「――好きなんだ。清水(しみず)のこと」
 それは、高校一年生のときだった。
 私はクラスメイトの男子から、告白された。
 告白してくれた子の名前は音無(おとなし)優希(ゆうき)くん。
 明るくて優しくて、クラスにあぶれてる子がいたら、真っ先に声をかけにいくような、すごく思いやりがある子。
 男女問わず好かれてる人気者。
 そんなひとが、どうして私なんかを選んだんだろう。
 私より可愛い子も、きれいな子も優しい子も、頭のいい子だってたくさんいるのに。
 私は、私がきらい。
 だいっきらい。
 ――だって。
 意思も夢もなくて、
 いつもだれかの顔色をうかがって、
 本当の友達なんてひとりもいやしない私に、好きになる要素なんてある?
 私でさえ愛せない私を、好き?
 なにそれ。冗談でしょ。
 私を好きだとかいうひとなんて有り得ない。信じられない。
「ごめんなさい。私今は勉強以外のことあまり考えられなくて……」
「……そ、そっか」
 うん、分かった。じゃあ、これからも友達としてよろしくな。
 音無くんはそう言って、ぎこちなく笑った。
 紅葉が色付く秋のことだった。