ダイニングに行くと、こじんまりとしたテーブルに、朝食が並べられていた。

 今日は和食のようだ。

「ほらほら、早く座って! 私、おなか空いた」

「……うん」

 いつの間にか、晨と真白の座る席が決まっている。

 晨は真白の正面に座ると、目の前に並んだ食事に視線を落とした。

 バラバラの食器に盛り付けられた料理は、特別なものではない。

 どちらかというと、素朴で、まるでおばあちゃんちの朝食のようだ。

「いただきます!」

 真白の元気な声に、晨はハッと顔を上げた。

 手を合わせていた真白が首を傾げる。

「どうかした?」

「いや、別に」

 晨の違和感は日に日に増している。

 真白は明るく、元気いっぱいで、年上のはずの晨を│揶揄《からか》うことを楽しんでいるし、張り切って家事をこなしている。

 何かを悩んでいる様子も、暗い表情も見せない。

 それなのに、『殺してほしい』という言葉が出てきたのはどうしてだろうか。

 もしかしたら、単なる気まぐれ。

 もっと言うなら、ただ人を揶揄って遊んでいただけなのかもしれない。

 そう言われる方が納得できる。

 でも、真白の環境は普通ではなさそうだ。

 このちぐはぐした印象が晨を混乱させる。