「はふ、はふっ。んふぅ~」
「あむ、あむっ。おいひぃ、おいひぃですぅ」

 ぐったりしていた桃色の子も、涼しい所で休んだおかげか元気になったようだ。
 食欲もあるようだし、大丈夫だろう。

「二人が塩を持ってて良かったよ。蒸かし芋そのままだと、味気ないからさ」

 と話しかけても、二人は夢中で食べてて返事はない。

 彼女たちの荷物に鍋があったのが見えた。
 借りれば何か作れるなと思って、何にしようかと考え――

 野菜の木と調味料の木を成長させて、材料をゲット。
 いやぁ、タマネギ欲しいなぁって思って成長させたら、本当に生るんだもんな。
 それから調味料の木。
 いったい何が実るのかと思ったけど、野菜の木同様、一本から複数の調味料が生った。

 そもそも、調味料って実る物だっけ?
 確かにさ、スパイス系は植物だしいいよ。
 でもな、なーんでコンソメの粉末が生るんだ?
 グミの実みたいなやつの中身が、まさかのコンソメ粉末。

 まぁおかげでオニオンスープが作れたんだけどさ。

「んっく……ぷはぁ~」
「ふぅ~」

 二人とも、いい飲みっぷりだ。

「ごちそうさまです」
「ご、ごちそう、さま」
「二人とも、具合はどう?」
「はい、落ち着いたですの。ね、シェリルちゃん」
「え、あ……うん」
「そか、よかった」

 夜はどうするかな。
 スパイスがあるし、カレーが作れそうではあるけど。
 もちろん、肉はないから野菜カレー。

 種の中には小麦の木なんてのもある。
 もうこの流れだと、小麦粉が生るに決まってるよなぁ。

「オイルの木まであるし、なんでもござれだな」
「なにがです?」
「あ、いや、こっちの話。そうだ、自己紹介してなかったね。俺は大地豊」
「だいちが……ゆたか?」

 銀髪の子が首を傾げる。
 異世界でも俺の名前は弄られるのか。

「ユタカって呼んでよ」
「ユヤカさん、ですね。私はルーシェ。こっちは双子の妹でシェリルちゃんです」

 双子だったのか。
 顔立ちは似ているけど、髪や瞳、それに雰囲気は全然違う。

 桃色の髪で姉のルーシェはおっとりした感じで、銀髪の妹の方のシェリルは勝気な気がする。
 しかしおっとりで大剣使い。
 勝気で弓使いかぁ。
 ギャップが激しいなぁ。

 あとこの二人、決定的な違いがもう一つある。

 ルーシェはその……俗にいう貧乳……ちっぱいだ。
 対してシェリルはたわわな胸の持ち主。
 双子なのにここまで違うとは。

「貴重な食料を分けてくださり、ありがとうございます」
「あ、いや。野菜はいくらでも成長させられるから、気にしなくていいよ」
「成長、ですか?」
「あー、俺のスキルは――」

 スキルのこと、言っても平気だろうか。
 スキル鑑定なんてあるぐらいだ。この世界の人だってスキルは持っているだろう。

「俺のスキルは成長促進と言って、生き物の成長速度をコントロール出来るんだ」
「じゃ、今食べた野菜も?」
「そう。ちなみにこのツリーハウスも、昨日成長させたばかりの木なんだ」
「えぇ!? こんな立派な木を、昨日植えたばかりだってこと!?」
「そ。さっき倒したモンスターも、このスキルを使ったのさ」

 そう言うと、二人が同時に首を傾げた。
 おぉ、シンクロしてる。

「待って。成長させるスキルなんでしょ?」
「それでどうやって、スピュラウスを倒せたのですか?」
「うん。十歳の子供を十年成長させたら、何歳になる?」
「「ニ十歳」」
「だよね。じゃあ、百年成長させたら?」

 ここまで話すと、二人は分かったようだ。
 生き物は死ぬ瞬間まで、成長し続けている。
 だから限界まで成長させれば、死ぬに決まっているんだ。

 ――と思う。

「実はこのスキル、使えるようになったのが昨日で、正直俺もまだよく分かってないんだ」
「え、昨日ですか……」
「どういうこと?」
「えっと、それが……実は俺、悪い魔術師軍団に拉致されて」
「「拉致ぃー!?」」

 俺を召喚した連中を、悪い魔術師軍団に置き換えてみた。

「そいつらは、その時までまだ発現していなかった俺のスキルを呼び覚ましたんだけど、思っていたスキルとは違っていたんだ」
「思っていたもの?」
「あぁ。戦闘系のスキルを欲しがっていたみたいだ」
「ですがユタカさんのスキルは」
「あぁ、まさかモンスターを一瞬で倒せるスキルだとは俺も思わなかったよ。それはあいつらもそうだったみたいだ」
「た、確かに成長促進なんて聞いたら、対象は植物っぽく感じるわね」

 そして有無を言わさず、俺は魔法陣に乗せられて。

「気づいたら砂漠だったんだ」

 それっぽく説明出来たと思う。
 あとは信じてくれるかどうかだ。

「大変だったのですね」
「それで迷子だって言ってた訳ね」

 よし。信じて貰えたようだ。
 まぁ嘘って訳でもないしな。

「いきなり砂漠のど真ん中だし、ここがどこなんかもさっぱりなんだ。だから、頼む」

 頭を下げ、手をその上て合わせた。

「砂漠じゃひとりで生きていけない。どこか人が暮らしてる――そうだ、君たちが住んでる場所に連れて行ってくれないか?」

 そう頼み込んだ。