陽子に真実を告げてから数日後。
信は玲奈達を見張る様に指示していた使いである烏から報告を受けた。
それは、明日の新月の夜に和正と玲奈の婚姻の儀を執り行われるという情報だった。陽子の父親は、信に言われた通りに動いたようだ。
(あの男、ちゃんと言う通りにしてくれたな。新月は結晶を活発化させる。都合が良い)
陽子に見せた黒い結晶はあるあやかしの恨みと復讐の具現化した闇そのモノ。月の光を失った夜に力を増し対象者に永遠の苦痛を与える。遂にこの結晶を使う時が来たのだ。
すると、信を呼びに紅葉が部屋にやってきた。
「ご主人様。陽子様の準備ができました」
「わかった。すぐに行く」
「遂に果たされるのですね。お父上殿との約束と蛇神様の復讐が」
「ああ。復讐を果たし、そして、陽子が奪われた全てを取り戻す。必ず」
信の決意と強さがこもった言葉と声に紅葉から不安が払拭された。
「……どうかお気を付けて」
「ありがとう。それじゃ行ってくる」
紅葉は信の頼もしい背中を見送った。
信に迷いはない。全ては愛する陽子との未来の為。悪しき根は取り除かねば。
着飾った陽子を連れて信は偽巫女の婚姻の儀が行われる村はと向かう。
「陽子?」
「…ごめんなさい…怖いんです。追放されたはずの私を見てなんて言うのか…」
恐怖で青ざめる陽子の手を信は"大丈夫僕がいる"とぎゅっと握る。陽子は少し目を見開くも、その真意を察し手を握り返した。
「信様…」
「大丈夫。僕がいる。僕が全力で陽子を守る。必ず全て取り戻すんだ。名誉と異能。そして、君のお母さんの形見を」
「っ…!!はい…!!」
愛する人の言葉と手を握る強さが陽子を勇気付かせる。その様子を見て信は満足そうに微笑んでいた。
2人は暖かい春の風を纏いながら玲奈の婚姻の儀へと向かうのだった。
一方玲奈達が住む屋敷では、婚姻の儀に参列する者達が大勢集まっていた。玲奈はその様子を白無垢姿で襖の間から眺めていた。
「和正さん。私達ようやく結ばれるのね…」
「そうだな玲奈。とても楽しみだよ」
「本当ならこの子も一緒だったのに」
玲奈は悲しげな顔で腹をさする。
その様子を見ていた和正は、陽子に盛られたとされる毒のせいで亡くなった我が子を思い胸が痛くなった。けれど、その辛さを糧に彼女と共に幸せになるのだと決意させた。
そっと玲奈を抱き寄せる。
「悲しむのはこれで最後にしよう。この子の分も幸せになろう。この子の兄弟も産んでもっともっと幸せになるんだ僕達は」
「和正さん…!!そうね。そうよね。これ以上悲しんでられないわよね…!!」
玲奈は嬉しそうに和正の背中に手を回した。
龍神の巫女となり、村の顔になった妻の姿に誇りを感じた和正は、早く自分も宮司という神職を父親から継ぎ、彼女の助けになりたいと願っていた。
だが、和正は盲目過ぎた。巫女の務めを他人に任せていることも、陽子から奪った異能も本来の施すべき者に行き届いていないのも、巫女として認めていない人間を排除していることを全く信じようとしなかった。
(早くぐちゃぐちゃになって見つかってね。お姉様。私は和正さんと幸せになるからぁ♪
和正に見えないことをいいことに玲奈は我欲に染まった歪な笑みを浮かべていた。
玲奈の本性を知らないまま婚姻の儀が始まろうとしていた。
(龍神ってどんな方なのかしら?もし、和正さんよりかっこ良かったらどうしよう♪)
信は玲奈達を見張る様に指示していた使いである烏から報告を受けた。
それは、明日の新月の夜に和正と玲奈の婚姻の儀を執り行われるという情報だった。陽子の父親は、信に言われた通りに動いたようだ。
(あの男、ちゃんと言う通りにしてくれたな。新月は結晶を活発化させる。都合が良い)
陽子に見せた黒い結晶はあるあやかしの恨みと復讐の具現化した闇そのモノ。月の光を失った夜に力を増し対象者に永遠の苦痛を与える。遂にこの結晶を使う時が来たのだ。
すると、信を呼びに紅葉が部屋にやってきた。
「ご主人様。陽子様の準備ができました」
「わかった。すぐに行く」
「遂に果たされるのですね。お父上殿との約束と蛇神様の復讐が」
「ああ。復讐を果たし、そして、陽子が奪われた全てを取り戻す。必ず」
信の決意と強さがこもった言葉と声に紅葉から不安が払拭された。
「……どうかお気を付けて」
「ありがとう。それじゃ行ってくる」
紅葉は信の頼もしい背中を見送った。
信に迷いはない。全ては愛する陽子との未来の為。悪しき根は取り除かねば。
着飾った陽子を連れて信は偽巫女の婚姻の儀が行われる村はと向かう。
「陽子?」
「…ごめんなさい…怖いんです。追放されたはずの私を見てなんて言うのか…」
恐怖で青ざめる陽子の手を信は"大丈夫僕がいる"とぎゅっと握る。陽子は少し目を見開くも、その真意を察し手を握り返した。
「信様…」
「大丈夫。僕がいる。僕が全力で陽子を守る。必ず全て取り戻すんだ。名誉と異能。そして、君のお母さんの形見を」
「っ…!!はい…!!」
愛する人の言葉と手を握る強さが陽子を勇気付かせる。その様子を見て信は満足そうに微笑んでいた。
2人は暖かい春の風を纏いながら玲奈の婚姻の儀へと向かうのだった。
一方玲奈達が住む屋敷では、婚姻の儀に参列する者達が大勢集まっていた。玲奈はその様子を白無垢姿で襖の間から眺めていた。
「和正さん。私達ようやく結ばれるのね…」
「そうだな玲奈。とても楽しみだよ」
「本当ならこの子も一緒だったのに」
玲奈は悲しげな顔で腹をさする。
その様子を見ていた和正は、陽子に盛られたとされる毒のせいで亡くなった我が子を思い胸が痛くなった。けれど、その辛さを糧に彼女と共に幸せになるのだと決意させた。
そっと玲奈を抱き寄せる。
「悲しむのはこれで最後にしよう。この子の分も幸せになろう。この子の兄弟も産んでもっともっと幸せになるんだ僕達は」
「和正さん…!!そうね。そうよね。これ以上悲しんでられないわよね…!!」
玲奈は嬉しそうに和正の背中に手を回した。
龍神の巫女となり、村の顔になった妻の姿に誇りを感じた和正は、早く自分も宮司という神職を父親から継ぎ、彼女の助けになりたいと願っていた。
だが、和正は盲目過ぎた。巫女の務めを他人に任せていることも、陽子から奪った異能も本来の施すべき者に行き届いていないのも、巫女として認めていない人間を排除していることを全く信じようとしなかった。
(早くぐちゃぐちゃになって見つかってね。お姉様。私は和正さんと幸せになるからぁ♪
和正に見えないことをいいことに玲奈は我欲に染まった歪な笑みを浮かべていた。
玲奈の本性を知らないまま婚姻の儀が始まろうとしていた。
(龍神ってどんな方なのかしら?もし、和正さんよりかっこ良かったらどうしよう♪)