〈神楽坂大地side〉
 僕は、小さい時に人を亡くした。
 全然面識のなかった人だけど、僕のせいでその人の人生を奪ってしまった事に対しては、すごく申し訳なく思い、泣いた。
 そこから、僕の人生はずっと霧のかかったような場所で生きていく事となった。多分、無気力ってやつだろう。
 そして、僕は大切な人は作らないって決めた。僕のせいで死なせてしまったら、申し訳ないし、そもそも何が原因であろうといなくなってしまったら、とても悲しい。
 もう僕は悲しい思いはしたくない。だから、ずっとこのままでいいんだ。

 〈春原光莉side〉
 私は耳が聴こえない。
 それを誇りに思った事はないけれど、個性だと思って生きている。
 今まで、自分の周りに耳が聴こえない人がいる事は当たり前だった。そんな中で今まで生きてきた。
 だけど、ふと思ったの。本当にこのままでいいのだろうかと。逃げていても、いつかはきっと大きな壁にぶち当たる。そう考えた時に、私は果たして乗り越えられるのだろうか。
 そう思ったから、私はあの選択をした。