The Sun-Gild Wing ――神話として語り継がれる超古代文明のテクノロジー

「ソールを探しに行くぞ」
 ペルセウスは詰め所で言った。連絡が来なくなって2週間になる。行方不明者の捜索という名目で行くことにしたのだ。
「それは軍の仕事ではないだろう。向こうの警察にやってもらうしかない」
 冷静にポセイドンが釘を刺した。
「やると思うか? 頼んでも流されるのがオチだ。それならプライベートを装っていく」
「1人で行くのか? 俺も……」
「私も行くわ」
「ここにいる皆が行くのか? アルカディアの警備はどうする?」
 ポセイドンを除く全員が行きそうな勢いだ。
「メンバーを選抜した方がいい。ペルセウスとアルテミス。アーレスと他のセイレーン部隊、私は残ろう」
 陸海空の警備のバランスを考えた采配である。
「ハーデスはどうする?」
「行けんことないが、俺が行って役に立つのか?」
 ハーデスは自信がなさそうだった。戦闘ならともかく諜報活動の類は向いていないらしい。
「海軍から小型戦艦を出そう。シバルバー近海で演習するという名目でな」
 こうしてソール捜索隊が結成された。

「ん? これ何?」
 ソールはイシュタムの枕元にある物体に気がついた。黒い箱からひもが伸び、その先に吸盤のようなものが付いている。
「これ、今研究している装置なんだ。カウィール・シナプス装置って名付けたの」
 人間の脳に残っている記憶を呼び起こすものらしい。人間は成長するにつれて3歳までの記憶をなくしてしまうというのが通説である。が、イシュタムによると脳内の発火現象を分析したところ記憶をなくすのではなく「奥にしまいこむ」のではないかとの仮説にいきついた。そのしまいこんだ記憶を呼び起こせないかというものなのだ。
 ちなみに、カウィールとはマヤ神話の雷の神だ。シナプスと付いているから、脳内の発火現象を雷に例えたものというわけだ。
「実験してみたのか?」
「ううん、最近できたばかりだから」
「自分で試さないのか?」
 するとイシュタムはうつむいてしまった。
「私、ガラスのハートだから怖いの…」
 ピンと来なかったが、やがて繊細な性格だということに気付いた。探究心が高じて開発したものの使うことには躊躇しているようだな――
「ふーん、じゃあ俺が使っていいか?」
「え?」
 イシュタムは目を見開いた。
「大丈夫? 怖くないの?」
「知らん。けど、このまま捕虜状態なのも退屈だしやってみるさ」
 何が起こるか分からないわよ、という声をまともに聞かず、ソールは吸盤を頭に付けて「じゃ、おやすみ」とベッドに転がった。そのまま眠ってしまうまで5分とかからなかった。

――キニチ・アハウ、システムはどうなっている?
――まだまだ、実用には遠いな。
(ん? 夢か?)
――そういや、お前の赤ん坊が託児室で泣いていたぞ。行ってやった方がいいって。
――先に言えよそれを。
はっきりしない意識で会話の主の顔を見た。ひげがもしゃもしゃの男だった。
(何だか懐かしい……)
 刹那、場面が急に変わって騒がしくなった。
――キニチ、逃げろ!
――ばかいえヘリオス、お前こそ逃げろ!!
――意固地になるな! てめえが死んだら赤ん坊はどうなる!!
 キニチという男は、もう一人の男――ヘリオスに赤子を押しつけた。
――だったらお前がこいつを連れて逃げろ!!
 キニチは足でヘリオスを蹴って逃がした。
――キニチ!!!
――ぐあああああああああああああ!!!
「うわあああああっ!!!!!」
 ソールはベッドから跳ね起きた。
「ど、どうしたの?」
 隣のベッドで寝ていたイシュタムも目を覚ました。
「あー胸くそ悪い夢見た」
 全身にびっしょり汗をかいている。体中の血管の血が逆流しそうだった。
「この装置のせいか?」
 イシュタムは記憶を呼び起こすと言ったが、そうだとするとあの夢はソールの記憶ということか……?
「ん?」
 ソールは自分の首を見た。チョーカーがちぎれて転がっている。
「やった、これで自由に動ける!」
「うそ、そんな……」
 イシュタムは信じられないという顔だ。
「あまりに脳が激しく揺さぶられたから、チョーカーが耐えきれなくなったんじゃないのか? いずれにしてもチャンスだ」
 ソールは脱出するためにすぐさま外に出ようとしたが……
「そうだ、いいことを考えたぜ」
 悪どいいたずらを思いついたような不敵な笑みを浮かべた。

翌日、フン・カメーがやってきた。
「どうだ、われわれに協力する気になったか?」
 ソールは立ち上がって手を挙げた。降参のポーズだ。
「分かったよ、あんたらには叶わないさ」
「ふん、分かったならいいんだよ。さあついて来い。ネオフラカンに君の技術を組み込んでやろう。光栄に思えよ」
 相手を見下したような笑みを浮かべ、フン・カメーは出口に向き直った。その瞬間、ソールは飛びかかって渾身の力で後頭部を殴りつけた。
「ぐあっ!!」
 フン・カメーはドカッと倒れ込んだ。
「何をする!! こんなことをしてただで済むと思っているのか!?」
 フン・カメーは持っていたチョーカーのリモコンを押した。
「え?」
 どうしたことか電流が流れない。
「このチョーカーはただのチョーカーだ」
 ソールは自分の首に巻いていたチョーカー――ダミーのチョーカーを放り捨て、再び殴りかかった。その拳にはあり合わせの金属で作ったメリケンサックが握られている。
「ぐえっ!!」
 頬の次は腹、あごと殴りつけた。
 軍人ほどではないが実はソールは多少荒事の心得がある。アレクサンドリアにいた頃は重い機器などを運ぶことも多かったため、平均男性より腕力があるのだ。
 それに対し、フン・カメーは自動化に頼った生活を送って肉体が衰えているはずだ。肉弾戦なら自分に分があると踏んだのだ。
 もっともソールは争い事が好きではない。が、自分に対してこの仕打ちをしたフン・カメーには数倍にして報復しなければ気が済まなかった。
 やがてフン・カメーは目をまわして気を失った。
「イシュタム、もういいぞ」
 イシュタムはその合図で自分のチョーカーを外した。ソールは、意外に簡単に外れた電流チョーカーを見てイシュタムのも外れると考えた。思った通り、繊維の薄い箇所があったので上手く解体できた。
「ソール、何もここまでやらなくても……」
「俺は人は殺さない主義だが、やられたことは殺さない程度にやりかえす主義なんだよ」
 そう言うと今度はフン・カメーの手首足首を縛って口を猿ぐつわにした。そして呆れるイシュタムの手を引いて部屋を脱出した。
ネオフラカン研究所は緊急事態態勢となって右往左往していた。フン・カメーが意識を失う怪我をし、外国の研究者が脱走したのである。もしかしたら極秘情報を持って行かれたかもしれないと緊張が走った。
 当の脱走した2人の研究者――ソールとイシュタムは、とある一室の天井裏に隠れていた。先程、下の部屋に人が来たが誰もいないということで行ってしまった。
「普通、人の気配とか探らないのかね」
 ソールは小型のコンピューターを操りながら嘲笑混じりに呟いた。自動運転の機械任せに生きてきたから人間の直感的な感覚が鈍っているんだな――
「確かに機械づけの生活をしていると右脳が鈍くなりやすいからね」
 イシュタムも同意する。
「それも研究の成果?」
「ううん、一般論と自分の体験よ」
 曰く、研究室に閉じこもりがちになってから人の気配を感じにくくなったことがあるという。やっぱり自動機械に頼りすぎるといろいろ弊害が出るということか。
(そういえばシバルバーに来るとき乗った飛行機も緊急時に対応できていなかったな)
 機長が緊急事態の際に操作を誤っていた。今思い出すだけでもひやっとする。
「もしかしたらその弱点を突いていけば脱出しやすいかもな」
「ところでさっきから何しているの?」
「この研究所の中央コンピューターにハッキングしてここの設計図をコピーしたんだ。要は地図代わりだ」
 イシュタムがのぞき込むと画面に研究所の設計図が映し出されていた。
「普通の地図なら持っているけど?」
「誰もが入手できる地図じゃすぐ追っ手が来るさ。そうじゃなくて壁の中にある空洞とかをかいくぐっていけば簡単には追いつけないだろう」
 そう言い切るとソールは腰を上げた。
「行くぞ、ここから脱出する」

 その頃、アルカディアを出発したばかりのペルセウスは機上で頭を抱えていた。
「どうしたの?」
 アルテミスが尋ねると
「ソールのやつ、また無茶していやがる……」
 つい先程、ソールからメールがあったのだ。かいつまんで言うとどうやら軟禁されていたらしいが研究所の責任者をボコボコにした挙げ句、一緒に軟禁されていた女性と脱走劇の真っ最中とのことだ。
 そのような内容のメモをアルテミスに見せた。会話をすると誰に聞かれるか分からないためだ。
「どうするの?」
 アルテミスが引きつった顔で聞いた。なるようになるさ、と肩をすくめてペルセウスはそっぽを向いた。
 二人はプライベートを装ってシバルバーへの飛行機に乗り込んだ。が実は、海上では同時にペガサスとセイレーン、そしてフェニックスを艦載した小型の軍艦が航行している。軍事行動に出るとシバルバーとの関係に軋轢が生じるかもしれないが、ここまできなくさい状態となると有事もあり得る。
「小さい船を出してくれるとはポセイドンの機転に感謝しないとなあ」
 そんなことをつぶやきながらペルセウスはコンピューターでソールにメールを返信した。
―今そちらに向かっている。シバルバー第一空港に着いたらまた連絡する。無茶はくれぐれもしないように。
 送った直後、あいつが果たしてどれだけ聞くだろうかとため息をついた。

「まだ見つからないのか!!」
 フン・カメーは激昂しながら部下に詰め寄った。その顔は大きく腫れ上がり頭にはたんこぶがいくつもできている。
「申し訳ございません、全力で探しているのですが……」
「言い訳なんか聞きたくない!!」
 バンッと激しくテーブルを叩いた。
「兄貴、相当やられたようだね」
 ヴクブ・カメーが冷静に呟く。
「これだけ探して見つからないとなるともしかしたら通路でなく道なき道をつたっているかもしれないな」
「どういうことだ?」
「天井裏とか壁の中とかをすり抜けているってことだ。そうなると人間の目では見つけにくいな」
 天を仰ぎつつヴクブ・カメーがある提案した。
「地獄の番人たちを使うか」
「あ? あれはまだ研究途中だぞ」
「いや、ほとんど整備まで終わっている。このままだとどのみち取り逃がすぞ。ちょうどいい実験にもなるさ」
 そう冷笑を浮かべながら、ヴクブ・カメーは近くにいた研究員に指示を出した。のちのマヤ神話で、地獄の住人として語り継がれていく兵器たちを放ったのだ。
「ねえ、やっぱり普通に廊下を行った方がよくない?」
 天井裏をつたいながらイシュタムがソールの顔をのぞき込むように尋ねた。
「大丈夫だって。俺を信じろ」
 自信満々に歩を進めるソール。この自信は一体どこから来るのかと、イシュタムは苦笑いした。
「いいなあ、私もあなたみたいに根拠のない自信が欲しい。自己肯定感が強かったらなあ……」
「何だよいきなり」
 ほめているのか、けなしているのか……
「私が脳科学の研究を始めたきっかけは自分の自己肯定感がなかったことなの」
 イシュタムの母親は彼女を産むときに家族や親戚に反対されたらしい。40代半ばの出産で母体に負担がかかる上に世間体が悪かったというのが理由だ。それを押し切って出産すると多くの人間は大して祝福せず無視したり子供――イシュタムを蔑んだりしたとのことだ。そこで周囲から認められたいがために大人たちの顔色をうかがうようになってしまったらしい。
「大人になっても心のどこかで人間を信頼できずにいるような気がするの」
「そんな自分を変えるために脳科学を研究し始めたのか?」
「心理学って道もあったんだけど、私は脳科学の方が合っていると思って」
 個人の性格と脳科学がどう結びつくのかソールには見当がつかなかったが、イシュタムは話を続ける。
「ソール、サイコパスって知っている?」
 最近読んだ科学誌に載っていたような気がするなあとソールは記憶をたどった。確か平気で人殺しなどの残虐な行為をする人間の脳に焦点を当てた特集を組んでいた。
 サイコパスは他者の感情に共感できないなど脳に一種の障がいがあると定義され、研究が進められている。
「まさか自らサイコパスになるってわけじゃないよな?」
「そのまさかよ。カウィール・シナプスはそれも可能になるのよ」
「…俺は反対だね。そんな研究」
「え?」
 イシュタムはソールの顔を見た。先ほどまでの飄々とした雰囲気が消え目つきが鋭くなっている。
「アポロンが言っていた。〝技術はナイフ〟だって。ナイフは食べ物を切ったりロープを切ったりするのに使えて生活の助けになるけど人を殺傷することもできる。だが、ナイフ自体が悪いわけじゃない。使う人間の心によって善にも悪にもなる。あんたの研究は技術的には優れているが我欲を満たすために使っていないか?」
 イシュタムは言葉を失った。
「もっと他者のためになる研究をした方…が!?」
 ソールが最後まで言い切らないうちに、突然床(正確には天井)が崩れ、二人とも真下の部屋に落下してしたたかに尻を打った。
「ったたた…」
 ハッと顔を見上げると目の前には奇妙な形をした人形…ロボットが立っていた。
「なんだこいつら…?」
 すると突然、2体のロボットは光線を発射した。とっさによけたが命中した平な床が不格好ないぼ状になっている。
「な、なんだいきなり!!」
「地獄の番人、シキリパットとクマチュキック!?」
「あ?」
 青ざめた顔でイシュタムが叫んだ。
「こいつら、脱走者や潜入者を抹殺するためのロボットよ。この光線、確か…」
 再びその光線が発射され、壁がいぼ状になった。
「鉱物の原子の配列を強引に変えるの!」
「おいおい、ここはそんな物騒なものを作っているのか!?」
 人間の体内には鉄分をはじめカルシウムなどの鉱物がある。その配列を強引に変えられたらどうなるか分かったものではない。
 標的はソールとイシュタムにロックオンされているらしく、次々と光線を発射してくる。
「ちょ、何か倒す方法はないのかよ!?」
「そんなこと言われても……」
 2人ともよけるのが精一杯だ。
「そうだイシュタム、あいつらの間に一列に並べ!!」
「え!?」
「いいから早く!!」
 ソールとイシュタムが2体の間に一列に並んだ。シキリパットとクマチュキックは、二人に向き直り光線を発射した。
「今だ、しゃがめ!!」
 すると2体が発射した光線は2人に当たらず、ロボットの相方に命中した。同士討ちに成功したのだ。
「よっしゃ!!」
 2体のロボットは不具合を起こし、機能を停止させてその場に崩れ落ちた。
「全身が鉱物のロボットなら生身の人間よりも壊れやすいと思った」
 イシュタムに手を差し伸べて立ち上がらせた。肩が小刻みに震えている。
「大丈夫か?」
 怖かったのかと思ったが、イシュタムの口から驚く事実が出た。
「どうしよう、こんなのがあと8体もいるのに…」
「なんだって!?」
 ペルセウスとアルテミスはシバルバー第一空港に到着後、すぐにレンタカーを借りて行動を開始した。
「大都会だね、シバルバーって」
 アルテミスが感心したように呟いた。
「アルテミスは初めて来たんだったな。いろいろなものが自動化された都市なんだよ」
 ソールはシバルバーの最先端技術を学ぶために研修に向かったのだ。それがまさかこんなことになるとは……。
「じゃあ、ソール奪還のための……」
 と言いかけてペルセウスは言葉を切り、突然車を停めて運転席下を探り始めた。
「何、どうしたの?」
「あった」
 何かというと黒い小型の機械だ。コードが車の下まで伸びていることからどうやら車体と一体になっているらしい。
 ペルセウスはメモに「盗聴器だ」と書いた。
「え!?」
 声をあげるアルテミスを睨み「しっ」と人差し指を口に当てた。以後、メモでやりとりがされた。
―盗聴器だけじゃない。恐らく、車内のどこかに監視カメラが隠されている。犯罪者がレンタカーを借りたときの証拠になるように仕組まれているのだろう。
―どうするの、これから?
 不安げなアルテミスをよそにペルセウスは自信に満ちた顔で筆を走らせた。
―ソールが研究所から脱出するとして、空港もしくは海際までの動線を確保する。合流次第、機体に乗り込んで脱出する。
 その最後の一行に「緊急事態もありうる」と加えた。アルテミスはそれで「交戦もありうる」と解釈した。

「シキリパットとクマチュキックの反応が消えました。どうやら撃破されたようです」
「なんだって!?」
 フン・カメーの荒々しい声が部屋にこだました。
「思ったよりやるようだね」
 ヴクブ・カメーは相変わらず冷笑を浮かべている。
「何のんきにかまえているんだよ! せっかく開発したロボットがやられたんだぞ!」
 弟に詰め寄るフン・カメー。しかし、ヴクブ・カメーはさらに口をゆがませた。
「何言っているんだい、兄さん。シキリパットとクマチュキックに弱点があるとこれではっきりした。大量生産したところで使い物にならなかったとわかってよかったじゃないか」
「そりゃそうだが……」
「まあ、地獄の番人はあと8体あるから大船にでも乗っておこうよ」

「ふーん、犯罪者捜索兼抹殺ロボットねえ」
 ソールは壁に背を向けながら言った。あの2体と交戦したことで居場所はばれてしまったので開き直って廊下を歩くことにしたのだ。
「犯罪者と一緒にされるとはつくづく手厚い扱いだな」
 皮肉たっぷりに呟きながらソールはコンピュータの画面をのぞいた。
「おお、ありがたいことに仲間の救援が来てくれるようだ」
「ほんと?」
「ただし、研究所からは自力で脱出しろと」
 研究所自体が厳戒態勢になっているため部外者が入れないらしい。
「人間の追っ手が来ないところを見ると、その地獄の番人とやらを刺客に差し向けるんだろうな」
 そのとき風が吹いた。
「ん? 密閉されたはずの研究所に風が吹くとは?」
「ソール、あそこ!!」
 イシュタムが指さした先には宙に浮く2体のロボットがいた。扇風機と水道の蛇口のようなデザインをしている。
「アハルプーとアハルガナー…こいつら確か」
 扇風機はファンを回して風を水道は蛇口に水蒸気を集めて水を精製し始めた。
「水と風を起こすロボットよ!!」
小型ながらも強烈な雨の竜巻がソールたちに襲いかかった。
「うおっ!」
 何とかよけると竜巻は壁に当たり激しく四散した。飛び散った水しぶきの音がすさまじい。
「風と水か…」
 ソールはあれこれと打開策を考え始めた。風は個体や液体を吹き飛ばすが風そのものには殺傷力はない。台風や竜巻は風にあおられた物や水が被害をもたらし、砂嵐も風に巻き上げられた砂が目に入ったとき目を痛めるのだ。
 水は少量であれば問題ないが大量なら重さも増してぺしゃんこにされる。あるいは凍らせれば刃物になりうるし、水蒸気になれば視界を遮る幕となる。
(先に水を封じるか)
 そう判断するやソールは近くにあった電気のコンセントを強引に壊した。
「ちょっと、何しているの!?」
 イシュタムが叫ぶのも構わずそこから導火線を引っこ抜くと、それをまるめて蛇口ロボ…アハルプーに投げつけた。
 ちょうど水を発射した瞬間、その導火線の塊が命中してショートを起こして爆発した。
「よしっ!!」
 さらにソールはアハルプーの残骸に駆け寄って蹴り飛ばし、相方のアハルガナーにぶつけた。するとショートの巻き添えをくらってこれまた爆発を起こした。
「すご…」
 イシュタムは呆然とした。
「どんな技術でも長所と短所がある。これもアポロンから教わったことだ」
 ソールは地獄の番人を次々と撃破していった。
 次に現れたチャミアバックとチャミアホロムは、微生物などを放って人体を分解するロボットだった。これは壁を剥がして盾を作り、近づいていってメリケンサックの拳で破壊した。
 さらに次に出てきたアハルメスとアハルトコブは、植物や動物の毒を入れた注射針を装備しソールとイシュタムに突進してきた。が、突進するしかできないこの2体をソールはあっさりかわして針を折った。折れた拍子に2体ともバランスを崩して倒れた。
「こんな簡単に倒せるの?」
 と呆れるイシュタム。
「試作品なんだろ? どうせフン・カメーが自分の力を過信してろくに検証もしなかったんだろうよ」
 まぬけで傲慢な技術者だから助かったと監視カメラに向って言い捨てた。

「あの野郎!!」
 10体のうち8体を撃破された上、監視カメラでバカにされたような発言を聞いてフン・カメーは顔を真っ赤にして激昂した。
「やれやれ、結局最後の2体に頼らなきゃいけないか」
 ヴクブ・カメーは最後の番人を差し向けるよう指示しながら、唇をゆがめてこう呟いた。
「イシュタム、君の研究の成果がこれで分かるね」

「さて、後は2体だけだな。研究所の出口ももうすぐだし」
 のんきなソールと違い、イシュタムは浮かない顔をしている。
「最後の2体、シックとパタンって言うんだけど戦わない方がいいわ。確実に負ける」
「なんでだ?」
「私の技術が使われているの」
 それを聞くとさすがにソールも表情をこわばらせた。
「脳科学のか?」
 無言でうなずくイシュタム、
「あいつらに無理矢理作らされたのか」
 返事がない。違うのか?
「まさか、自分で作った…?」
 やはり返事がない。どうやら図星のようだ。
「あんたは脳科学のオタクなんだな。技術が使われるとなると結局その使い途までは頭が回らない」
 ここにペルセウスがいたらペガサスの砲身を勝手に改造しようとしたお前が言うかと、突っ込みが入るだろう。自分のことは棚に上げた自覚もなくソールは目を廊下の先にやった。
「音がするな、来るぞ。ちなみにどんな攻撃なんだ?」
「だいたい想像付かない? 脳科学的な攻撃をするとしたら…」
 巨大な目をした怪物のようなロボット2体が現れ、いきなり目から光線を発射した。とっさに避けた2人は床に転げた。
「標的の脳にダメージを与えるのよ!!」
 ソールは冷や汗を流した。これまでは物理攻撃が主だったので、相手の特徴や弱点を突いて撃破できた。が、今度のは人間の精神に干渉する攻撃だ。しかもはね返したとしても敵はロボットなのでダメージを受けない。
「動きは鈍いようだな」
 ソールは、シックとパタンが定位置から動いていないことに気付いた。どうやら攻撃する部分が大きいため、機動性がほとんどないようだ。
「こうなったら…!」
 ソールはそう言うと、持っていた小型コンピュータをシックに向って投げつけた。発射された光線がコンピュータの液晶で遮断された。
「今だ!」
 ソールはシックの間合いに入りメリケンサックで目の部分を破壊した。
「もう一丁!」
 パタンの目がソールに向き直り、拳と光線がクロスカウンターのように交わってお互いを直撃した。
「ソール!!」
 パタンは機能停止した。が、ソールもその場に崩れ落ちた。
――キニチ・アハウ、システムはどうなっている?
――まだまだ実用には遠いな。
――そういやお前の赤ん坊が託児室で泣いていたぞ。行ってやった方がいいって。
――先に言えよそれを。

――…元気か? ありゃりゃ、おむつが濡れているな。替えないとな。
――あぶぶぶ。
――気持ち悪かったな。もう大丈夫だ。
――子煩悩だな、キニチ。
――そりゃあ、妻が命と引き換えに遺してくれた息子だ。大事に育てないとな。

――フン・カメー、ヴクブ・カメー。どういうことだ? 太陽システムはまだ完成していないぞ? それなのにエネルギーシステムに導入するなんて。
――大丈夫。このフン・カメーが手を貸してやるんだから、絶対うまくいくさ。
――その自信はどこから来るんだ?
――まあ、そういうわけで太陽システムの設計図を見せてくれるか?
――断る。
――何だと
――やはりまだ見せられる状態じゃない。もう少し待ってくれ。

――まずい、キニチ! フン・カメーの奴、力ずくで設計図を奪おうとしているぞ!!
――ヘリオス! この研究所から脱出するぞ!! 
――おい、赤ん坊抱えて大丈夫か!?
――やるしかないだろ!!

――キニチ、逃げろ!
――ばかいえヘリオス、お前こそ逃げろ!!
――意固地になるな! てめえが死んだら赤ん坊はどうなる!!
 キニチという男は、もう一人の男――ヘリオスに赤子を押しつけた。
――だったらお前がこいつを連れて逃げろ!!
 キニチは足でヘリオスを蹴って逃がした。
――キニチ!!!
――ぐあああああああああああああ!!!
――キニチ!! お前の子…ソールを置いて逝くな!!

 ソールはハッと目を覚ました。
 一体どれくらいの時間が流れたのだろう。そばにはイシュタムがいる。
「ソール、大丈夫?」
「いたた、俺はどのくらい気絶していたんだ?」
「2、3分よ」
 イシュタムに抱きかかえられ、ソールは身を起こした。
「変な夢を見た。この前見たものをより鮮明にした夢だ…」
「それ、きっと夢じゃないわ。脳の底の記憶をひっくり返されたのよ」
 イシュタム曰く、あの2体の光線は脳の底にあった記憶を強引によびおこして精神を攪乱させるものらしい。
「通常の人間ならうつ状態やパニックになるんだけど…あなたは平気なの?」
 心配そうにソールを見つめる。
「何だか知らんが無神経なタイプの人間には効かないのだろう」
 声がする方をハッと見上げた。そこには見慣れた戦友・ペルセウスが立っていた。
「ペルセウス、何でここに?」
「研究所から港までの動線が確保できたから研究所の入り口で待ち伏せしていたんだ。なのにお前は出てこない。お前のコンピュータは壊れたのか連絡がつかない。おまけに中からドンパチやる音が聞こえたから、これはもう踏み込んだ方がいいと判断したのさ」
 ペルセウスはソールに肩を貸してやりイシュタムの方を見た。
「一緒に逃亡中のようだな。俺はこいつを抱えて走る。あなたも走れるか?」
「はい」
「ではいくぞ」
 言うなり2人と抱えられた1人は出口に向かって全力ダッシュした。
 出口を通過するなり、ペルセウスたちは前方に停めてあった車に駆け寄った。後部座席に背負い投げのようにソールを放り込んだ後、ペルセウスとイシュタムもそれぞれ乗り込んだ。放り込まれたソールはドアにしたたかに頭をぶつけ、「あいたっ!」と叫んだ。
「お前…もっと丁重にやってもバチは当たらないぞ」
「時間との勝負、行くよ!」
 アルテミスはアイドリングしていた車のギアをドライブに入れ、ペダルを思いっきり踏んだ。
 シバルバー・ネオフラカン中央研究所は文字通りシバルバーの中央にある。港は当然海辺にあるので一直線に大通りを行けば辿り着く。
 しかし敵もばかではない。大通りには検問を配備して封鎖している。そこでアルテミスは検問に捕まる前に小道に入って隠れた。
「うまくまけるかな」
 その不安は的中した。小道に入って10秒後に追っ手の車がやってきた。
「早!」
「まけるか?」
 アルテミスは小回りの効くことを利点に、どんどん小道に入っていった。すると追っ手は見えなくなった。
「やるな、アルテミス」
「伊達に小型戦闘機のパイロットはやっていないよ」
 しかしすぐに別の追っ手が来た。今度は前からだ。
「ええっ!?」
「バックしろ! 左に横道があったからそこに入るぞ!」
 ペルセウスに言われたとおりバックしてすぐに左折した。
「何であんなすぐに見つかるの!?」
 アルテミスが文句を言う。
「まさか……」
 ソールが後部座席から身を乗り出してナビのモニターを触った。
「この車、位置を探知できるようになっているみたいだ」
「何だって!?」
「盗聴器が仕掛けられているんだろ? 同じ要領で車に仕掛けて監視しているんだよ」
 3人とも真っ青になった。
「作動とめられないの?」
「恐らく車内のようにすぐ見つかるところじゃなく、車体の内部とか入り組んでいるところに仕掛けられているはずだ。そもそも、そんな簡単に見つかるんじゃ隠し探知機にはならないだろ」
 時間があれば解除できる自信はあった。しかし今は敵に追われている状況で、一刻を争うのだ。
「車を捨てて逃げましょう」
 イシュタムが言った。
「は? 港までまだ相当距離があるぞ!」
 ペルセウスが反論した。確かに港まで10kmはある。軍人で健脚の2人はともかく、ずっと軟禁されていたソールたちが走るには酷だった。
「ソールは置き去りにしても別に大丈夫だけど、あなたはそうはいかないでしょ?」
 俺はどうなってもいいのかとアルテミスに突っ込むソールを無視し、イシュタムは続けた。
「大丈夫、ちょうどいいところで今停まっているから」
 イシュタムは全員降車するよう促し、近くの倉庫に入っていった。

 4人が入った倉庫には奇妙なものがあった。薄暗くて見えにくいが巨大な蛇がとぐろを巻いているようだ。
 しかし、イシュタムが灯りを付けるとその正体が分かった。
「これ…戦闘機!?」
 アルテミスが息を飲んだ。その蛇には翼が付いている。全身は白金色でコックピットと思われる当部は青く、目は赤く光っている。
「何で、こんなところに…?」
「軟禁されている間、リモートでロボットを操作して開発したの。コードネームはケツァルコアトル」
「ええ!?」
 イシュタムが言うには、軟禁されている間、この戦闘機の設計図を作り、部品は遠隔で注文したりロボットに調達させたりして集め、ロボットに組み立てさせたらしい。
 ケツァルコアトルとは、アステカ神話に出てくる蛇の神で、マヤ神話にも違う名前で同様の神が出てくる。
「そんなことができるのか……」
 ソールが薄ら笑いを浮かべた。
「お前、メカやテクノロジーを語るときのその笑みはどうにかならんのか」
 ペルセウスが呆れ顔で突っ込む。おもちゃで遊ぶ子供の顔というレベルではない。
「ほとんど組み立て終わっているから、後はこれを付けるだけよ」
 イシュタムはポケットから掌に乗るサイズの電子板を取り出した。
「イシュタム、まさかそれは…」
「ええ、例のサイコパス化するシステム、カウィール・シナプス装置の究極の状態よ」
 イシュタムはロボットにその電子板を渡した。ロボットはコックピットにまで上り、操縦桿の横に装着した。
「私はケツァルコアトルに乗り込んでシバルバー上空に待機するわ。きっとフン・カメーたちは飛行タイプの兵器で追撃してくるから、その隙に港まで逃げて」
「おいおい大丈夫か? あんたパイロットじゃないだろ」
 ソールが怪訝な顔をした。こういう場合、ペルセウスやアルテミスに託すのがいいのではないか。
「もともと私は脱出の時に備えてこれを開発したの。だから私が乗り込むわ」
 素人でも操縦できるように自動化テクノロジーを組み込んでいるというから、ここは任せることにした。
 イシュタムはコックピットに乗り込むとエンジンを入れてケツァルコアトルを始動させた。
「結局、あいつらはまんまと逃げたってわけか?」
 フン・カメーが苛立たしげに呟いた。既に日が傾き始めている。夜になると捜索もより難しくなるだろう。
「目下、全力で探しております」
 と部下が言うと
「言い訳はいいからとっとと捕まえてこい!!」
 と怒鳴り、そばにあったティーカップを投げつけた。カップは部下に当たって床に落ちて割れた。
「兄さん、少し落ち着きなよ。パワハラだよ」
「お前、この期に及んでよく落ち着けるな!!」
 ヴクブ・カメーにまで当たり散らすフン・カメー。
「どんな手段を使って逃げているか知らないけど僕らのネオフラカンをまけるとも思えない」
 それもそうだな、とフン・カメーは思い直した。
 このシバルバーの隅々までネオフラカンシステムは行き届いている。住居、店舗、道路、病院、車……どこにいようと監視できるし、あぶり出すことも可能だ。
「もう少し待ってみよう。すぐにボロを出すさ」
 そうヴクブ・カメーが薄ら笑いを浮かべたとき、遠くで音がした。
「何だ?」
 自分たちがいる中央研究所の最上階にまで響く音とは何か。窓に目を向けるとそこには信じられない光景が広がっていた。
 夕日の映える虚空に蛇の形をした戦闘機が浮かんでいた。シバルバーのコウモリ型無人戦闘機が取り囲んで攻撃しているが全く歯が立たず、逆に次々と返り討ちにあっている。
「何だ、ありゃ!!」
 フン・カメーは双眼鏡でその戦闘機を見た。コックピットにいたのは…
「イシュタム!!」
 紛れもない、自分たちが追撃している女だった。
「どういうことだ…」
「兄さん、シパクナーとカブラカンを出撃させよう」
「あ? あれは本当の切り札とも言える兵器だぞ」
「今がまさにその切り札を使うべき非常事態だよ」
 ヴクブ・カメーが真顔で言った。

 その頃、ソールたちは港に着いて戦闘機を格納した潜水艦に搭乗していた。イシュタムの言った通り、ケツァルコアトルが囮になってシバルバーじゅうの注目が上空に集まったため、隙ができて敵に見つかることなくたどり着けたのだ。
 住人と出会っても無関心だったので難なくやり過ごせた。
「この国の人間は他人に無関心なのかね」
 テクノロジーが発達し過ぎたため人より機械と接することが多くなり、人間への関心が薄れたというのがソールの言い分だった。
 ついでに言うと、シバルバーに来るときにパイロットがマニュアル操作を誤って狼狽えていたことを思い出した。
「技術が発達し過ぎると人間の能力すらも衰えるんだよな」
 イシュタムもそうだった。自分のコンプレックスを克服するために脳を支配する「カウィール・シナプス装置」という恐ろしい技術をつくってしまった。今後、あの技術が兵士に使われれば無慈悲な戦闘マシーンを作れる。それに彼女は高度な技術者としてひっぱりだこになるかもしれないが、同時に命を狙われるかもしれない。
「ソール、行くぞ」
 ペガサスに乗り込んだペルセウスが言った。フェニックス、セイレーンを含め、3機がエンジンをふかして艦上から飛び立った。

 シバルバー上空では戦闘が長引いていた。
 シバルバーのこうもり型無人戦闘機――カマソッツは次から次へと出撃し、ケツァルコアトルを取り囲んでいる。一方、ケツァルコアトルは蛇の牙にあたる部分を突き出して旋回しながら体当たりする。さらに、胴体の砲身からは電撃を発射してカマソッソを葬っていく。しかしカマソッツの数が多すぎる。まるで蜂の大群に襲われた熊のように、ケツァルコアトルはエネルギーを消耗していった。
〈イシュタム、大丈夫か!〉
 フェニックスの中からソールが叫んだ。自身もそうだが彼女はもともとパイロットではないため、体が耐えきれないと踏んでいる。ましてや牙で敵に体当たりするドッグファイトを長期戦で戦えるとは到底思えなかった。
 3機はカマソッツを取り囲み次々と墜としていく。フェニックスは尾の実弾・テイルショットで、ペガサスはハルペー光線で攻撃し、セイレーンは音波攻撃が通用しないのでカマソッソ同士を翻弄して激突させた。しかしカマソッソが減る気配がない。
「おいおい、これじゃ本当にエネルギー切れになるぞ」
 ペガサスやセイレーンはもちろん、フェニックスは日没後に太陽光エネルギーを得られなくなる。それに、改良のときガイアの血を補給できなくしたので、燃料が切れたら二度とフェニックスに乗れなくなるかもしれない。
 最悪の事態が3人の頭をよぎったそのとき、ケツァルコアトルが光り始めた。
「何だ?」
 その光りはどんどん強くなる。かと思ったら突然、上空に舞い上がり、すさまじいスピードでカマソッツの一群めがけて突進した。
 その一撃でカマソッソの4分の1が葬られ、すぐに旋回して別の一群に突っ込んだ。その空域にいたカマソッソが全滅するまで十秒だっただろう。
「な、何、どうしたの?」
 アルテミスが不審げに呟く。
「まさか……」
 ソールは冷や汗を流した。イシュタム、カウィール・シナプス装置を発動させたのか? とうとう自らがサイコパスになってしまったのか?
「イシュタム、聞こえるか!? 返事しろ!!」
 するとケツァルコアトルがフェニックスに向き直り、突然突進してきた。
「うわっ!!」
 かろうじて回避したが、ケツァルコアトルの牙に尾の一部をひきちぎられてしまった。すぐさま旋回したケツァルコアトルは、今度はペガサスとセイレーンに体当たりする。
「がっ!!」
「きゃっ!!」
 直撃を受けたセイレーンの右翼が折れ、地上に落下していった。が、地上に激突する寸前で何とか体勢を立て直し、胴体着陸した。
「アルテミス!!」
〈だ、大丈夫。だけど、セイレーンは戦えなくなった…〉
「おいおい、セイレーンを一撃で戦闘不能にするなんてただ者じゃないぞ」
 ケツァルコアトルは狂気にとりつかれたかのようにフェニックスとペガサスに突っ込んでくる。それもすさまじいスピードだ。アルカディア空軍のトップガンであるペルセウスですら避けるのが精一杯だった。
〈ソール、どうすればいいんだ!?〉
「隙を見て機能停止させるしかないだろう」
 しかし、そんなソールの思惑をあざ笑うかのように空の向こうに2機の飛行物体が現れた。人間の顔を大きくしたようなものである。
「新手か!?」