次の週末は廸を僕の部屋に誘った。僕は無性に廸が抱きたかった。廸は僕の意図が分かったと思う。

今日は朝早く目が覚めた。すぐに部屋の大掃除をする。浴室のバスタブ、トイレもきれいにした。廸に不快感を与えたくない。

それから10時ごろから買い物に出かけた。冷食をそろえておいた。また、ワインや缶ビール、缶チューハイなどのお酒やつまみになるもの、ケーキやアイスクリームなど、廸が好きそうなものを買いそろえた。約束の時間は2時だから時間的な余裕は十分にあった。

今日はゆっくり二人で楽しみたい。夢中になりたい。覚えかけのセックスに二人でのめり込みたい。廸もそう思ってくるに違いない。どうしようか、あれやこれやと考えるのが僕の悪い癖だ。自然に欲するままに振舞えばよい。そう思い直している。

すぐに2時になった。ほぼ同時にドアホンが鳴る。廸だと確認して玄関を解錠する。ほどなく部屋に到着するので、ドアを開けて待っている。微笑んだ廸が歩いてくる。手には小さなバッグを持っている。

泊まっていく準備をしてきてくれた。それが分かると嬉しかった。僕は廸みたいに女子のパジャマを買い求めることはできなかった。廸を部屋の中に入れる。

リビングへ向かう途中に後ろから抱き締める。今日はそうしようと思っていた。このまえはできなかったが、今度は自然にできた。廸は分かっていたかのように驚かなかった。ただ、すぐに立ち止まって、抱きしめた僕の手をつかんだ。

二人とも落ち着いていた。まるでお互いに予測どおりの動作だった。僕は彼女の向きを変えてキスをする。待っていたかのように廸は強く抱きついてくる。舌が絡み合う。もう我慢ができなくなって寝室へ倒れ込む。

それからしばらくは主導権を争いながら気の済むまで激しく愛し合う。この時の廸は大胆だが、その後の恥じらいとのギャップが大きすぎる。でもそんな廸が大好きだ。僕と性格が似ている。そう思えてならない。僕は大胆になれる自分が好きになっている。そうさせてくれるのも廸だと分かっている。

二人同時に上りきって眠りに落ちていく。心地よい疲労が眠りを誘う。抵抗することなく二人はそこへ落ちていく。幸せというか快感というか、それに満ちた眠りが好きだ。そんな時、二人はただお互いに触れあっているだけだ。それだけで安心感がある。

ひと時の眠りから覚めた時、廸は恥じらい、僕は照れている。布団の中で廸が目を覚ますと遠慮がちに僕に抱きついてくるから分かる。それがとても愛おしい。

布団の中をのぞくと恥じらった目で僕を見上げている。その目をみたらもう抱きしめずにはいられない。

二人抱き合ってもう一度眠りに落ちていく。安心感というか満足感に浸りながら、また眠りに落ちる。これが実に心地よい。彼女の身体の温かみを感じながら眠りに落ちていく。廸の手から力が抜けていく。彼女もまた安心の眠りに落ちていく。

二人が再び目覚めたとき、部屋はもうすっかり暗くなっている。ずいぶん眠ったみたいだった。一晩ぐっすり眠ったくらいの感じがする。いつもの目覚めと同じ感覚だ。

「よく眠れました」

「ああ、僕も。お腹が空いたね。何か食べよう。その前にシャワーを浴びたい」

「私も」

「じゃあ、一緒に」

僕たちは裸で浴室へ向かう。季節柄寒さは全く感じない。バスタブの中でシャワーをかけあって洗う。廸の裸身を明るいところでみるのは初めてだ。僕がじっと見ていると恥ずかしがる。

「あまり、じろじろ見ないで下さい。恥ずかしいです」

「きれいだから見とれていただけだ」

恥じらいの廸が戻ってきている。シャワーで温まったところで外へ出てバスタオルを身体に巻いて寝室へ戻って着替えをした。廸は持ってきた部屋着に変えていた。僕も部屋着に着替えた。

「着替えを持ってきてくれたんだ。君の部屋着を準備できなくてごめん。この前はぼくのために準備してくれてありがとう」

「女子のパジャマを買うなんてできないでしょう。当たり前です。それよりお腹が空きました。食べ物は用意してくれているのでしょう?」

「ああ、冷食をそろえておいた。ケーキやアイスクリームも」

「冷凍のおにぎりある? それとアイスクリームが食べたい」

僕はすぐに準備を始める。これからどうしようか? よいけいなことを考え始める。僕の悪い癖だ。成り行きに任せればよいと言いきかせる自分がいる。

廸はおいしそうにおにぎりを頬ばって食べている。僕もお付き合いで食べている。お腹が空いているのでおいしい。2つずつ食べた。

それから何種類かあるアイスクリームから廸に選んでもらう。廸はいつも食べているというアイスを選んだ。僕はさっぱりしたジュース系のアイスにした。熱が籠った身体をアイスで冷やしているんだ。そう思った。

それから二人はソファーに座ってお互いにもたれ合う。身体を寄せ合っているだけでなぜか幸せな気持ちになる。

お互いの身体の温もりを感じると眠くなってくる。こんな満ち足りた眠りがあるだろうか? また、すぐに眠ってしまったようだ。

気が付くと二人は毛布を掛けて寝ていた。廸が毛布を持ってきてかけてくれたみたいだ。廸も僕に寄りかかって気持ちよさそうに眠っている。満ち足りた寝顔だ。つい見とれてしまう。廸の身体の心地よい暖かさを感じながら僕はまた眠ったみたいだ。

眠っていた僕に廸が覆いかぶさってきたので目が覚めた。廸が寝ぼけている訳はない。気持ちの赴くままに抱きついているのは察しがついた。もうすっかり暗くなっているので、リモコンでリビングの明かりをつけた。一瞬、廸はたじろいだが、思い切り抱きついてくる。

ここはそれに応えてやらなくてはならない。明るい中で僕たちは夢中になった。明るいとすべてがみえて興奮を助長する。廸は恥ずかしがるどころか大胆になってくる。激しい絡み合いが続く。絶え間ない快感が身体を駆け巡る。廸の押し殺した喘ぎ声が僕を興奮させ大胆にさせる。

廸ががっくりして床に伏せた。その上からこれでもかと責め続ける。もう廸はぐったりして反応しなくなっている。廸を抱え上げて、寝室のベッドまで運んだ。廸はうわごとのように「身体が怠い」「腰が怠い」といって抱きついていた。その抱きついて腕を解いて寝かしつける。

でも解いても解いても廸の腕が僕の首に絡みついてくる。観念して二人寝転んで布団をかぶる。そして廸を抱きしめる。ようやく安心したのか、廸は脱力して眠りに落ちていった。

僕たちは朝まで眠り続けた。でも気がつくと廸は横にいなかった。この前もそうだった。きょろきょろしていると、ドアが開いた。

「おはよう。朝食の準備ができています」

廸がドアの隙間から顔を出す。もうすっかり身支度もしてしまっているようだった。

「朝、お腹が空いて目が覚めました。一緒に食べましょう」

抱き合って目覚めたかったのに、また遅れをとってしまった。まあ、廸が元気なのがなによりだ。身支度をして朝の食卓についた。

廸は晴れ晴れしていていつもより綺麗になった気がする。セックスは女性を綺麗すると聞いたことがある。買ってあった冷食がご馳走になっている。廸が一手入れてく入れたせいだろう。結婚したらこんな朝になるんだろうな、いいもんだ。