その後、私たちは朝まで愛し合った。
 何かものすごく特別なことができるわけではない。
 いつもと何ら変わりなかった。
 砂浜に寝転んで星空を見た。
 私たちは手を繋いでいた。
 並んで海を見た。
 その時、初めてキスをした。
 小さな違いや関係の変化が私たちを幸せにした。
 好きだと、大好きだと、愛してると何度も何度も言い合った。
  
 たった一晩。私たちは一生分の恋をした。
  
 そして、朝が来た。
 抱きしめているはずなのに、段々わからなくなっていく清太郎の感覚に、私はまた泣きそうになった。
 でも、我慢した。
 泣いてはいけないと思った。
 笑顔でお別れがしたかった。
 清太郎は微笑んでいた。
 その笑顔は儚げではあったけど、もう寂しそうではなかった。
「満歌、出会えてよかった。幸せだった。ありがとう」
「私も、すごく幸せ」
「満歌、愛してる」
「私も愛してるよ、清太郎」
 それが、別れの合図だった。
 清太郎はこの世界から完全に消えてしまった。
 
 私は涙が止まらなかった。
 もうすでに、清太郎に会いたかった。
 でも、不思議と以前のような喪失感はなかった。
 清太郎のおかげで私は前へ進むことができる。
 今度こそ、約束を果たすことができそうだった。
 感謝の気持ちでいっぱいだった。
 壊れかけていた体はすっかり良くなっていて何でもできる気がした。
 こんなに気持ちの良い朝は久しぶりだった。
  
「おはよう。清太郎」

 また今日も満歌の一日が始まった。