中に入ると広い廊下が奥まで伸びている。その左右にいくつも部屋が並んでいるようだった。外見に反して随分広い造りのようだが、照明もつかず薄暗いので全貌は見えてこない。
「すげえ数だな」
左右に並ぶドアの数々を見回して、蕾生が声を上げる。
「時間が惜しい。手分けして探そう。リンは銀騎さんと一緒に」
「御意」
永、蕾生、鈴心と星弥の三手に分かれて端の部屋から調べていくことにした。
幸い各部屋は施錠されていないので容易に見ることができた。部屋は古い本が並べられていたり、植物標本が保管されていたりと、用途別になっているようだった。
その中で永が踏み入れた部屋には様々な動物の剥製が並べられていた。それらをざっと見て、特に異常はないので部屋を出る。
「すごいな、博物館並だ……」
独り言のように呟いた後、蕾生が入ったであろう部屋を通り過ぎる時、そこから震えた蕾生の声が聞こえた。
「永──なんだこれ」
「何かあった?」
足を止めて永もその部屋に入って驚いた。中には壁と見紛うほどの大きな石板が、ドミノのように整然と数枚並べられている。一番前の石板の中央には、動物の上半身を彫刻したようなものがあしらわれていた。
「彫刻……? でもやけにリアルだな……まるで生身の動物が封印されたみたいな──」
永が思わずその顔の部分に触れると、瞳が紅く光り、次の瞬間周りの石板が音を立てて崩れていった。
「──!」
一歩後ずさった永の目の前には、生きたライオンのような生物が立っていた。その獰猛な瞳は永を見据えて低く唸っている。
「永!」
蕾生がすぐさまその間に割って入る。その背の後ろで永も背負っていた竹刀に手をかけた。
「永、どいてろ」
その一言で永は竹刀から手を離し、ゆっくりとその生物から目を離さずに後退りながら部屋を出る。
蕾生も同じように生物から視線を逸らさずに、比較的広い廊下に出た。ライオンのような生物は蕾生に続いてゆっくりと前へ進む。
「どうし──ヒッ!?」
奥の部屋から出てきた星弥が、目の前の生物を見て顔を引き攣らせる。
「銀騎! 来るな! 鈴心、守れ!」
蕾生が怒鳴ると、遅れて出てきた鈴心は即座に星弥の前に躍り出た。星弥を守るように立ち、その生物の後ろで息を潜める。
「こっちだ、来い!!」
蕾生の声に反応して、ライオンのような生物は真っ直ぐ蕾生に飛びかかる。蕾生はその動きを見定めて一撃必殺の拳をみぞおちに叩き込んだ。
「ガアァッ──」
幅のない廊下で、自分の後ろには永が控えているので身を躱すことはできないという状況で、蕾生がとった行動は的確だった。真っ直ぐに叩き込まれた蕾生の拳を受け、その生物は動きを止め僅かな呻き声とともに倒れ込んだ。
「すげえ数だな」
左右に並ぶドアの数々を見回して、蕾生が声を上げる。
「時間が惜しい。手分けして探そう。リンは銀騎さんと一緒に」
「御意」
永、蕾生、鈴心と星弥の三手に分かれて端の部屋から調べていくことにした。
幸い各部屋は施錠されていないので容易に見ることができた。部屋は古い本が並べられていたり、植物標本が保管されていたりと、用途別になっているようだった。
その中で永が踏み入れた部屋には様々な動物の剥製が並べられていた。それらをざっと見て、特に異常はないので部屋を出る。
「すごいな、博物館並だ……」
独り言のように呟いた後、蕾生が入ったであろう部屋を通り過ぎる時、そこから震えた蕾生の声が聞こえた。
「永──なんだこれ」
「何かあった?」
足を止めて永もその部屋に入って驚いた。中には壁と見紛うほどの大きな石板が、ドミノのように整然と数枚並べられている。一番前の石板の中央には、動物の上半身を彫刻したようなものがあしらわれていた。
「彫刻……? でもやけにリアルだな……まるで生身の動物が封印されたみたいな──」
永が思わずその顔の部分に触れると、瞳が紅く光り、次の瞬間周りの石板が音を立てて崩れていった。
「──!」
一歩後ずさった永の目の前には、生きたライオンのような生物が立っていた。その獰猛な瞳は永を見据えて低く唸っている。
「永!」
蕾生がすぐさまその間に割って入る。その背の後ろで永も背負っていた竹刀に手をかけた。
「永、どいてろ」
その一言で永は竹刀から手を離し、ゆっくりとその生物から目を離さずに後退りながら部屋を出る。
蕾生も同じように生物から視線を逸らさずに、比較的広い廊下に出た。ライオンのような生物は蕾生に続いてゆっくりと前へ進む。
「どうし──ヒッ!?」
奥の部屋から出てきた星弥が、目の前の生物を見て顔を引き攣らせる。
「銀騎! 来るな! 鈴心、守れ!」
蕾生が怒鳴ると、遅れて出てきた鈴心は即座に星弥の前に躍り出た。星弥を守るように立ち、その生物の後ろで息を潜める。
「こっちだ、来い!!」
蕾生の声に反応して、ライオンのような生物は真っ直ぐ蕾生に飛びかかる。蕾生はその動きを見定めて一撃必殺の拳をみぞおちに叩き込んだ。
「ガアァッ──」
幅のない廊下で、自分の後ろには永が控えているので身を躱すことはできないという状況で、蕾生がとった行動は的確だった。真っ直ぐに叩き込まれた蕾生の拳を受け、その生物は動きを止め僅かな呻き声とともに倒れ込んだ。