//SE 体温計の音

「38度5分……。結構高いねぇ」

「慣れない一人暮らしと大学生活で、疲れが出ちゃったかな。一気に色々変わったもんねぇ」

「ああほら、いいから、横になってて」

「仕事? 病人が気にすることじゃありません」

「こういう時のために私がいるんだから。頼ってくれていいんだよ」//頭を撫でて

「うん、いい子。ほら、傍にいるから。安心して眠ってて」//手を握る

//SE 時計の音 時間経過

「ん……起きた?」

「どれどれぇ……。うーん、まだ熱いな」//額を合わせて

「水分補給しよっか。飲めそう? はい、ゆっくり飲んでね」

//SE 水を飲む音

「汗すごいねぇ。体も拭こっか」

//SE ばたばたと抵抗する音

「恥ずかしがることじゃないでしょ! 病人なんだから。ほら、観念しなさい!」

「はい、ばんざーい」

//SE 服を脱ぐ衣擦れの音

「腕上げてー」

「背中、広いねぇ。……大きくなったんだねぇ」//しみじみと

「初めて会った時は、まだ小さくて……。私の後ろをついて回って、可愛かったなぁ」

「覚えてない? ふふ、ほんとかなぁ」//からかうように

「私、一人っ子だから。弟ができたみたいで、嬉しかったんだよ」

「でも、君はどんどん大きくなって……。高校生になる頃には、身長も私よりおっきくなっちゃってさぁ」

「私が就職するからって、上京して、なかなか会えなくなっちゃって。……寂しかった。だからね、嬉しかったんだよ。君が大学進学で上京するって聞いた時」

「しかも一人暮らしの相談に、私のところに来てくれて。ああ私、頼られてるなーって」

「まぁそのおかげで、私の隣に住むことが、一人暮らしの条件になっちゃったんだけど。私、おばさんには信頼されてるからね。しっかり者だって」

「え? 意外と抜けてる? もう、そんなことないでしょ!」

「とにかく、私はね。君に頼られるの、本当に嬉しいの。だから何にも気にしないで、好きなだけ甘えて。……はい、おしまい!」

//SE 服を着る衣擦れの音

「食欲はある? 良かった。そしたら、おかゆ作ってあるから、ちょっと待ってて」

//SE 足音

「お待たせー」

//SE 食器の音 おかゆをすくう

「ふー、ふー。ほら、あーん」

「手に力入らなくて、落としたら困るでしょ。ほら、あーん」

「うん、えらいえらい。おいし?」

「味わかんないかぁ。だよねぇ。元気になったら、何でも好きなもの作ってあげるからね」

「はい、もう一口」

//SE 食器を片付ける音

「よし、じゃぁあとは薬飲んで寝よっか」

「今日はこっちに泊まるから。安心して寝ててね」

「治るまでしっかり看病してあげるから。おやすみ」

//SE 時計の音

「……寝ちゃった?」

「ふふ、寝息、かーわい」

「今日は君のお世話がいっぱいできて、楽しかったなぁ」

「……ずうっと私にお世話させてね」