それが嫌だったと語るふゆ樹に、呆れと怒りでななは短く息を吐いた。
八つ当たりに他ならないことはわかっている。それでも開いた口から溢れる言葉を止められなかった。


「そんな理由で大学選んだの?自分の将来の為とか、やりたいことがあったからじゃなくて、そんな理由で?」


言葉の中に含まれた怒気を感じ取ったのか、ふゆ樹が困惑した顔で恐る恐る頷く。
また溢れそうになった言葉をぐっと押し込めるように口を閉じると、ななは無言で鞄を抱えて立ち上がった。


「なーちゃん……?」


困ったような顔で問いかけるふゆ樹を、見ないようにしてぼそりと呟く。


「やりたいことがあって、才能だってあるのに……見損なった」


理由のわからない怒りに、あわあわと慌て出すふゆ樹を無視して、段々と近づいてくるバスを睨みつけるようにして見つめる。


「なーちゃん、怒ってる?ほんとに、ごめんね」


何とかして機嫌を直してもらおうと、しゅんっと眉を下げて謝る姿が横目に見えるが、ななは振り返らないままで冷たく言い放つ。


「何が悪いかもわかってないのに、適当に謝らないで」