「!」
「永!?」
永の「嫌だ」と言う答えにショックを受けた鈴心は固まってしまった。蕾生もぎょっとして狼狽える。
そんな二人に冷たい視線を投げて永は言った。
「僕らに彼女を助ける義理はないし、詮充郎の実験に手を貸すのも御免だよ」
「詮充郎にはまだ報告していません! 全てお兄様が主導でなさっています」
鈴心の必死の訴えは、更に永を苛立たせた。
「そのさあ、『お兄様』って言うのなんなの? あいつは詮充郎の孫だろ? おれ達の敵だ」
「あ……」
「おれは不安なんだよ、リン。お前は今回銀騎の家に心を寄せすぎている。身内として生まれてしまったからある程度は仕方ないと思ってたけど、今のお前を見てると嫌な想像をしてしまう」
きっとずっと我慢していたのだろう、永は不満を意地悪く吐き出した。
「私が、銀騎側につくと……?」
鈴心は驚いて永の思惑を反芻する。鈴心にしても永がそんなことを考えていたとは思っていなかったから、驚きとともに落胆していた。
「永、それは──」
言い過ぎだ、と蕾生が言う前に鈴心は悲痛な声で言う。
「ハル様、星弥を助けてくれたら私は銀騎と訣別します。皓矢……も敵とみなすと、誓います」
そんな言葉を言わせるな。
蕾生は鈴心が不憫でならなかった。
だが永が無表情で鈴心を追い詰める。
「その証は?」
「それは──」
鈴心が正解を懸命に探して言葉に詰まる。
その姿に蕾生の中で何かが、切れた。
「永、いいかげんにしろ!」
「!!」
蕾生が力任せに机を叩きヒビが入る。その音と蕾生の大声に永は肩を震わせた。
「リンをあいつらに良いようにされて悔しいのはわかる! でもそれとリンを疑うのは違うだろ!」
「……」
だってそれはどうしようもない。自分達は運命に翻弄され続けている。それを永は充分わかっているはずなのに。
「リンまで信じられなくなったら、お前は終わるぞ……?」
何故、こんな責めるような言葉しか出ないのだろう。
これは永の救援信号だってわかっている。
それでも、永には前を向いて欲しい。俺達の導であって欲しい。
「……」
黙ったままの永と蕾生に、鈴心はなんとか言葉を紡ごうとした。
「ライ……私は──」
「んんん、ごめんっ!!」
すると永が突然手を合わせて頭を下げた。
鈴心は驚いて出かけた言葉を引っ込める。
「リン、ごめん! 今のナシ! 僕の浅はかなジェラシーでした!」
「え、あ……」
鈴心はまだ困惑しているが、蕾生は永の様子に安心して息を吐いた。
さすが永だ。もう大丈夫。
「よし、じゃあ、行くな?」
蕾生が確認すると、永は耳を赤らめて言った。
「う……醜態をさらしたからね、仕方ないな。あ、ジジイには会わないからね!? 役目が終わったらすぐ帰るからね!」
「はい……はい!」
鈴心は涙目になって何度も頷いた。
「行くぞ」
蕾生の言葉に力強く永は言う。
「眠り姫を助けに、ね」
「今更かっこつけんな」
「えー、厳しいッ!」
いつも通り永がおちゃらければ元通りだ。蕾生は笑いながら少し泣いた。
永はいつもそうやって俺達を鼓舞し続けてくれる。だから、踏ん張れる。
「──ありがとう」
鈴心が背中に向けて言った言葉も、もちろん届いている。
気にするなと改めて言う必要はない。
俺達はずっと仲間なのだから。
「永!?」
永の「嫌だ」と言う答えにショックを受けた鈴心は固まってしまった。蕾生もぎょっとして狼狽える。
そんな二人に冷たい視線を投げて永は言った。
「僕らに彼女を助ける義理はないし、詮充郎の実験に手を貸すのも御免だよ」
「詮充郎にはまだ報告していません! 全てお兄様が主導でなさっています」
鈴心の必死の訴えは、更に永を苛立たせた。
「そのさあ、『お兄様』って言うのなんなの? あいつは詮充郎の孫だろ? おれ達の敵だ」
「あ……」
「おれは不安なんだよ、リン。お前は今回銀騎の家に心を寄せすぎている。身内として生まれてしまったからある程度は仕方ないと思ってたけど、今のお前を見てると嫌な想像をしてしまう」
きっとずっと我慢していたのだろう、永は不満を意地悪く吐き出した。
「私が、銀騎側につくと……?」
鈴心は驚いて永の思惑を反芻する。鈴心にしても永がそんなことを考えていたとは思っていなかったから、驚きとともに落胆していた。
「永、それは──」
言い過ぎだ、と蕾生が言う前に鈴心は悲痛な声で言う。
「ハル様、星弥を助けてくれたら私は銀騎と訣別します。皓矢……も敵とみなすと、誓います」
そんな言葉を言わせるな。
蕾生は鈴心が不憫でならなかった。
だが永が無表情で鈴心を追い詰める。
「その証は?」
「それは──」
鈴心が正解を懸命に探して言葉に詰まる。
その姿に蕾生の中で何かが、切れた。
「永、いいかげんにしろ!」
「!!」
蕾生が力任せに机を叩きヒビが入る。その音と蕾生の大声に永は肩を震わせた。
「リンをあいつらに良いようにされて悔しいのはわかる! でもそれとリンを疑うのは違うだろ!」
「……」
だってそれはどうしようもない。自分達は運命に翻弄され続けている。それを永は充分わかっているはずなのに。
「リンまで信じられなくなったら、お前は終わるぞ……?」
何故、こんな責めるような言葉しか出ないのだろう。
これは永の救援信号だってわかっている。
それでも、永には前を向いて欲しい。俺達の導であって欲しい。
「……」
黙ったままの永と蕾生に、鈴心はなんとか言葉を紡ごうとした。
「ライ……私は──」
「んんん、ごめんっ!!」
すると永が突然手を合わせて頭を下げた。
鈴心は驚いて出かけた言葉を引っ込める。
「リン、ごめん! 今のナシ! 僕の浅はかなジェラシーでした!」
「え、あ……」
鈴心はまだ困惑しているが、蕾生は永の様子に安心して息を吐いた。
さすが永だ。もう大丈夫。
「よし、じゃあ、行くな?」
蕾生が確認すると、永は耳を赤らめて言った。
「う……醜態をさらしたからね、仕方ないな。あ、ジジイには会わないからね!? 役目が終わったらすぐ帰るからね!」
「はい……はい!」
鈴心は涙目になって何度も頷いた。
「行くぞ」
蕾生の言葉に力強く永は言う。
「眠り姫を助けに、ね」
「今更かっこつけんな」
「えー、厳しいッ!」
いつも通り永がおちゃらければ元通りだ。蕾生は笑いながら少し泣いた。
永はいつもそうやって俺達を鼓舞し続けてくれる。だから、踏ん張れる。
「──ありがとう」
鈴心が背中に向けて言った言葉も、もちろん届いている。
気にするなと改めて言う必要はない。
俺達はずっと仲間なのだから。