シャンボール城を後にした美玲達ツアー参加者一行。
そのまま貸切バスに乗り、ロワール地方のホテルへと向かう。
この日もアメリカンスタイルの利便性に優れたホテルだった。
ちなみに、ガイドの仁美は一旦ここでお別れである。彼女はまた明後日のパリ観光とベルサイユ宮殿観光の時に来てくれるそうだ。
美玲は早速部屋で荷物の整理をし、ポケットWi-Fiを充電する。きちんと充電が始まったことを確認した後、日本から持ってきたコンビニのおにぎりを食べた。
(あ、やっぱり一晩冷蔵庫に入れたからちょっとパサパサする)
美玲は米粒がこぼれないよう気を付けて食べるのであった。
その後はシャルトル大聖堂やシャンボール城で買ったお菓子やチーズを食べる美玲。
(ああ、チーズもお菓子も美味しい。濃厚で最高!)
美玲はコクがあるチーズに、満足そうな表情になっていた。
その時、スマートフォンにメッセージが届く。
まずは誠一から。
今日の写真とメッセージが送られてきたのだ。
《今日はお疲れ様。写真送っとく。ゆっくり休めよ》
その後、誠一からシュールなスタンプが送られてきた。
(何これ)
美玲はクスッと笑い、メッセージを送る。
《ありがとう》
そして次は凛子からだ。
誠一と同じく写真とメッセージが届く。
《美玲ちゃん、これ今日の写真! 明日も楽しもう!》
更に凛子からは可愛らしいスタンプが送られてきた。
(あ、このスタンプ可愛い)
美玲はふふっと笑った。
そして凛子にもメッセージを返す。
《凛ちゃん、ありがとう。明日も楽しみ!》
そして再びチーズとお菓子を食べる美玲であった。
◇◇◇◇
翌日。
この日も初日のホテルと同じようなもので、バイキングスタイルの朝食である。
やはりクロワッサンを食べる美玲だった。
このホテルはもうチェックアウトするので、朝食後部屋に戻った美玲は荷物をまとめてロビーへ降りる。昨日とは違い、ポケットWi-Fiの充電もきちんとできていたので困ることはない。
「おはよう、岸本さん。昨日は眠れたか?」
いつの間にか美玲の隣には誠一がいた。
「中川くん、おはよう。うん。割と眠れたよ。体もすっかりフランス時間に慣れた」
「そっか」
誠一は安心したようである。
「あ、昨日はありがとう。今日は私のポケットWi-Fiきちんと作動してるから大丈夫だよ」
美玲は得意げに自身のポケットWi-Fiを見せた。そして美玲は申し訳なさそうに苦笑する。
「昨日はさ、一日中迷惑かけっぱなしでごめんね」
すると、誠一は若干悲しげな表情になる。
「別に迷惑だなんて思ってないぞ」
そして切り替えたようにフッと笑う。
「岸本さん、今日も楽しもうぜ。モン・サン=ミッシェル、写真しか見たことないから実物見んの俺、超楽しみ」
「そうだね」
美玲は明るい表情になった。
その後、明美から今日の行程と注意事項を聞き、美玲達はバスに乗り込んだ。
今日はモン・サン=ミッシェル現地でフランス人ガイドと合流するそうだ。
終始添乗員の明美がいる団体行動、そしてバスも貸切で安全である。
朱理が流暢なフランス語でフランス人運転手と前の方で話しているのを聞き、すごいなあと思いながら通り過ぎ、美玲は後ろの方の席に座った。もちろん、シートベルトはきちんと締めている。
「あ、美玲ちゃんや。おはよう」
美玲の前に凛子が座る。カチャッとシートベルトを締める音が聞こえた。
相変わらずサイドの部分がステンドグラスのようなデザインである紫色の眼鏡がお洒落だなと美玲は思った。この日もエッフェル塔のデザインのピアスをしていた凛子である。
おまけにこの日は柔らかな癖のある長めの髪を下ろしており、どこかゴージャスな印象である。聞いたところ、天然パーマだそうだ。
ちなみに凛子の彼氏である晃樹は凛子の前に座っている。
「凛ちゃん、おはよう」
美玲は肩の力が抜けた笑みである。
更に美玲達の近くには年配の松本夫妻もやって来る。
「「おはようございます」」
美玲と凛子は口を揃えて松本夫妻に挨拶をする。
「おはようございます。おお、これはこれは、若い子が多い席だ」
茂が嬉しそうに笑う。
「おはようございます。お近く、失礼しますね」
貴子がそう朗らかに笑う。
松本夫妻は通路を挟んだ反対側にそれぞれ一人ずつ席を取った。
「それにしてもあの子、朱理ちゃんやったっけ? すごいね。フランス人の運転手とフランス語で話してるで。私も晃ちゃんも観光やから簡単なフランス語と英語だけでええやろって思ってたわ」
あっけらかんと笑う凛子。
「それは私も同じ。大体の人がそうじゃないかな?」
美玲も前の方の席の朱理を見ながら笑う。
和気藹々とした雰囲気の中、バスが出発した。
「皆さん、改めておはようございます。えー、今日はこれからモン・サン=ミッシェルに向かいますが、その前に近くのレストランでお昼を食べます。皆さんに前菜として食べていただくふわふわのスフレオムレツ。このオムレツ、マダム・プラールという人が、モン・サン=ミッシェルに巡礼に訪れた貧しかったり精進料理しか食べることが出来ないキリスト教信者に少しでも栄養を摂ってもらおうとして生み出した料理なんです。マダム・プラールの巡礼者への敬意と優しさによって生まれた料理なんですよ」
明美は説明を続ける。
「当時キリスト教徒の巡礼は本当に命懸けでした。モン・サン=ミッシェルは海に囲まれた島ですからね。最も大きい潮が押し寄せるときは、多くの巡礼者が潮にのまれて、命を落としていたんです」
明美の説明に、美玲は少し考える。
(巡礼のために死んでしまう……。逆に、死ぬ覚悟を持って巡礼に行ってたってこと……? そこまでして……)
美玲はぼんやりと窓の外に目線を移す。
(人生終わらせるためにフランスに来たけど……死……か)
景色を見ながら考えを巡らせる美玲であった。
そのまま貸切バスに乗り、ロワール地方のホテルへと向かう。
この日もアメリカンスタイルの利便性に優れたホテルだった。
ちなみに、ガイドの仁美は一旦ここでお別れである。彼女はまた明後日のパリ観光とベルサイユ宮殿観光の時に来てくれるそうだ。
美玲は早速部屋で荷物の整理をし、ポケットWi-Fiを充電する。きちんと充電が始まったことを確認した後、日本から持ってきたコンビニのおにぎりを食べた。
(あ、やっぱり一晩冷蔵庫に入れたからちょっとパサパサする)
美玲は米粒がこぼれないよう気を付けて食べるのであった。
その後はシャルトル大聖堂やシャンボール城で買ったお菓子やチーズを食べる美玲。
(ああ、チーズもお菓子も美味しい。濃厚で最高!)
美玲はコクがあるチーズに、満足そうな表情になっていた。
その時、スマートフォンにメッセージが届く。
まずは誠一から。
今日の写真とメッセージが送られてきたのだ。
《今日はお疲れ様。写真送っとく。ゆっくり休めよ》
その後、誠一からシュールなスタンプが送られてきた。
(何これ)
美玲はクスッと笑い、メッセージを送る。
《ありがとう》
そして次は凛子からだ。
誠一と同じく写真とメッセージが届く。
《美玲ちゃん、これ今日の写真! 明日も楽しもう!》
更に凛子からは可愛らしいスタンプが送られてきた。
(あ、このスタンプ可愛い)
美玲はふふっと笑った。
そして凛子にもメッセージを返す。
《凛ちゃん、ありがとう。明日も楽しみ!》
そして再びチーズとお菓子を食べる美玲であった。
◇◇◇◇
翌日。
この日も初日のホテルと同じようなもので、バイキングスタイルの朝食である。
やはりクロワッサンを食べる美玲だった。
このホテルはもうチェックアウトするので、朝食後部屋に戻った美玲は荷物をまとめてロビーへ降りる。昨日とは違い、ポケットWi-Fiの充電もきちんとできていたので困ることはない。
「おはよう、岸本さん。昨日は眠れたか?」
いつの間にか美玲の隣には誠一がいた。
「中川くん、おはよう。うん。割と眠れたよ。体もすっかりフランス時間に慣れた」
「そっか」
誠一は安心したようである。
「あ、昨日はありがとう。今日は私のポケットWi-Fiきちんと作動してるから大丈夫だよ」
美玲は得意げに自身のポケットWi-Fiを見せた。そして美玲は申し訳なさそうに苦笑する。
「昨日はさ、一日中迷惑かけっぱなしでごめんね」
すると、誠一は若干悲しげな表情になる。
「別に迷惑だなんて思ってないぞ」
そして切り替えたようにフッと笑う。
「岸本さん、今日も楽しもうぜ。モン・サン=ミッシェル、写真しか見たことないから実物見んの俺、超楽しみ」
「そうだね」
美玲は明るい表情になった。
その後、明美から今日の行程と注意事項を聞き、美玲達はバスに乗り込んだ。
今日はモン・サン=ミッシェル現地でフランス人ガイドと合流するそうだ。
終始添乗員の明美がいる団体行動、そしてバスも貸切で安全である。
朱理が流暢なフランス語でフランス人運転手と前の方で話しているのを聞き、すごいなあと思いながら通り過ぎ、美玲は後ろの方の席に座った。もちろん、シートベルトはきちんと締めている。
「あ、美玲ちゃんや。おはよう」
美玲の前に凛子が座る。カチャッとシートベルトを締める音が聞こえた。
相変わらずサイドの部分がステンドグラスのようなデザインである紫色の眼鏡がお洒落だなと美玲は思った。この日もエッフェル塔のデザインのピアスをしていた凛子である。
おまけにこの日は柔らかな癖のある長めの髪を下ろしており、どこかゴージャスな印象である。聞いたところ、天然パーマだそうだ。
ちなみに凛子の彼氏である晃樹は凛子の前に座っている。
「凛ちゃん、おはよう」
美玲は肩の力が抜けた笑みである。
更に美玲達の近くには年配の松本夫妻もやって来る。
「「おはようございます」」
美玲と凛子は口を揃えて松本夫妻に挨拶をする。
「おはようございます。おお、これはこれは、若い子が多い席だ」
茂が嬉しそうに笑う。
「おはようございます。お近く、失礼しますね」
貴子がそう朗らかに笑う。
松本夫妻は通路を挟んだ反対側にそれぞれ一人ずつ席を取った。
「それにしてもあの子、朱理ちゃんやったっけ? すごいね。フランス人の運転手とフランス語で話してるで。私も晃ちゃんも観光やから簡単なフランス語と英語だけでええやろって思ってたわ」
あっけらかんと笑う凛子。
「それは私も同じ。大体の人がそうじゃないかな?」
美玲も前の方の席の朱理を見ながら笑う。
和気藹々とした雰囲気の中、バスが出発した。
「皆さん、改めておはようございます。えー、今日はこれからモン・サン=ミッシェルに向かいますが、その前に近くのレストランでお昼を食べます。皆さんに前菜として食べていただくふわふわのスフレオムレツ。このオムレツ、マダム・プラールという人が、モン・サン=ミッシェルに巡礼に訪れた貧しかったり精進料理しか食べることが出来ないキリスト教信者に少しでも栄養を摂ってもらおうとして生み出した料理なんです。マダム・プラールの巡礼者への敬意と優しさによって生まれた料理なんですよ」
明美は説明を続ける。
「当時キリスト教徒の巡礼は本当に命懸けでした。モン・サン=ミッシェルは海に囲まれた島ですからね。最も大きい潮が押し寄せるときは、多くの巡礼者が潮にのまれて、命を落としていたんです」
明美の説明に、美玲は少し考える。
(巡礼のために死んでしまう……。逆に、死ぬ覚悟を持って巡礼に行ってたってこと……? そこまでして……)
美玲はぼんやりと窓の外に目線を移す。
(人生終わらせるためにフランスに来たけど……死……か)
景色を見ながら考えを巡らせる美玲であった。



