騎士団長によるまさかの団員粛清により、平穏と平和が取り戻されたギルド内。急ぎスタッフ達も戻ってきて、ものの見事にノされた団員達を簀巻きにして外に蹴り出すところまで含めての業務復帰活動が行われていた。
同時に屯してた冒険者達も帰ってきたし、レオンくん達やヤミくん、ヒカリちゃんも嵐が過ぎ去ったのを見てか、またやって来る。
完全にいつも通り、とは行かないけどどうにか元通りになれそうな塩梅だね。
「改めてヤミさん、ヒカリさん両名および冒険者の皆様。ならびにギルドスタッフの方々に至るまで、この度は騎士団の新米騎士共が大変なことをした。心よりお詫び申し上げる」
「え、えーと?」
「は、はあ……」
騎士団員達の溢した鼻血やらをモップ掛けするスタッフさん達や、すっかり元通りで酒なんか飲み交わそうとしている冒険者達を前に大きな声でシミラ卿はそう言い、一連の事件について謝罪した。
騎士団長という、連合王国を代表する存在の一角とも言える方からの謝罪は……事実上、国が謝罪したにも匹敵するインパクトがあるねー。
呆気に取られた冒険者達が、しかし次第に囃し立て始めた。
「お、おう……まったく、ペーペーの躾くらいちゃんとしとけや、騎士団長様よお!!」
「返す言葉もない。奴らの処分は帰還後、厳正に行う」
「貴族ってだけで調子乗りやがって、あんたもどうせ心ん中じゃ同じように思ってんだろ、あぁ!?」
「そんなことはない、と言っても信じてもらえないことは承知している。申しわけない、としか言えない」
「こんだけやらかしといて謝罪だけで済まそうってかい! 賠償しろや賠償!」
「ギルドへの謝罪と賠償については後日、法に則って行う」
「誠意が見えないんだよ誠意が、分かってんのか!?」
「すまない。心よりお詫びする」
「……………………」
うわー、こっちはこっちで即座に調子に乗ってるよ、冒険者の中でもろくでもない連中ばかりが。
騎士団員も大概だったけど、こうなると冒険者も他所のこと言えないんだよねー。精々ちょっと酒呑んで管巻く時間が減っただけの連中が、一体何を謝罪と賠償させるんだか。
シミラ卿はそうした野次の声にも粛々と答えていく。末端こそアレだけど、騎士団長はじめ騎士団のトップはまだまだこういう高潔な人がいてくれるから、どうにかギリギリ面目を保ててるところはあるよねー。
そんな彼女になおも暴言を吐こうとする、自分達は見ているだけで何もしなかった連中。彼らにも、鉄槌が下されようとしていた。
「今ここですぐ! 土下座しろや!! なんなら服も──ぐぇぇっ!?」
「金持って来い、賠償し、ぐぎゃあっ!?」
「いい加減にしやがれ、糞ったれども!!」
見苦しく聞き苦しい連中へと次々、黙って聞いていた他の冒険者達に殴り飛ばされていく。なんならシミラ卿がやったより苛烈で、壁や床に叩きつけられているのもいるね。
やったのはベテラン冒険者、特にAランク付近の人達だ。この人達は長いことこの仕事してるから、シミラ卿のことも知ってるしね。
かつては冒険者とともに迷宮最深部を目指していた、旧騎士団の最後の世代筆頭。
シミラ・サクレード・ワルンフォルース卿は彼らにとって、未だに冒険仲間なのだ。そんな彼女を侮辱するなら、そりゃやる気もなく日がな一日酒を飲んでるだけのやつらなんて問答無用でボコるよねー。
「な、なに……しやがる……」
「シミラのお嬢はテメェの拳で落とし前つけてテメェの責任で頭ぁ下げた! だったら俺らの話はそれで終いなんだよ、グダグダ絡んでんじゃねえクズどもが!!」
「てめえら知ってんだろーが、お嬢は3年前のあのパーティーにいたんだよ!! "レジェンダリーセブン"でこそないが、それでも騎士で貴族なのに俺達とも酒を酌み交わした、親愛なる友人なんだぞ!!」
「大体、周りで見てただけの俺らに何が言える……この場で物申せるのはレオン達と、杭打ちだけだ」
……冒険者というのは、当たり前だけど命懸けのお仕事だ。
大体の依頼が荒事だし、迷宮のどこかで何かをしてこいって感じのが多い。必然的にモンスターとも戦うし、そうなるとどうしても殺される人だって後を絶たないんだよね。
世界最大級の迷宮を抱えるここ、迷宮都市の冒険者であるんならなおのことだ。
そんな仕事だからか、僕らは"ともに命を懸けた"人に対してひどく重い友誼を抱く。
立場や身分も関係なし、一緒に挑戦し一緒に冒険して一緒に死線を越えて……そして一緒に切り抜けたのなら、それはもう家族にも負けない絆を得たとする風潮があるんだ。
それはレオンくん達みたいな新人さんでも変わりない。だからヤミくんヒカリちゃんを、身を挺してでも護ろうとしたわけだしね。
──そして。
だからこそ、ベテラン冒険者達はシミラ卿だって赦すのだ。
「"大迷宮深層調査戦隊"──そこの杭打ちと同じで、シミラのお嬢も伝説の一員なんだよ。俺やお前らとは格が違うんだ」
かつて迷宮最深部を目指し、騎士も冒険者も貴族も平民も、スラムの者でさえも関係なく世界中のエキスパートが集結したあのパーティーにシミラ卿が在籍していたことを、彼らは知っているから。
それまでの歴史で20階層程度までしか開拓できなかった迷宮を、一気に88階層まで攻略し……迷宮攻略法という、冒険者全体の実力を底上げした技術体系を編み出した。そんな伝説的なパーティーに彼女がいたことを、彼らは覚えているから。
そんなシミラ卿を、彼らは心から尊敬しているから赦すんだねー。
同時に屯してた冒険者達も帰ってきたし、レオンくん達やヤミくん、ヒカリちゃんも嵐が過ぎ去ったのを見てか、またやって来る。
完全にいつも通り、とは行かないけどどうにか元通りになれそうな塩梅だね。
「改めてヤミさん、ヒカリさん両名および冒険者の皆様。ならびにギルドスタッフの方々に至るまで、この度は騎士団の新米騎士共が大変なことをした。心よりお詫び申し上げる」
「え、えーと?」
「は、はあ……」
騎士団員達の溢した鼻血やらをモップ掛けするスタッフさん達や、すっかり元通りで酒なんか飲み交わそうとしている冒険者達を前に大きな声でシミラ卿はそう言い、一連の事件について謝罪した。
騎士団長という、連合王国を代表する存在の一角とも言える方からの謝罪は……事実上、国が謝罪したにも匹敵するインパクトがあるねー。
呆気に取られた冒険者達が、しかし次第に囃し立て始めた。
「お、おう……まったく、ペーペーの躾くらいちゃんとしとけや、騎士団長様よお!!」
「返す言葉もない。奴らの処分は帰還後、厳正に行う」
「貴族ってだけで調子乗りやがって、あんたもどうせ心ん中じゃ同じように思ってんだろ、あぁ!?」
「そんなことはない、と言っても信じてもらえないことは承知している。申しわけない、としか言えない」
「こんだけやらかしといて謝罪だけで済まそうってかい! 賠償しろや賠償!」
「ギルドへの謝罪と賠償については後日、法に則って行う」
「誠意が見えないんだよ誠意が、分かってんのか!?」
「すまない。心よりお詫びする」
「……………………」
うわー、こっちはこっちで即座に調子に乗ってるよ、冒険者の中でもろくでもない連中ばかりが。
騎士団員も大概だったけど、こうなると冒険者も他所のこと言えないんだよねー。精々ちょっと酒呑んで管巻く時間が減っただけの連中が、一体何を謝罪と賠償させるんだか。
シミラ卿はそうした野次の声にも粛々と答えていく。末端こそアレだけど、騎士団長はじめ騎士団のトップはまだまだこういう高潔な人がいてくれるから、どうにかギリギリ面目を保ててるところはあるよねー。
そんな彼女になおも暴言を吐こうとする、自分達は見ているだけで何もしなかった連中。彼らにも、鉄槌が下されようとしていた。
「今ここですぐ! 土下座しろや!! なんなら服も──ぐぇぇっ!?」
「金持って来い、賠償し、ぐぎゃあっ!?」
「いい加減にしやがれ、糞ったれども!!」
見苦しく聞き苦しい連中へと次々、黙って聞いていた他の冒険者達に殴り飛ばされていく。なんならシミラ卿がやったより苛烈で、壁や床に叩きつけられているのもいるね。
やったのはベテラン冒険者、特にAランク付近の人達だ。この人達は長いことこの仕事してるから、シミラ卿のことも知ってるしね。
かつては冒険者とともに迷宮最深部を目指していた、旧騎士団の最後の世代筆頭。
シミラ・サクレード・ワルンフォルース卿は彼らにとって、未だに冒険仲間なのだ。そんな彼女を侮辱するなら、そりゃやる気もなく日がな一日酒を飲んでるだけのやつらなんて問答無用でボコるよねー。
「な、なに……しやがる……」
「シミラのお嬢はテメェの拳で落とし前つけてテメェの責任で頭ぁ下げた! だったら俺らの話はそれで終いなんだよ、グダグダ絡んでんじゃねえクズどもが!!」
「てめえら知ってんだろーが、お嬢は3年前のあのパーティーにいたんだよ!! "レジェンダリーセブン"でこそないが、それでも騎士で貴族なのに俺達とも酒を酌み交わした、親愛なる友人なんだぞ!!」
「大体、周りで見てただけの俺らに何が言える……この場で物申せるのはレオン達と、杭打ちだけだ」
……冒険者というのは、当たり前だけど命懸けのお仕事だ。
大体の依頼が荒事だし、迷宮のどこかで何かをしてこいって感じのが多い。必然的にモンスターとも戦うし、そうなるとどうしても殺される人だって後を絶たないんだよね。
世界最大級の迷宮を抱えるここ、迷宮都市の冒険者であるんならなおのことだ。
そんな仕事だからか、僕らは"ともに命を懸けた"人に対してひどく重い友誼を抱く。
立場や身分も関係なし、一緒に挑戦し一緒に冒険して一緒に死線を越えて……そして一緒に切り抜けたのなら、それはもう家族にも負けない絆を得たとする風潮があるんだ。
それはレオンくん達みたいな新人さんでも変わりない。だからヤミくんヒカリちゃんを、身を挺してでも護ろうとしたわけだしね。
──そして。
だからこそ、ベテラン冒険者達はシミラ卿だって赦すのだ。
「"大迷宮深層調査戦隊"──そこの杭打ちと同じで、シミラのお嬢も伝説の一員なんだよ。俺やお前らとは格が違うんだ」
かつて迷宮最深部を目指し、騎士も冒険者も貴族も平民も、スラムの者でさえも関係なく世界中のエキスパートが集結したあのパーティーにシミラ卿が在籍していたことを、彼らは知っているから。
それまでの歴史で20階層程度までしか開拓できなかった迷宮を、一気に88階層まで攻略し……迷宮攻略法という、冒険者全体の実力を底上げした技術体系を編み出した。そんな伝説的なパーティーに彼女がいたことを、彼らは覚えているから。
そんなシミラ卿を、彼らは心から尊敬しているから赦すんだねー。