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「喧嘩じゃないよね?」
「えっ?」

放課後。

帰り支度をしていると、みっちゃんから声をかけられた。

多分、今日の朝、三島と変な感じになっちゃったからだろう。

「喧嘩してるようにみえる?」
「んにゃ、見えない」
「だよねー」

三島はいつも通りだった。

まるで昨日のことがなかったかのように。

「でも三島も凪も変は変だよ」
「三島も?」

いつも通りに見えたけど。

「いやぁどう見ても変じゃん。いつもならもっと凪に話しかけてくるじゃん」
「た、たしかに」

言われてみればそうかもしれない。

気まずすぎて顔を見れない話せないの思考一直線だったせいで、向こうからの行動がないことにホッとするので精一杯だった。

「それに極めつけは」

昇降口へとついたところで、ほら、と顎で示された先。

「あ、傘」

三島が傘を持って、クラスの男の子たちと一緒に帰っているところだった。

"今日は曇りのち雨で不安定な天気でしょう"

朝聞いた天気予報士の言葉を思い出す。
それは実際その通りで、朝は曇りで雨は降っていなかった。
そして今、パラパラと降っている雨。

まさに抜群の、絶好の日だった。いつもなら。

「ま、喧嘩じゃないなら大丈夫でしょ」
「……大丈夫だといいけどね」

どこか他人事のように答えた私に、元気出しな!と背中を叩かれる。

「大丈夫だよ!」
「……ありがどうぅ」

どこまでも頼りになる親友に、心の底から感謝した。