地図を眺める。
だいぶゲレンネルに近づいてきたなとテシアは思った。
途中善いことをしようとキリアンが子供のお願いを安請け合いして町中猫を探したり、キリアンがおばあちゃんを助けようと畑を丸々耕すことになったりと色々あった。
それでも余裕を見て旅をしているので大変だったということ以外に問題はなかった。
「ちなみに聞いていなかったのですがゲレンネルに着いた後はどうするのですか?」
ひとまずゲレンネルの大神殿に行くことは聞いている。
しかしその後の予定というものはキリアンは知らなかった。
ゲレンネルの大神殿でお別れということになればまだ恩も返していないのにと思った。
キリアンは割と感情が分かりやすい。
そのためだろうかシュンとした犬耳が見えるような気がする。
「グレンネルの大神殿に着いたら身を清めてお祈りを捧げる。数日かけてお祈りを捧げた後は次の大神殿に向かうよ」
「次の大神殿……」
旅を続ける。
喜んだ顔をするかなと思ったらキリアンはやや複雑そうな表情を浮かべた。
「タルアニアの大神殿に向かうのですか?」
「最終的にはタルアニアの大神殿にも向かうけど予定としてはシュタルツハイターの大神殿に向かおうと思っている」
グレンネル、シュタルツハイター、そして三つ目の大神殿があるのがタルアニアである。
地理的にはグレンネルからシュタルツハイターの方が近い。
なのにどうしてタルアニアの方が先に名前が上がったのだろうと少し疑問に思った。
一方でキリアンは少しホッとしたような顔をしている。
タルアニアにキリアンに関わる何かがあるかもしれないとテシアとハニアスは視線を合わせた。
「シュタルツハイターですか! 俺は行ったことありませんが良い国だと聞きますね」
「まあ僕もシュタルツハイターには興味があるよ。だけどまずは目の前のゲレンネルだ」
「そうですね」
また尻尾を振っている。
「ふふっ」
「何がおかしいんですか?」
「いや、おっきな犬がいてね」
「犬ですか?」
キリアンが振り返ってみるがもちろん犬などいない。
また不思議なことを言っているとキリアンは首を傾げた。
「キリアンは犬は好きかい?」
「ええ、実家では飼っていたこともありました」
「僕も犬は好きだよ」
「私は猫派です」
「ハニアスはちょっと猫っぽいもんね」
「あっ、分かります」
「そうですか?」
ーーーーー
特に問題もなくゲレンネルまで後1日ほどの距離にきた。
「くぅ……こう野宿が続くとベッドが恋しくなるね」
ゲレンネルと一つ前の町までの間が開いていて泊まれる宿がなかった。
一日二日なら野宿をしてもなんともないのだけど数日に及ぶと宿のベッドが欲しくなる。
進むのを早めにやめて枝を集めて野営の準備をした。
日が落ちて空が黒く塗りつぶされていく。
しかし後一日歩けばゲレンネルにたどり着く。
教会にだって空き部屋はあるだろうし仮に空き部屋がなくても宿はある。
まともな部屋には泊まることができる。
「それではお先にどうぞ」
「そうさせてもらうよ」
今日の最初の火の番はハニアス。
テシアはさっさと寝てしまおうとテントに向かった。
「ん?」
テシアの足元に何かが飛んできた。
「筒?」
木で作られた筒のようなもの。
テシアはこれはどこから飛んできたものかと周辺を警戒する。
「うっ!」
急に筒の中から爆発するように白い煙が噴き出した。
「テシア様!」
「この臭い……ハニアスさんダメです!」
白い煙に包まれてテシアの姿が見えなくなる。
異常事態にハニアスがテシアのところに駆け寄ろうとしたがキリアンがそれを止めた。
「息を止めてください!」
「どうして……」
「これは毒です!」
「えっ……じゃあ!」
「死にはしません! イスマソウという相手の意識を混濁させる効果があるものです! 今近寄ればハニアスさんも気を失ってしまいます!」
独特の酸味があるような香り。
キリアンはそれを嗅いだ覚えがあった。
毒だと聞いたなら尚更テシアを助けに行かねばならないとハニアスは焦るが、まだ白い煙は漂っているので行かせられないキリアンが制する。
「危ない!」
キリアンが剣を抜いて二度降った。
切り裂かれた二本の矢が地面に落ちてハニアスは驚きに目を見開いた。
「何者だ!」
キリアンの声が闇に溶けていくのと同時に黒装束の男が飛び出してきた。
キリアンは黒装束の男の剣を受けて切り返す。
飛び退いてキリアンの剣をかわした黒装束の男の後ろから別の黒装束の男が飛び出してくる。
連携を取って2人でキリアンに攻めかかる。
「テシア様!」
白い煙が晴れてくるとテシアの姿が見えた。
地面に倒れたテシアを口を布で覆った男たちが連れ去ろうとしているところだった。
「キリアン様!」
「分かっている! ふっ!」
2人から繰り出される攻撃をキリアンは受けきって、大きく踏み込んで反撃に剣を振る。
黒装束の男の首が飛ぶ。
「なっ……」
「逃すか!」
攻めるか引くかの迷いがもう1人の黒装束の男に生じた。
その隙を見逃さずにキリアンが黒装束の男の手を切り落とした。
「ぐわああっ!」
そして容赦なく袈裟斬りにする。
「テシアさん……ハニアスさん!」
テシアの方に振り返ろうとしたキリアンは暗闇の中でキラリと光るものを見た。
だいぶゲレンネルに近づいてきたなとテシアは思った。
途中善いことをしようとキリアンが子供のお願いを安請け合いして町中猫を探したり、キリアンがおばあちゃんを助けようと畑を丸々耕すことになったりと色々あった。
それでも余裕を見て旅をしているので大変だったということ以外に問題はなかった。
「ちなみに聞いていなかったのですがゲレンネルに着いた後はどうするのですか?」
ひとまずゲレンネルの大神殿に行くことは聞いている。
しかしその後の予定というものはキリアンは知らなかった。
ゲレンネルの大神殿でお別れということになればまだ恩も返していないのにと思った。
キリアンは割と感情が分かりやすい。
そのためだろうかシュンとした犬耳が見えるような気がする。
「グレンネルの大神殿に着いたら身を清めてお祈りを捧げる。数日かけてお祈りを捧げた後は次の大神殿に向かうよ」
「次の大神殿……」
旅を続ける。
喜んだ顔をするかなと思ったらキリアンはやや複雑そうな表情を浮かべた。
「タルアニアの大神殿に向かうのですか?」
「最終的にはタルアニアの大神殿にも向かうけど予定としてはシュタルツハイターの大神殿に向かおうと思っている」
グレンネル、シュタルツハイター、そして三つ目の大神殿があるのがタルアニアである。
地理的にはグレンネルからシュタルツハイターの方が近い。
なのにどうしてタルアニアの方が先に名前が上がったのだろうと少し疑問に思った。
一方でキリアンは少しホッとしたような顔をしている。
タルアニアにキリアンに関わる何かがあるかもしれないとテシアとハニアスは視線を合わせた。
「シュタルツハイターですか! 俺は行ったことありませんが良い国だと聞きますね」
「まあ僕もシュタルツハイターには興味があるよ。だけどまずは目の前のゲレンネルだ」
「そうですね」
また尻尾を振っている。
「ふふっ」
「何がおかしいんですか?」
「いや、おっきな犬がいてね」
「犬ですか?」
キリアンが振り返ってみるがもちろん犬などいない。
また不思議なことを言っているとキリアンは首を傾げた。
「キリアンは犬は好きかい?」
「ええ、実家では飼っていたこともありました」
「僕も犬は好きだよ」
「私は猫派です」
「ハニアスはちょっと猫っぽいもんね」
「あっ、分かります」
「そうですか?」
ーーーーー
特に問題もなくゲレンネルまで後1日ほどの距離にきた。
「くぅ……こう野宿が続くとベッドが恋しくなるね」
ゲレンネルと一つ前の町までの間が開いていて泊まれる宿がなかった。
一日二日なら野宿をしてもなんともないのだけど数日に及ぶと宿のベッドが欲しくなる。
進むのを早めにやめて枝を集めて野営の準備をした。
日が落ちて空が黒く塗りつぶされていく。
しかし後一日歩けばゲレンネルにたどり着く。
教会にだって空き部屋はあるだろうし仮に空き部屋がなくても宿はある。
まともな部屋には泊まることができる。
「それではお先にどうぞ」
「そうさせてもらうよ」
今日の最初の火の番はハニアス。
テシアはさっさと寝てしまおうとテントに向かった。
「ん?」
テシアの足元に何かが飛んできた。
「筒?」
木で作られた筒のようなもの。
テシアはこれはどこから飛んできたものかと周辺を警戒する。
「うっ!」
急に筒の中から爆発するように白い煙が噴き出した。
「テシア様!」
「この臭い……ハニアスさんダメです!」
白い煙に包まれてテシアの姿が見えなくなる。
異常事態にハニアスがテシアのところに駆け寄ろうとしたがキリアンがそれを止めた。
「息を止めてください!」
「どうして……」
「これは毒です!」
「えっ……じゃあ!」
「死にはしません! イスマソウという相手の意識を混濁させる効果があるものです! 今近寄ればハニアスさんも気を失ってしまいます!」
独特の酸味があるような香り。
キリアンはそれを嗅いだ覚えがあった。
毒だと聞いたなら尚更テシアを助けに行かねばならないとハニアスは焦るが、まだ白い煙は漂っているので行かせられないキリアンが制する。
「危ない!」
キリアンが剣を抜いて二度降った。
切り裂かれた二本の矢が地面に落ちてハニアスは驚きに目を見開いた。
「何者だ!」
キリアンの声が闇に溶けていくのと同時に黒装束の男が飛び出してきた。
キリアンは黒装束の男の剣を受けて切り返す。
飛び退いてキリアンの剣をかわした黒装束の男の後ろから別の黒装束の男が飛び出してくる。
連携を取って2人でキリアンに攻めかかる。
「テシア様!」
白い煙が晴れてくるとテシアの姿が見えた。
地面に倒れたテシアを口を布で覆った男たちが連れ去ろうとしているところだった。
「キリアン様!」
「分かっている! ふっ!」
2人から繰り出される攻撃をキリアンは受けきって、大きく踏み込んで反撃に剣を振る。
黒装束の男の首が飛ぶ。
「なっ……」
「逃すか!」
攻めるか引くかの迷いがもう1人の黒装束の男に生じた。
その隙を見逃さずにキリアンが黒装束の男の手を切り落とした。
「ぐわああっ!」
そして容赦なく袈裟斬りにする。
「テシアさん……ハニアスさん!」
テシアの方に振り返ろうとしたキリアンは暗闇の中でキラリと光るものを見た。