のかという、授業内容についても触れた。
 機能解剖学とやらを中心に授業を進めていくらしかった。あまり専門的な言葉こそ飛び出してこなかったが、今の僕には難しい内容を勉強するのだということは十分に理解できた。
 オープンキャンパスでは講師と一対一になって質問をする時間も設けられていた。そこで試しに教科書も見せてもらったが、一ページ目から既に難しそうな事ばかりが書かれていた。
 大きく人体模型の写真が載せられており、各所に番号が振られている。その番号に対応した筋肉や骨の名称が隣のページに記されているのだが、その数が恐ろしく多かった。全部を合わせると、一〇〇や二〇〇で収まるものではない。
「こうした基礎的な知識から始めて、行く行くは様々な現場で即戦力になれる人材を生み出すことこそ、我が校の到達点なんです」
 女性講師はその一言で締め括った。そして持参していた水筒を手に取って、ゆっくりと中に入っていたお茶を喉に流し込んだ。僕が考えを整理する時間を作ろうとしているのか、その動作はやけにゆっくりと行われた。
 僕は次に、女性講師が「いかがですか?」などと言って感想を聞き出そうとするに違いないと予想した。そして予想は的中した。「いかがですか?」という寸分違わぬ疑問系が彼女の口から飛び出した。
 僕は台本を読みながらスピーチをするような気持ちで、予め考えていた内容を女性講師に話した。
「初めて聞く話が多くて、すごく驚きました。医療とかスポーツとか、あんまり詳しくないんですけど、聞いているうちに興味が湧いてきました。今日は来て良かったです」
 世辞の混じった感想を伝えると、女性講師は綺麗な笑みを浮かべた。これまで人を疑ったことなどなさそうな、感じの良い笑顔だった。彼女は僕に「最初はみんなわからないものなんですから、気にしなくてもいいですよ」と言った。理由はないが、彼女のその言葉はただの社交辞令を口にしているように感じた。
 そんな学校に、僕は入学を決意した。正直な所胡散臭い部分が無いではなかったのだが、だからと言って他にやりたいこともない。両親からはどこでもいいから進学をしろと言われていたし、場所も近くて通いやすいという理由で入学することにした。
 オープンキャンパスに行き、話を聞いてから入学を決めるまでの出来事は全て、高校三年生の一〇月から一二月までの間に起こった。年を越す前には、必要な書類の提出も済ませていた。
 その頃の同級生たちは、大学受験のために勉強に明け暮れる人や、何らかの事情で就職を決め、内定をもらった人たちがいた。実に多種多様といった具合で、皆自らの将来について悩んだり、努力を重ねて生活を送っていた。
 僕は大して悩みもせず、特にこれといった努力もせずに専門学校へ行