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その後もあおいちゃんは、余裕を持って佐々を止め続けた。オフサイド・トラップやポジショニングの良さで相手を抑える姿は、まさにクレバーさの権化って感じだったね。
ディフェンスが落ち着いて、本来の力を出し始めた女子Aは、終始、攻勢で試合を進めた。ただシュートがバーに弾かれたりと、得点は取れていなかった。
残り時間も五分を切った。女子の11番に寄せられた45番は、苦し紛れのハイ・ボールを放ってきた。俺は、マーク相手の釜本さんと手を使ったポジション争いを繰り広げる。
ボールが落下してきた。俺は釜本さんの肩に腕を乗せて思いっきりジャンプ。釜本さんの勢いを利用してなんとか競り勝った。このゲームで三勝二敗。まあまあの勝率である。
俺のヘディングは、右にいる女子の13番へのパスとなった。プレッシャーを躱すため後ろにトラップした13番は、中の7番にパスする。
7番のワン・トラップ後の楔から、密集地帯でのショート・パスの嵐が始まった。全国に轟く竜神女子サッカー部の、ポゼッション・サッカーの本領発揮である。
「星芝くん!」
「了解!」
あおいちゃんとの、短くもエネルギッシュな遣り取りの後、俺は、再びボールを持った13番に接近した。
13番からパスが出た。軽く身体のフェイントを入れた俺は、低い弾道で大きく逆に蹴り出す。狙いは、細かいパス回しに吊られて手薄になった左サイドである。
前上がり下6番は、ダイレクトで中に落とした。素早い動きでマーカーを振り切った7番がシュート。ボールはゴールの右隅へと飛んでいく。
だが五十嵐さんが右手一本でコート外へと弾き出した。女子Aのコーナー・キックである。
「星芝くん、上がっちゃって大丈夫よ」
面映ゆい表情で俺を見つめるあおいちゃんが、ゆっくりと告げた。
不思議に感じた俺はやんわりと聞き返す。
「マジで良いの? いや、そりゃあ俺も、チャンスがあったら点、取る気でいたけどさ」
「わたしはへっちゃらだよ。なんか、相手が誰でも負ける気がしないもん。それにさ、星芝くんが上がったら、誰かが星芝くんにマークに付くでしょ? 敵の攻撃の枚数を一枚、減らせるよ」
指を一本、立てるあおいちゃんは、未奈ちゃんの威勢が感染ったかのような、力強い言い草だった。
「そんじゃあお言葉に甘えて。遠慮なく行かせてもらいますか」
軽く答えた俺は、爆速ダッシュでコーナーアークへと近づいた。高校初の、ショート・コーナーである。
出されたボールを身体を開いてトラップすると、ゴールとの間に沖原が立ちはだかった。面持ちは固く、半身になった姿勢には隙がなかった。
沖原よ。まだゾーン状態じゃなかったけど、お前も、未奈ちゃんを止めたりしてたね。ちょっとは、自信を付けたかい? 悪いけど俺がその自信、素粒子よりも細かく粉砕しちゃうよ。
俺は一瞬、溜めを作って、右で小さく外に跨ぐ。沖原が吊られた様を見て、右インで突破。だが、すぐさま後続がフォローに来る。
中に目を遣った俺は、マイナス(相手ゴールでなく自ゴールに向かう軌道)の速いボールを転がした。
フリーのあおいちゃんが走り込んでいた。ゴールをちらりと見て、右足で、ミートの瞬間に止めるインフロント・キック。
五十嵐さんが飛び込むも届かず、何度かバウンドしたボールが、ゴールの左、ぎりぎりに決まる。
五対三。技ありシュートで、女子Aのダメ押し。
すぐにあおいちゃんはくるりと向きを変えて、自陣にジョグを始めた。派手なパフォーマンスこそないけど、おっとりした顔の全パーツに喜びが見て取れた。
以後も流れは女子Aで、五対三のままホイッスルが鳴った。
女の子たちもいろんな意味で蘇って、未奈ちゃんの帰ってくる場所を作れた。俺も充分活躍したし。未奈ちゃんの一件を除いたら、文句なしの大団円だね。
その後もあおいちゃんは、余裕を持って佐々を止め続けた。オフサイド・トラップやポジショニングの良さで相手を抑える姿は、まさにクレバーさの権化って感じだったね。
ディフェンスが落ち着いて、本来の力を出し始めた女子Aは、終始、攻勢で試合を進めた。ただシュートがバーに弾かれたりと、得点は取れていなかった。
残り時間も五分を切った。女子の11番に寄せられた45番は、苦し紛れのハイ・ボールを放ってきた。俺は、マーク相手の釜本さんと手を使ったポジション争いを繰り広げる。
ボールが落下してきた。俺は釜本さんの肩に腕を乗せて思いっきりジャンプ。釜本さんの勢いを利用してなんとか競り勝った。このゲームで三勝二敗。まあまあの勝率である。
俺のヘディングは、右にいる女子の13番へのパスとなった。プレッシャーを躱すため後ろにトラップした13番は、中の7番にパスする。
7番のワン・トラップ後の楔から、密集地帯でのショート・パスの嵐が始まった。全国に轟く竜神女子サッカー部の、ポゼッション・サッカーの本領発揮である。
「星芝くん!」
「了解!」
あおいちゃんとの、短くもエネルギッシュな遣り取りの後、俺は、再びボールを持った13番に接近した。
13番からパスが出た。軽く身体のフェイントを入れた俺は、低い弾道で大きく逆に蹴り出す。狙いは、細かいパス回しに吊られて手薄になった左サイドである。
前上がり下6番は、ダイレクトで中に落とした。素早い動きでマーカーを振り切った7番がシュート。ボールはゴールの右隅へと飛んでいく。
だが五十嵐さんが右手一本でコート外へと弾き出した。女子Aのコーナー・キックである。
「星芝くん、上がっちゃって大丈夫よ」
面映ゆい表情で俺を見つめるあおいちゃんが、ゆっくりと告げた。
不思議に感じた俺はやんわりと聞き返す。
「マジで良いの? いや、そりゃあ俺も、チャンスがあったら点、取る気でいたけどさ」
「わたしはへっちゃらだよ。なんか、相手が誰でも負ける気がしないもん。それにさ、星芝くんが上がったら、誰かが星芝くんにマークに付くでしょ? 敵の攻撃の枚数を一枚、減らせるよ」
指を一本、立てるあおいちゃんは、未奈ちゃんの威勢が感染ったかのような、力強い言い草だった。
「そんじゃあお言葉に甘えて。遠慮なく行かせてもらいますか」
軽く答えた俺は、爆速ダッシュでコーナーアークへと近づいた。高校初の、ショート・コーナーである。
出されたボールを身体を開いてトラップすると、ゴールとの間に沖原が立ちはだかった。面持ちは固く、半身になった姿勢には隙がなかった。
沖原よ。まだゾーン状態じゃなかったけど、お前も、未奈ちゃんを止めたりしてたね。ちょっとは、自信を付けたかい? 悪いけど俺がその自信、素粒子よりも細かく粉砕しちゃうよ。
俺は一瞬、溜めを作って、右で小さく外に跨ぐ。沖原が吊られた様を見て、右インで突破。だが、すぐさま後続がフォローに来る。
中に目を遣った俺は、マイナス(相手ゴールでなく自ゴールに向かう軌道)の速いボールを転がした。
フリーのあおいちゃんが走り込んでいた。ゴールをちらりと見て、右足で、ミートの瞬間に止めるインフロント・キック。
五十嵐さんが飛び込むも届かず、何度かバウンドしたボールが、ゴールの左、ぎりぎりに決まる。
五対三。技ありシュートで、女子Aのダメ押し。
すぐにあおいちゃんはくるりと向きを変えて、自陣にジョグを始めた。派手なパフォーマンスこそないけど、おっとりした顔の全パーツに喜びが見て取れた。
以後も流れは女子Aで、五対三のままホイッスルが鳴った。
女の子たちもいろんな意味で蘇って、未奈ちゃんの帰ってくる場所を作れた。俺も充分活躍したし。未奈ちゃんの一件を除いたら、文句なしの大団円だね。