小学校からの帰り道、私はあることに気づいてしまった。
「どうしよう……算数の宿題、学校に忘れてきちゃった」
学校を出たのは5時半頃。
空はすでにオレンジ色に染まっている。
「算数の谷口先生、忘れ物には厳しいしなぁ」
私は谷口先生の怒る顔を思い浮かべ、やっぱり宿題を取りに学校に戻ることにした。
「あら、学校に戻るの? じゃあカレンもついて行ってあげる」
チリンと鈴の音を鳴らしながら、水色のランドセルを背負ったカレンちゃんが笑顔で私に振り返った。
カレンちゃんの目の色は青色だ。
そして綺麗な金色の長い髪を二つに結んでいる。
「おうちの人が心配するから、カレンちゃんは帰っていいよ」
「大丈夫よ。うちの親、共働きなの。カレンはいつも夜までお留守番なのよ。だから誰も心配なんてしないから大丈夫よ」
「……」
「それよりユキちゃんの方が心配よ。最近この辺り、夕方になると痴漢が出るってママが言ってたわ。女の子一人じゃ危ないわ」
「……カレンちゃんも女の子じゃん。それに私たち途中で別れるし、カレンちゃんのおうちはあの丘の上なんでしょ? 家に着くまで日が暮れちゃうよ」
私は丘の上に立つ大きな家を指差した。
「そうよ。ちょっと時間かかるし坂道がきついけど、夜は街灯がキラキラ輝いて綺麗なの。真っ暗は怖いけど、光があるから大丈夫よ」
私はハアッとため息をついた。
何を言ってもカレンちゃんは私についてくる気満々なので、私はそれ以上何も言わなかった。
学校の校門に着くと、ちょうど担任の先生とバッタリ会った。
「立花さん、どうしたの? 忘れ物?」
担任の先生は美代子先生という若い女の先生だ。
「えっと、算数の宿題を教室に忘れてしまって……」
「そうなのね。もうすぐ日も暮れるし、早めに済ませなさいね」
「はい」
私はペコッと頭を下げると、急いで昇降口まで走ろうとした。しかしなんなとなく後ろを振り返ると、カレンちゃんがいないことに気づいてキョロキョロしていると、美代子先生がこっちを見て首を傾げているのが見えた。
「ユキちゃん、こっちよ!」
その時、二宮金次郎の銅像の影からカレンちゃんが手招きしているのが見えた。
「カレンちゃん!」
私は二宮金次郎の銅像まで走った。
「もう、急にいなくならないでよ!」
「ごめんなさい。だってカレン、この学校に通ってないもの。部外者は入っちゃいけないと思って……」
「えっ、カレンちゃん、同じ学校じゃなかったの!?」
全然知らなかった。
カレンちゃんはいつも夕方になるといつのまにか私の隣にいるから、てっきり同じ学校に通っている小学生だと思ってた。
そういえば学年を聞いていない。
「ねえ、知ってる? 学校の七不思議、その一」
私がカレンちゃんが同じ学校じゃなかったことにまだ驚いているのに、カレンちゃんはもう次の話を切り出してくる。
「学校の七不思議って……」
私は二宮金次郎が背負っている蒔をジッと見つめた。確かお母さんが、二宮金次郎が背負う薪の数を毎回数えると違うと言っていた。
「そう、二宮金次郎の薪の数。毎回数えると違うのはね……」
そこまで言うと、カレンちゃんは青色の瞳をキラキラさせながら私をジッと見た。
私はゴクリと息を飲む。
「夜中に走り回っているからよ。それで薪を落としちゃうの」
私はガクッとズッコケそうになった。
「あ~それ、よくある話だよね」
「本当よ、だっていつも同じ体勢じゃつらいじゃない? それにね、ただ走り回るだけじゃないの。実は他の小学校の銅像と交代しているのよ。だから薪の数が違うの」
私はカレンちゃんの妄想話を右から左に流しながら、昇降口に向かった。もうその頃には校門に美代子先生の姿はなかった。
「どうしよう……算数の宿題、学校に忘れてきちゃった」
学校を出たのは5時半頃。
空はすでにオレンジ色に染まっている。
「算数の谷口先生、忘れ物には厳しいしなぁ」
私は谷口先生の怒る顔を思い浮かべ、やっぱり宿題を取りに学校に戻ることにした。
「あら、学校に戻るの? じゃあカレンもついて行ってあげる」
チリンと鈴の音を鳴らしながら、水色のランドセルを背負ったカレンちゃんが笑顔で私に振り返った。
カレンちゃんの目の色は青色だ。
そして綺麗な金色の長い髪を二つに結んでいる。
「おうちの人が心配するから、カレンちゃんは帰っていいよ」
「大丈夫よ。うちの親、共働きなの。カレンはいつも夜までお留守番なのよ。だから誰も心配なんてしないから大丈夫よ」
「……」
「それよりユキちゃんの方が心配よ。最近この辺り、夕方になると痴漢が出るってママが言ってたわ。女の子一人じゃ危ないわ」
「……カレンちゃんも女の子じゃん。それに私たち途中で別れるし、カレンちゃんのおうちはあの丘の上なんでしょ? 家に着くまで日が暮れちゃうよ」
私は丘の上に立つ大きな家を指差した。
「そうよ。ちょっと時間かかるし坂道がきついけど、夜は街灯がキラキラ輝いて綺麗なの。真っ暗は怖いけど、光があるから大丈夫よ」
私はハアッとため息をついた。
何を言ってもカレンちゃんは私についてくる気満々なので、私はそれ以上何も言わなかった。
学校の校門に着くと、ちょうど担任の先生とバッタリ会った。
「立花さん、どうしたの? 忘れ物?」
担任の先生は美代子先生という若い女の先生だ。
「えっと、算数の宿題を教室に忘れてしまって……」
「そうなのね。もうすぐ日も暮れるし、早めに済ませなさいね」
「はい」
私はペコッと頭を下げると、急いで昇降口まで走ろうとした。しかしなんなとなく後ろを振り返ると、カレンちゃんがいないことに気づいてキョロキョロしていると、美代子先生がこっちを見て首を傾げているのが見えた。
「ユキちゃん、こっちよ!」
その時、二宮金次郎の銅像の影からカレンちゃんが手招きしているのが見えた。
「カレンちゃん!」
私は二宮金次郎の銅像まで走った。
「もう、急にいなくならないでよ!」
「ごめんなさい。だってカレン、この学校に通ってないもの。部外者は入っちゃいけないと思って……」
「えっ、カレンちゃん、同じ学校じゃなかったの!?」
全然知らなかった。
カレンちゃんはいつも夕方になるといつのまにか私の隣にいるから、てっきり同じ学校に通っている小学生だと思ってた。
そういえば学年を聞いていない。
「ねえ、知ってる? 学校の七不思議、その一」
私がカレンちゃんが同じ学校じゃなかったことにまだ驚いているのに、カレンちゃんはもう次の話を切り出してくる。
「学校の七不思議って……」
私は二宮金次郎が背負っている蒔をジッと見つめた。確かお母さんが、二宮金次郎が背負う薪の数を毎回数えると違うと言っていた。
「そう、二宮金次郎の薪の数。毎回数えると違うのはね……」
そこまで言うと、カレンちゃんは青色の瞳をキラキラさせながら私をジッと見た。
私はゴクリと息を飲む。
「夜中に走り回っているからよ。それで薪を落としちゃうの」
私はガクッとズッコケそうになった。
「あ~それ、よくある話だよね」
「本当よ、だっていつも同じ体勢じゃつらいじゃない? それにね、ただ走り回るだけじゃないの。実は他の小学校の銅像と交代しているのよ。だから薪の数が違うの」
私はカレンちゃんの妄想話を右から左に流しながら、昇降口に向かった。もうその頃には校門に美代子先生の姿はなかった。