン君に対し、私はギクシャクしてしまう。
「それで、実は女神様にご報告したいことがございまして」
「ナ、ナニカナ?」
「紹介します」
クゥン君が、隣に佇む少女――キュンキュンちゃんを示して、
「オレの妻・キュンキュンです」
「……………………………………………………………………………………はい?」
「実は昨晩、式を上げまして。キュンキュンとは婚約関係にあったのですが、これからも女神様の右腕としてお仕えし続けるにあたり、身を固めるべきだと親からも言われていたのです」
私がこの世界に来た直後の話。
ゴブリン軍団に襲われているバルルワ村に、加勢に行きたがっていたクゥン君。
キュンキュンちゃんがゴブリンに襲われているところを見て、我を忘れたクゥン君。
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!? あれ、伏線だったのぉおおおおおお!?」
私は卒倒した。
◇ ◆ ◇ ◆
【Side キュンキュン】
「本当に良かったの?」
白目を剥き、泡を食いながらも執務を行っている女神様を眺めながら、私はクゥン兄に話しかける。
違った。クゥン兄はもう、私の旦那さんなんだった。
ここは、女神様の執務室。
私たちの結婚報告で卒倒した女神様だったが、卒倒したままむくりと立ち上がり、ものすごい勢いで執務に励みはじめたんだよね。
正直ちょっと怖いけど、女神様ならまぁ、こういうことも可能なのだろう。
「何がだ?」
女神様の背後に侍りながら、クゥンが聞き返してくる。
「クゥンってば本当は――」
「昨晩、誓っただろ。オレはお前を幸せにするって」
「っ――うん!」
私がクゥンの許嫁だったというのは、本当だ。
この村では、酒の席で自分たちの子供の婚約を決めたりする。
獣人差別の激しいこの地で、村の子供が人間と結婚することはあり得ないので、村の子供同士で結婚することになる。
となると、小さなころから、自然と組み合わせが出来上がってくるものなのだ。
酒での席の婚約は、追認作業のようなもの。
私は物心ついたころからずっとクゥンに面倒を見てもらってきて、クゥンのことがずっとずっとずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと好きだった。
だから、クゥンと結婚できたのは嬉しい。
それがたとえ、クゥンが女神様に対する気持ちを諦めるための手段だったのだとしても。
いや、違うな。
女神様のこのご様子を見るに、どうもこの2人、両想いだったっぽい。
私との結婚は、女神様にクゥンを諦めさせるための手段でもあったわけか。
自分の結婚を他人の恋の言い訳に使われて、もやもやしないと言えばウソになる。
けどまぁ、お陰で好きな人と結婚できたんだから良しとしよう。