「たださ、このツリーハウスが何年成長したらこのサイズになるのかってのは、分からないんだよなぁ」
「そうよねぇ……」
「何歳なんですかねぇ、このお家」
眩暈を起こすまでスキルを使った後は、体がだるく感じた。
この状態でスキルを何回か使うと、気絶するらしい。
で、今はツリーハウスの中で、ぼぉっと横になっている。
右にはルーシェが、左にはシェリルが同じく横になっていた。
なんか慣れて来たな、この並びにも。
「うぅ、やっぱり木の床に寝転ぶのは、体が痛くなるな」
「ですねぇ。ユタカさん、ベッドでお休みください」
「お昼はこっちで用意してやるわよ。だから大人しく寝てなさいよね」
「了解でありまーす」
体を起こして立ち上がる。
二人を踏まないよう、床に気を付けて――ん?
そう言えば床、木目がくっきり……木目!?
「これだ!」
「ひゃっ」
「ど、どうしましたか?」
「床のこの木目、木の年輪だっ」
「「ねんりん?」」
これ数えて行けば、ある程度の木の年齢が分かるんじゃないか。
真ん中から数え始めると、二人も同じように年輪を数えだした。
「一五五ぐらい」
「私は一六八でした」
「一五〇よ」
「平均して一五七ぐらいかな。結構成長するんだなぁ。まだ大きくなりそうだし」
ってことは、一日にツリーハウスは一本までだな。
「あ……」
「ど、どうしたのっ」
「ユタカさん?」
じ、じぃーっと床見て年輪数えてたから、なんか目が回った。
倦怠感出てるのに目ぇ回したから、余計にどっと疲れた感じだ。
「……寝てなさい」
「寝てください」
「はい。了解であります」
二階に上がってベッドで横になる。
ベッドのマット、もうすこーし厚みがあったらなぁ。
まぁ贅沢は言えないけど。
マットの中身……中身……やっぱり、綿かな?
綿……そうだ!
「インベントリ・オープン」
種、種……あった!
綿の木!
綿の木ってことは、綿花だよな。
杉とかと同じで、これは普通のやつだろう。
綿。これをたくさん成長させれば、マットを分厚く出来るぞ。
それに綿があれば、糸や布だって作れる――はず!
「綿の種があるの!?」
「あれ? 綿を知ってる?」
「知っています。他所の集落で栽培されていますので」
「物々交換で、綿を貰うの。でも去年は収穫量が減ったからって、交換して貰えなかったのよね」
そうか。他の集落とは物々交換で交流しているのか。
「ならツリーハウスの方が落ち着いたら、次は綿花だな」
そう言うと、二人は嬉しそうに顔を見合わせた。
「ユ、ユタカさんは何か欲しいものありますか? 綿の生地で」
「あ、生地っていうか……マットの補強がしたいなと思って」
「やってあげる。だからその……」
二人はもじおじして、なかなか先を言い出せない。
物々交換、か。
「じゃ、マットのほうお願いするよ。代わりに綿、全部やるからさ」
「いいの!?」
「本当ですか!」
「うん。だってさ、俺……綿の加工の仕方とかまったく知らないし……」
「あ……そういうこと、ね」
俺は成長させるだけで、あとは二人に任せよう。
「はい、お待たせしましたぁ」
「塩を少しつけながら食べるのよ」
「おぉ、これがサボテンステーキか」
肉厚なボンズの葉っぱは、一枚でLサイズのピザに匹敵する。
その葉は今頃、他の家でもサボテンステーキとして食卓に出ているんだろう。
「白い、んだな」
「皮は堅いですし、凄く苦いので火で焙ってから剥ぐんです」
「生だと半透明の果肉なんだけど、熱を通すとこんな風に白くなるのよ」
「へぇ。初体験だし、最初のひと口はそのまま食べてみよう」
一切れボンズサボテンをフォークに刺して食べてみる。
ん……んー……
「歯ごたえはいいね。シャクシャクっとしてて」
「でしょ」
「でも味はあまりないんですよね。だからお塩を付けるんです」
だよねー。
まったく味がしない訳じゃない。でもどんな味かっていうと、答えられないほど薄味だ。
なーんかに似てるなぁ。
なんだろう?
んー……あ、そうだ。
山芋。あれに似てる。
ってことはもしかして。
インベトリを開いて、ある実を取り出す。
見た目は黒いソラマメ。俺が知ってるものより三倍ほどデカいし、何より黒い。
「ルーシェ、これお願い」
「しょーゆの実ですか? 温めればいいんですよね」
これは醤油だ。ただし液体ではなく、硬めのゼリーに近い。
熱を通すととろりと融けるから、まぁ結局液体の醤油と同じなんだけどさ。
それに気づいたのはこの二人。
俺だけだったら、醤油をゼリーのまま使ってたな。
融けた醤油にボンズサボテンをすこーしだけつけて食べる。
「んっ。やっぱり合う! 二人とも、食べてみて」
「んー……んっ。ほんとだ、塩より断然美味しい」
「このしょーゆ、本当になんでも合いますね。ボンズがこんなに美味しくなるなんて」
「そうだ。醤油の実、まだあるから他の家にも配ってやろう。使い方も説明して」
つける量はほんの少しでいい。
一家に二粒もあれば十分だろう。
醤油の実をテーブルの上に出すと、それを二人が小さなカゴに入れて――
「私たちが行きます」
「あんたは大人しく座って食べてなさい」
「お疲れなんですから」
と、言われてしまった。
……ひとりでご飯……寂しい。
あれ?
なんで寂しいなんて思うんだ?
今までだってひとりだったじゃないか。
両親がいなくなってから、ずっと。
こっちに来て、二人に出会ってからは三人で飯食ってたもんな。
昨日一昨日は大人数で、まるでパーティーのような食事会だったし。
たった数日なのに、誰かと食べることに慣れてしまったなんてなぁ。
「そうよねぇ……」
「何歳なんですかねぇ、このお家」
眩暈を起こすまでスキルを使った後は、体がだるく感じた。
この状態でスキルを何回か使うと、気絶するらしい。
で、今はツリーハウスの中で、ぼぉっと横になっている。
右にはルーシェが、左にはシェリルが同じく横になっていた。
なんか慣れて来たな、この並びにも。
「うぅ、やっぱり木の床に寝転ぶのは、体が痛くなるな」
「ですねぇ。ユタカさん、ベッドでお休みください」
「お昼はこっちで用意してやるわよ。だから大人しく寝てなさいよね」
「了解でありまーす」
体を起こして立ち上がる。
二人を踏まないよう、床に気を付けて――ん?
そう言えば床、木目がくっきり……木目!?
「これだ!」
「ひゃっ」
「ど、どうしましたか?」
「床のこの木目、木の年輪だっ」
「「ねんりん?」」
これ数えて行けば、ある程度の木の年齢が分かるんじゃないか。
真ん中から数え始めると、二人も同じように年輪を数えだした。
「一五五ぐらい」
「私は一六八でした」
「一五〇よ」
「平均して一五七ぐらいかな。結構成長するんだなぁ。まだ大きくなりそうだし」
ってことは、一日にツリーハウスは一本までだな。
「あ……」
「ど、どうしたのっ」
「ユタカさん?」
じ、じぃーっと床見て年輪数えてたから、なんか目が回った。
倦怠感出てるのに目ぇ回したから、余計にどっと疲れた感じだ。
「……寝てなさい」
「寝てください」
「はい。了解であります」
二階に上がってベッドで横になる。
ベッドのマット、もうすこーし厚みがあったらなぁ。
まぁ贅沢は言えないけど。
マットの中身……中身……やっぱり、綿かな?
綿……そうだ!
「インベントリ・オープン」
種、種……あった!
綿の木!
綿の木ってことは、綿花だよな。
杉とかと同じで、これは普通のやつだろう。
綿。これをたくさん成長させれば、マットを分厚く出来るぞ。
それに綿があれば、糸や布だって作れる――はず!
「綿の種があるの!?」
「あれ? 綿を知ってる?」
「知っています。他所の集落で栽培されていますので」
「物々交換で、綿を貰うの。でも去年は収穫量が減ったからって、交換して貰えなかったのよね」
そうか。他の集落とは物々交換で交流しているのか。
「ならツリーハウスの方が落ち着いたら、次は綿花だな」
そう言うと、二人は嬉しそうに顔を見合わせた。
「ユ、ユタカさんは何か欲しいものありますか? 綿の生地で」
「あ、生地っていうか……マットの補強がしたいなと思って」
「やってあげる。だからその……」
二人はもじおじして、なかなか先を言い出せない。
物々交換、か。
「じゃ、マットのほうお願いするよ。代わりに綿、全部やるからさ」
「いいの!?」
「本当ですか!」
「うん。だってさ、俺……綿の加工の仕方とかまったく知らないし……」
「あ……そういうこと、ね」
俺は成長させるだけで、あとは二人に任せよう。
「はい、お待たせしましたぁ」
「塩を少しつけながら食べるのよ」
「おぉ、これがサボテンステーキか」
肉厚なボンズの葉っぱは、一枚でLサイズのピザに匹敵する。
その葉は今頃、他の家でもサボテンステーキとして食卓に出ているんだろう。
「白い、んだな」
「皮は堅いですし、凄く苦いので火で焙ってから剥ぐんです」
「生だと半透明の果肉なんだけど、熱を通すとこんな風に白くなるのよ」
「へぇ。初体験だし、最初のひと口はそのまま食べてみよう」
一切れボンズサボテンをフォークに刺して食べてみる。
ん……んー……
「歯ごたえはいいね。シャクシャクっとしてて」
「でしょ」
「でも味はあまりないんですよね。だからお塩を付けるんです」
だよねー。
まったく味がしない訳じゃない。でもどんな味かっていうと、答えられないほど薄味だ。
なーんかに似てるなぁ。
なんだろう?
んー……あ、そうだ。
山芋。あれに似てる。
ってことはもしかして。
インベトリを開いて、ある実を取り出す。
見た目は黒いソラマメ。俺が知ってるものより三倍ほどデカいし、何より黒い。
「ルーシェ、これお願い」
「しょーゆの実ですか? 温めればいいんですよね」
これは醤油だ。ただし液体ではなく、硬めのゼリーに近い。
熱を通すととろりと融けるから、まぁ結局液体の醤油と同じなんだけどさ。
それに気づいたのはこの二人。
俺だけだったら、醤油をゼリーのまま使ってたな。
融けた醤油にボンズサボテンをすこーしだけつけて食べる。
「んっ。やっぱり合う! 二人とも、食べてみて」
「んー……んっ。ほんとだ、塩より断然美味しい」
「このしょーゆ、本当になんでも合いますね。ボンズがこんなに美味しくなるなんて」
「そうだ。醤油の実、まだあるから他の家にも配ってやろう。使い方も説明して」
つける量はほんの少しでいい。
一家に二粒もあれば十分だろう。
醤油の実をテーブルの上に出すと、それを二人が小さなカゴに入れて――
「私たちが行きます」
「あんたは大人しく座って食べてなさい」
「お疲れなんですから」
と、言われてしまった。
……ひとりでご飯……寂しい。
あれ?
なんで寂しいなんて思うんだ?
今までだってひとりだったじゃないか。
両親がいなくなってから、ずっと。
こっちに来て、二人に出会ってからは三人で飯食ってたもんな。
昨日一昨日は大人数で、まるでパーティーのような食事会だったし。
たった数日なのに、誰かと食べることに慣れてしまったなんてなぁ。